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3.8


(ここなら!)

 人気が無い橋を捜し、城の裏手ぐらいにある橋までやってきた。そしてすぐに橋を下り、排水のために設けられていた穴を逆流していく。初めこそ外の光がぼんやりと届いていたが、奥に進むにつれて壁に手をつかなければ危険なほど暗くなってきた。

「うげっ。何かねちょってした……」

 今も排水されているのだから、常に湿気が充満しているのだろう。そして漂う汚臭。何を触ってしまったかを考えると、やらなければいけないことを投げ出してしまいそうだった。

 だから都は、気にしないふりをしてひたすら進む。左手を壁につけて進み、行き止まったら壁を触ったままUターンする。そして道があればまた進み、と足を止めない。

 何度も何度も行き止まり、Uターンする度に溜まっていた水に踏み込む。一歩進むごとに、運動靴の中の靴下がぐちょぐちょと音を鳴らす。

「うぅ……気持ち悪い……そろそろどこかに出てほしい……」

 体全体にまとわりつく湿気から逃れたい都は、足を速める。そんな都の願いが通じたのか、反響する自分の足音から判断できる広い空間に出た。また左手を壁に当てながら進んでいくと、点検をする際に使うのか、錆びていない梯子を発見した。迷わずに登っていく。

 梯子を登った先は立って歩けるような広さはなく、匍匐前進が妥当かと思える狭さだった。汚臭も感じなくなるほど排水道を歩いてきたのだ。いまさら、全身が濡れることに抵抗はない。都は匍匐前進で奥へ進む。

 すると、光が差し込んでいる場所にたどり着いた。狭さは変わらないから、どこかの蓋の下にいるのかもしれない。

「もぉー、聖女様のわがままにはうんざり」

「そぉねぇ。私たちなんてその辺に生えた草と一緒って感じよねぇ」

「お前達。誰が聞いているかわからないんだ。めったなことを言うんじゃない」

「そんなことを言っている料理長だって、昨日聖女様にネチネチと文句を言われていたじゃないですか」

「それは俺の力不足が原因だ」

 話の内容から察するに、真上は調理場なのだろう。

(ヘルルーガから聞いた「設定」によると、この世界は何度も異世界から人を招喚している。だけどみんな帰っていく。多分だけど、毎回同じストーリー展開のはず。五人の攻略者と、人魔共存の。何度も呼ぶのに誰もそれを指摘しないということは、どんな原理かわからないけど、毎回登場人物たちの記憶がリセットされるんじゃないかな。それなのに、みこちゃんはこんなに悪く言われて……)

 みこを弁明する気は全くない。だからみこが悪く言われていても心は痛まないが、都は現実のみこを知っている。ゆるふわ茶髪の青いカラーコンタクトをし始めたのは、つい最近のはずだ。中学を卒業するまでは、染髪もカラーコンタクトもしていない普通の女の子だった。だから、弁天神社で姿を見かけたときに驚いたのだ。

 みこにも何か事情があるのかもしれない。しかし今は、バルドゥルを助けることが先決だ。調理場の人たちによれば、今準備しているのは昼食。三日で攻略されるという計算が正しいのなら、猶予はあと半日しかない。

 都はまた排水溝を進み始める。しかし長く続く排水溝の中でどこに向かえばいいのかわからない。方向感覚もなくなり、調理場に戻って他の道を捜すこともできなくなった。

 ひとまず進めるだけ直進していると、違和感を覚える。何かが前方から迫っているような、そんな気配。


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