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3.12

「えっと、ジェラルドさん? みこちゃんと話をするので、バルドゥルと一緒に出ていってもらえますか。バルドゥルに食べられそうな食事もお願いします」

 都の指示に、近衛騎士は黙して従う。

 バルドゥル達が出ていったことを確認すると、都は地面に腰を降ろした。

「みこちゃん。何があったの。わたしに話してもいいと思えるなら、辛いこと全部吐き出しちゃいな」

「さき姉……なんで、そんなこと言えるの。みこ、散々さき姉のこと悪く言ったのに」

「それはそれ、これはこれ。みこちゃんのことはずっと見てきたからね。年の離れた妹みたいなものだよ」

「……みこも、そんな風に割り切れたら良かったのかな」

 気持ちが落ち着いてきたのか、まだ涙目のみこが体育座りをした。

「あのね、さき姉もみこの家が母子家庭だって知ってるでしょ? ママのことも」

「そうだね。美奈さんはわたしよりも年上だけど、そんな風には見えないくらい若いお母さんだね」

「本人もそのつもりでいるけど……もっと、自分の年齢を考えてほしい」

「何があったの?」

「ママがね、すっごい年下の男の人を連れてきたの。新しいパパだよって」

「待って。もしかしてこの流れって、その新しいお父さんは二十歳ってこと?」

 都の問いに、みこが頷く。美奈が三十二歳で、年齢差は十二歳。成人しているから合法だが、確かに新しい父と同じ年の相手とは、ゲーム感覚でも恋愛は難しいかもしれない。

 そこまで考え、この世界に来る条件を思い出す。

「……現実逃避したくなったってことは、その新しいお父さんに嫌われちゃったの?」

 みこが首を振る。

「それなら、お父さんに構ってばかりで、美奈さんがみこちゃんに冷たくなったとか」

 みこが再び首を振る。

 思いつく理由を挙げてみたが、どれも違う。現実逃避したくなるようなこととは一体何があったのかと考える。しかしすぐに、みこが青ざめていることに気づいた。

「みこちゃん?」

 名前を呼ぶと、ガタガタと震えながら、まるで恐怖から身を守るように抱きしめる。その様子から、相当辛いことがあったのだとわかった。

「みこちゃん。ごめん、無理して話さなくていいよ」

「いやだ、話す。というか、ここまで話したんだから聞いてほしい。みこね、新しいパパに襲われそうになったの」

「それは、怖かったね。よく無事だったね」

 牢屋の柵越しに、みこを抱きしめる。

「別にね、ママが幸せになることは反対しないよ? でもね、ママが選んだ人がみこにっていうのは、違う」

「そうだね。絶対にあってはいけないことだね」

「みこは誘ってない。それなのに、新しいパパの行動に驚いて悲鳴を上げたみこよりも、ママは新しいパパの話を信じたの。それで、言ったの。みこがいるせいで、今までママは幸せになれなかったんだって」

 淡々と出来事を話していたが、みこの声が震えている。これ以上は聞くのも辛い。

「ねぇ、さき姉。母子家庭のママって、そんなに偉いの? みこが学年一位になっても、美術のコンクールで金賞を獲っても、ママが頑張ったことになる。ママが一人でみこを育て上げたんだって。ママよりもみこの方が家の事できるのに」

「学年一位になったって聞いたとき、二人でお寿司を食べたよね。金賞を獲ったって聞いたときは、展示されている場所まで行ったよ。わたし絵はよくわからないけど、なんか、心にぐっとくるものがあった。みこちゃんから話を聞いていたから、努力は報われるんだなって思ったよ」

「……さき姉の方が、みこのママみたい」

「んー、さすがにそれはちょっと……だって、考えてもみて? みこちゃんが十六歳でしょ? それでわたしが二十八歳。みこちゃんがわたしの子供だとしたら、わたしはみこちゃんを十二歳で産んだことになる」

「あははっ。確かに。小六じゃ無理だ」

「でしょ?」

 ふふっとまた笑ったみこは、都の腕の中から出た。そして頭を下げる。

「さき姉、今までごめんなさい。さき姉が作ってくれたごはん、どれも美味しかった」

「また作るよ。何を食べたいか考えておいて」

「わかった」

 みこが立ち上がる。見上げるその顔は、どこかすっきりしたように見えた。

「さき姉が牢屋から出してもらえるように、王様に話してみるね」

 そう言って、笑って出ていったみこ。そんなみこのおかげで都は翌日、八日ぶりに牢屋から出してもらえた。そして近衛騎士のジェラルドから話を聞いていたのだろう。みこの代わりに聖女として働けと言ってきた。立場はどうあれバルドゥルを助けるために乗り込んだのだ。命令されなくてもやる。

 しかし、無能の烙印を押されてしまったみこが投獄されることは承服しかねた。だから王に直訴したが、却下されてしまった。さらに、みこは様々な罪に問われている。


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