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3.5

「ザムゾンさんが旅に出てしまったから、魔族と人を繋ぐ人がいなくなっちゃう」

「いや。まだ手立てはある」

 言いつつ、ヘルルーガは眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。魔族と人を繋ぐ手立てを聞けば、彼女が知る限りの情報を教えてくれた。

 この世界では、何度も異世界から人が招喚されるらしい。その内の一人と接触したときに聞いた話。

 曰く、この世界は『救世の乙女は世界を繋ぐ』というタイトルのゲームらしい。そして攻略者は五人。みこが言っていた通り、ゲームのタイトルに関係する重要な人物はバルドゥルだ。

 繋ぐ、というのは、魔族と人を繋ぐということ。ただそれだけなら良いのだが、問題はバルドゥルが攻略されてしまった後のこと。

「魔物がいる世界で主人公は聖女として五人の攻略者達と協力し、人魔共存の世界を作り出す話」というのはあくまでも建前で、聖女とバルドゥルが恋人になると、魔族は圧倒的に不利な立場に置かれる。魔物の抑制はもちろんのこと、魔物による被害が露見した場合は、理不尽な内容だとしても多額の賠償金を支払わなければいけなくなるのだそう。そして聖女と恋人のバルドゥルが人質のような状態となり、魔王も手を出せない。人に従属するような形になる。

「昔の聖女が弟に興味がなく、そんな設定だったと話してくれた。だから本当にそうなるかどうかわからない。ミヤコ殿は、詳細を知らないだろうか」

「ごめん。わたしはゲームよりも物語を楽しむんだよね。やったことないや」

「そうか……」

 ヘルルーガは落ちこんだように肩を落とす。

 都が件のゲームをやりこんでいたら、バルドゥルを救い出せる手立てを思いついたかもしれない。

(……悔やんでいても、時間が解決してくれるわけじゃない。これからどうするか考えないと)

 バルドゥルを救い出すためにはどうすればいいか。

「ねぇ、ヘルルーガ。あなたの力は、水があれば様子がわかるんだよね?」

「あ、あぁ。何か手立てがあるのか」

「やったことないから自信がないんだけど、バルドゥルがいる場所を突き止めて、近くに水を置いてくる」

「なっ……敵地に乗り込むというのか。危険すぎる」

「危険は承知の上だよ。最後に見たバルドゥルは、虚ろな目をしていた。絶対に何か悪いことが起きている。一刻も早く、バルドゥルを解放しないと」

「そうは言っても、具体的にはどうする? われも参戦するか」

「ヘルルーガが一緒に来てくれたら心強いけど……危険なときにわたしを魔界へ招喚してほしいんだよね。招喚する力って、水さえあればどんな小さな水たまりでも問題なくできる?」

「できるは、できるが……大きい方が力は安定する。小さい場合は、われが魔界にいた方が確実に招喚できる」

「そっか。それならヘルルーガは魔界にいて。あ、でもそうすると、招喚して欲しいときってどうすればいいのかな。危険なときって、水たまりを捜しに行く暇もないよね」

「それなら問題ない。少し待っていてくれ」

 そう言うと、ヘルルーガは両手で円を作る。そして手首を何度も捻って円を捩るようにすると、手の中で円状の水の塊ができた。それの端と端を引っ張るように手を動かし、細い紐のようなものを生み出していく。その紐状のものを捩るように指を動かしているとき、質問された。

「ミヤコ殿の利き手はどちらだ?」

「右だよ」

「では、左手をわれに向けてくれ」

 ヘルルーガの指示に従う。すると、ヘルルーガが都の左手首の上で手を翳した。そしてあっという間に、小さな水色の玉がついたブレスレットが装着される。

「この水色の玉に触れてもらえれば、その場で水が出る。水が出たとわかった瞬間、われはミヤコ殿をこちらへ招喚する」

「へぇ、便利だね」

「二点、気をつけてほしいことがある。一つ目は、一度水が出てしまうと効力がなくなってしまうことだ。また力を注がないといけなくなってしまう。そして二つ目。この腕輪は、水に浸かっていると効力を発揮しない可能性がある。腕輪にはわれの魔力を注いだ。そのため腕輪から出る水を明確に把握できないと、招喚も難しい」

「そんなに何度もピンチにはならないと思うし、水に濡れたら行動が制限される。なるべく周囲に水がないようにするから問題ないよ」

「バルドゥルを助けたい。その考えは変わらないが、どうかミヤコ殿の命を優先してほしい」

「わかった。絶対にバルドゥルを助け出すから」

 バルドゥルの家の裏庭にある井戸に繋げてほしいと伝え、ヘルルーガも了承した。



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