3.10
投獄三日目。
この世界の主人公であるみこにとっての邪魔な存在、ということで、都はすぐに何らかの処罰を受けると思っていた。しかし巻きこまれたとはいえ、都は異世界の人間。この世界の法では裁けないのだという。囚人服を着ているが、それだけだ。
送迎官はバルドゥル一人だけ。そのバルドゥルはまだ送り返すほどの魔力を溜められていない。魔王も力を使えると想定しているだろうが、脅威を招き入れることはできないだろう。
そんな状態で三日が経っていた。食事は一日二回だが、毒が盛られているわけでもなく、冷めている以外は至って普通の食事が運ばれてくる。このまま期日が来るまで牢屋の中か。
そんな風に思っていた、四日目。みこが一人でやってきた。上手く化粧で誤魔化しているが、少しやつれたように思える。
「さき姉! バルドゥルさんに何をしたの!!」
「何って、別に何も? というか、みこちゃん大丈夫? 疲れているんじゃない?」
「偽善者の言葉なんて聞きたくない。みこが質問したことだけ答えてよ」
「そうは言っても、質問が抽象的すぎてわからないよ。バルドゥルがどうしたの」
聞いたところで、教えてもらえないだろう。そう思ったが、よっぽど困っているのか、渋々といった様子で教えてくれる。
「バルドゥルさんを攻略し始めてからもうすぐで一週間経つのに、一向に落とせないんだけど! さき姉が何かしたんでしょ!?」
「何かって……わたしは主人公じゃなくて、ただ巻きこまれただけだから、わたしが何かしたとしても影響ないでしょう?」
みこもそう思いたいのだろう。都の指摘に、頬を膨らませている。
「大体! なんでさき姉も一緒に喚迎されるの!? さき姉は条件に当てはまらないはずなのに!」
「条件? そういえば、みこちゃんは自分でこの世界に来ることを選んだんだよね? 弁天神社に来ることだったの?」
「『おとつぐ』の世界に来る条件は厳しいんだから!! そもそもゲームを持ってないとダメだし、名前にちなんだ場所でお昼丁度に、自分の名前と決められた言葉を告げないと来られないの! もちろん、聖女だから誰ともエッチしちゃいけないし! 異世界に転移するだけの現実逃避をしたいと思ってないといけないし」
「わたしはゲームを持っていなかったけど、確かあのときはみこちゃんに触っていたんだっけ? それであとは、名前にちなんだ場所? みこちゃんは巫女って扱いで神社? それに、現実逃避? どうしたの、何があったの?」
「さき姉には関係ない!」
ぷいっと、機嫌を損ねたみこがどこかに行ってしまった。
(染髪=不良なんて考えは古くさいけど……)
みこには現実逃避したくなるようなことがあった。だから中学を卒業してから茶髪に染め、青いカラーコンタクトを装着した。
みこは十二も年下で、小さいときからの隣人だ。自分の子供とまではいかないが、何かあったのなら、その話を聞いて気持ちを軽くするぐらいはしてあげたい。
都は投獄されている身。嫌われている様子だったがみこは聖女。都から呼び出すわけにはいかない。それに悩みを打ち明けるほどの心境なら、みこが自ら話してくれた方がいい。
みこが許しさえすれば、牢から出してもらえるかも。そんな小さな下心を持ちながら、みこが再び訪れるのを待った。




