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3.15

「おれは、ミヤコさんのことが好きです。今まで魔族だから、魔王の息子だからと距離を置かれていました。ミヤコさんがそんなこと関係ないって言ってくれて……そのときからずっと、ミヤコさんのことが好きです」

「嘘言わないの。もう疑似恋人を演じる必要はないんだよ?」

「嘘じゃありません」

「バルドゥルがわたしのことを好きなら、なんで……」

 枷が外れない理由を考え、思い至る。

(……首の飾りが外れるのは、バルドゥルと相思相愛の相手が枷にキスをすること。わたしはバルドゥルのことを好きだけど、そのことをまだ伝えていない。バルドゥルが両想いだと思えていないんだ)

 答えは明白。しかしいざ伝えるとなると、恥ずかしさが増す。都は自分の気持ちを伝えるよりも先に、バルドゥルに頭を下げた。

「ミ、ミヤコさん? どうされたのですか」

「バルドゥルに、謝らないといけないことがある。疑似恋人をしているとき、わたしは自分を守ろうとしてバルドゥルを傷つけた。バルドゥルが言ってくれた言葉を、演技で片づけてごめんなさい」

 謝罪をしてから頭を上げると、バルドゥルがそわそわしていた。「え、それって、つまり?」と、不安げな一人言が漏れている。

 都は椅子に座っていた足の上に拳を作り、前のめりになって言う。

「三つも年上だけど、わたしはバルドゥルのことが好き。わたしと、結婚前提の恋人になってください」

「よ、喜んで! え、でも、本当に?」

 まだ混乱しているのだろう。そんなバルドゥルが両想いだと実感してもらえるように、都は言葉を重ねる。

「何度も何度も、バルドゥルに助けられた。本当に感謝してる。たまに恥じらう顔とか、ころころと変わる感情とか、バルドゥルの全てをずっと見ていたい。人魔共存なんて大義名分じゃなくて、バルドゥルと一緒にいたい」

「お、おれも! おれも、ミヤコさんとずっと一緒にいたいです!!」

 がばっと、バルドゥルが都を抱きしめる。都も抱きしめ返し、そのまま両想いだということを実感するようにくっついていた。

 いつまでもそうしていたかったが、都には使命がある。

 バルドゥルから離れ、首の飾りを触った。

「……バルドゥル。改めて、挑戦するよ? わたしは、バルドゥルのことが好きだから。安心して」

「は、はい。お願いします」

 自分の気持ちを伝えるまでは照れることもなくできたのに、両想いになると途端に恥ずかしくなる。早く済ませればいいのに、緊張してなかなか首に唇を寄せられない。

 まとめていた髪が、一房ほつれる。その髪を耳にかけると、バルドゥルが生唾を飲む音が聞こえた。

「い、いくよ?」

「は、はいっ」

 バルドゥルが、ぐっと息を止める。その拍子に鎖骨が浮き上がった。鍛えられた固い胸元に手を置かせてもらい、唇を近づける。

「チュッ」

 慎重に動きすぎて、音がやけに生々しい。それでも結果を見守りたくて、バルドゥルの首元から顔を離さない。

 すると、まるで箪笥に貼られた頑固なシールが剥がれるように、ぺりっという音が鳴りながらゆっくりと首の飾りが外れた。そしてひらりひらりと舞い、床に落ちる。

「や、やったぁ!! 外れた!! 外れたよ、バルドゥル!!」

 都は嬉しすぎて、バルドゥルの頭を抱え込むように抱きしめた。バルドゥルも照れながら、都に感謝を述べている。

 幸せに満ち溢れている二人を、闇が覆う。


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