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3.11


 投獄七日目。四日前よりもさらにやつれた様子でみこがやってきた。

 聞けば、聖女としての仕事は人魔共存の架け橋となること。それは、みこがバルドゥルを攻略するのと同じ意味を持つ。しかしそれができていないため、王から再三にわたって忠告を受けているのだそう。聖女としての仕事ができなければ、ただ金を消費するだけの邪魔物だと。

「バルドゥルさんの首飾りは取れないし、食事も食べてくれないし……」

「バルドゥル、食べてないの!? なんで!?」

「そんなの、みこが知りたいもん。主人公のみこが「あーん」してあげているのに、ぜんっぜん食べてくれないんだもん」

 親密度が上がっていれば、喜んでみこの手から食べるのだろう。みこの話を聞き、もしかしたらと一縷の希望を持って提案する。

「みこちゃん。わたしだったら、バルドゥルに食べさせてあげられるかも」

「やっぱり、さき姉が何かしたんだ」

「勘繰るよりも早く! バルドゥルと食事を」

「わ、わかった。みこだって、バルドゥルさんが死んじゃうのは嫌だもん」

 ぐずっと鼻をすすりながら、みこが牢屋の前から出ていった。そして少しして、みこの近衛騎士に支えられるようにしてバルドゥルが連れてこられる。みこが持っているのは、何かのスープのようだ。優しく甘い香りがする。

「こっち。わたしの手が届くところにお願い」

 牢屋の柵に顔を押しつけるように手を伸ばし、盆に載せられていた木匙を取る。一匙掬い、バルドゥルの口元に近づけた。

「バルドゥル。お願いだから食べて」

 虚ろな目をしているバルドゥルに呼びかけながら手を伸ばす。緩慢だが確実に、バルドゥルは都が持つ木匙に顔を近づける。そして、スープが入った匙を口に入れた。

「食べたー!! 良かったぁ。バルドゥルさん、食べてくれた……」

 泣き崩れそうになったみこを、近衛騎士が支える。そのせいでスープが入っていた器が下に落ちた。近衛騎士の支えを失ったバルドゥルが、牢屋の柵にもたれかかりながらじっと器を見ている。

「バルドゥル。食欲出てきた? ちゃんと食べられる?」

 都の問いかけに、バルドゥルはゆっくりと頷く。そんなバルドゥルを見て、みこはついに泣き出した。

「なんで、みこじゃダメなのぉ……」

 泣いているみこを慰めたいのたろう。近衛騎士は所在なさげに彷徨わせた手を、みこの背中に添えようとした。

「みこは、バルドゥルさんがいいの!」

 パシンッと、みこが近衛騎士の手を叩く。攻略しているとはいえ、人としての配慮は必要だ。

「みこちゃん。心配してくれた相手にそれはないんじゃないかな」

「うっさい! みこに指図しないで! 婚約破棄された悪女のくせに!!」

「確かに婚約破棄されたけど、今は関係ないでしょう? 論点をずらさないの。この人は、みこちゃんを心配してくれたの。わたしを捕まえに来るときだって、大きい体で狭い排水溝に挑んでいたじゃない」

「うっさい、うっさい! ジェラルドはみこと四歳差だからダメなんだもん!! バルドゥルさんぐらい、離れていないとダメなんだもん!!」

「何がだめなの? 問題ないと思うけど」

 みこは泣き叫びながら、バルドゥルを見たように思えた。しかしよく観察してみると、近衛騎士も見たような気がする。

(んー……これは、男性には聞かれたくない話なのかな?)

 性差別をするつもりは毛頭無い。しかし現実的に、同性だから話せることもある。


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