3.19
話はついたかと問う魔王に、都はもう一つだけお願いする。
「最後に、家族と会わせて欲しいんです。あちらの世界でわたしの存在が消されても、わたしの記憶からは家族のことは消えませんよね?」
「そのように計らおう」
「ありがとうございます。戻るときは、どのようにすれば良いでしょうか」
「アネサキが初めてこちらの世界へ来た時と同じ場所に行けば良い。そこはこちらと一度繋がった場所だ。招喚しやすい」
わかりました、と都が答えようとしたとき、みこが待ったをかけた。
「確実に来られる場所じゃないと、さき姉が異空間で迷っちゃう。あの場所はみこだから繋がったの。さき姉だと不安定だと思う」
「それね、思ったんだけど……わたしの名前が都で、名前がみこちゃんと似ていたから来れたんじゃない?」
都が仮説を言えば、みこが反論する。そんなことを数回繰り返してから、魔王が不思議な質問をしてきた。
「アネサキ、そなたが住んでいた場所の地名は何という?」
「えっと、洛清町ですが……」
「どのような字を書く?」
魔王がどこからか取り出した紙に、漢字で書く。魔王なのに漢字も読めるのかと心配だったが、それは杞憂だった。都が育った世界の人間に干渉できるのだ。漢字も知っているのだろう。
魔王は、まるで面白いものを見つけたかのように笑った。
「アネサキ、朗報だ。こちらの世界へ招喚するための様々な条件は、バルドゥルの負担を減らすためだった。だが、アネサキに関して言えば、洛清町内であればどこでも招喚可能だ」
「どういうことですか」
「アネサキの名前は、都市を表す。そして洛清町の洛という字も同じ意味を持つ」
「な、なるほど……魔王様、博識ですね」
「ふはははは。そうと決まれば今から元の世界へ転送するぞ。家族に会ってくるがいい」
「えっ、今すぐ!?」
都は驚く暇も与えられないまま、闇に飲まれた。




