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3.14


 停滞した状況が変わったのは、それから三日後。バルドゥルが固形物も食べられるようになった頃だ。

 ずっと虚ろな目をしていたバルドゥルの目に、光が宿った。

「バルドゥル?」

「……ミヤコさん。ありがとうございます」

「正気を取り戻したんだね! 疑似恋人をしていた後から、記憶はある?」

 質問をすると、バルドゥルは深く頭を下げた。

「ミヤコさんの手を振り払ってしまい、申し訳ありませんでした」

「頭を上げて。バルドゥルの中で何があったのか、教えて」

 バルドゥルが神妙に頷く。話を聞きやすいよう、都は椅子を移動させた。

 曰く、ザムゾンを諦めさせた後。みこに首の飾りを触られた瞬間、体の内部から浸蝕されるような感覚に陥ったのだという。身を守るため、とっさに魔力を体全体に行き渡らせたのだという。その結果、生きているのがやっとというぐらいの状態に。

 その後もずっと命を守るために魔力を循環させた。都からスープを食べさせてもらったときから徐々に、まるで体の中を靄が満たすような感覚になった。その靄が消失して、ようやく正常通りに体も動くようになったと。

「やっぱり、その首飾りがポイントなんだ」

 首の飾りを外すためには、相思相愛の相手から枷にキスをされること。それが条件のはずなのに、都の力では変化がなかった。つまりは、そういうことなのだろう。

 落ちこんでいると、バルドゥルがそっと都の手を握ってくれる。

「ミヤコさん。元気がないようですが、何かありましたか」

「……ねぇ、バルドゥル。この首の飾りね、相思相愛の人がキスをしないと外れないんだって。バルドゥルの好きな人は誰?」

 都がバルドゥルの首に触れながら質問すると、触れていた手で確認しなくてもわかるほどバルドゥルが顔を赤くした。

「お、おれはっ……」

「みこちゃんでもない。わたしでもない。バルドゥルが自由になるためには、バルドゥルが好きな人と両想いにならないといけないの」

 都はバルドゥルの頬を触りながら、真っ直ぐに目を見て話す。そんな都の手に自分の手を添えたバルドゥルは、少し潤んでいるように見える熱っぽい表情で訴えてくる。


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