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3.18

「話は纏まったようだな。ではそなたに問う。元の世界で、お主が生きていたという記憶が抹消されても、こちらの世界に留まるということで相違ないか」

「はい」

 短く的確な答えに、魔王が微笑む。

「ならばそうしよう。しかし条件がある。この世界で生きるのならば、この世界の住人と夫婦の契りを結べ」

「夫婦の、契り?」

「お主には伝わらないか。目合(まぐわ)いだ」

「ま、まぐわ??」

 さらに古めかしい言葉では伝わらないだろうと思い、都がみこに耳打ちした。するとみこは瞬時に顔を赤くし、手を振りながら拒否をする。

「むむむ、無理! そ、そんなエッチなんて」

「向こうの世界に戻りたくない。目合いたくもない。ならば、消えるしかないな。どちらの世界でも、お主の存在を確定できないからな」

「え、そんなの嫌だ。みこは、長生きしたい」

「ならば、目合え。可能ならば愛がある方がいい。心を許さぬ者と何度も目合うのは、心に傷を負うからな」

 みこに忠告していた内容を聞き、都は思わず聞き返してしまう。

「な、何度も?」

「当たり前だろう。子が産まれれば、魂はこちらの世界に根差す。それまでは存在が不確かなままだからな」

 都やみこだけでなく、バルドゥルも魔王の話を聞いて顔を赤くしている。そんな三人の様子を見て、魔王が大仰にため息をついた。

「初心なお前達には、特別に余が存在確定の手助けをしてやろう。一ヶ月以内に、目合え」

「い、一ヶ月は短すぎます!! 父上、もっと猶予をっ」

「なんだ、余とラモーナの子なのに腑抜けだな。散々余を焦らしたラモーナも、一月だったぞ」

「ち、父上たちと同じだと考えないで下さい」

「ふむ。ならばどれくらいの期間を設ければ良いのだ」

 魔王からの問いに、バルドゥルは一年、みこは三年と答える。みこが言った期間を聞き、都は婚約破棄されたことを思い出して首を傾げた。

「アネサキ。そなたはどれくらい必要だ」

「存在を確定するのは、一度だけじゃだめですよね。子供が産まれるまでは、何度も上書きしないといけないんですよね?」

「そういうことになるな」

「それなら、魔王様が言ったとおり一ヶ月くらいが丁度良いのかもしれません」

「ミヤコさん!?」

「恥ずかしながら、わたしは元の世界で婚約者に捨てられました。原因は様々ですが、濃密な時間は確かに定期的に必要だと思います」

 文也に婚約破棄されたことを振り返り冷静に話していたが、都の話を聞いたバルドゥル達は反応が両極端だった。バルドゥルは顔を真っ赤に、みこは青ざめている。

 都はみこの肩に手を置き、優しく説く。

「空間転移を簡単にできちゃう魔王様でも無理なんだもん。死なないためには、頑張るしかないよ」

「さき姉……無理だよぉ。みこ、そんな相手いない」

「ジェラルドなんて、適任じゃない? お互いの気持ちが、重要だけど」

 都の提案に、みこは唸りつつも納得したような顔になる。


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