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3.4

「あぁ。バルドゥルが成長すれば、人に対抗する力を持つ。だからそれまではバルドゥルを人質として盗られていても、我慢できた。しかしある日、バルドゥルが慣れない力を使って一人の女児を異空間へ飛ばしてしまった」

「送迎官の力……」

「そう。今でこそ、そのような名で呼ばれているが、それが不幸の始まりだった。弟の力に目をつけた当時の王が、こことは違う異世界から人を招喚せよと命じた。力が安定していなかったバルドゥルは拒否したが、人の目のあるところで女児を異空間へ飛ばしてしまった。言い訳できる状況では、なかった」

 感情がよくわかる、今のバルドゥルを知っている。当時の彼も王命を拒絶できなかったことは簡単に想像できた。

「王は、まだ十歳にもなっていなかった弟を拘束。育ての親を脅して手足を縛らせ、目隠しもさせた」

「ひどい……子供にしていい所業じゃない」

「あぁ。われも同じ意見だ。成人していて力が安定していたわれが、水を使って人間界へ殴り込みに行ってしまった」

「でも、またバルドゥルを楯に取られた?」

「そう。世界を跨ぐ力を行使できるように、バルドゥルへ教えろと。反発したが、人というのは恐ろしいことを考える。今も弟を拘束している、首の飾り。あれは装飾品ではない。外そうとすると瞬時に馘首する仕様になっている。狂言かもしれないが、嘘か誠かを試せない」

「で、でも、魔王様ぐらいの強大な力があれば外せるんじゃないの?」

「父とて、万能というわけではない。強大な力を持っているが、その姿を消せるわけではない。魔王が人間界に来たと確認された瞬間に、弟の首が飛ぶと言われた」

「そんな……そんなことってある? なんでバルドゥルが、そんな目に……」

「当時の魔物学者がロマンチストだったことが、不幸中の幸いだろう。その枷を外す唯一の方法があるらしい」

「その方法とは?」

「相思相愛の相手がその枷に口づけをすると、外れる仕様と聞いた」

 いかにもゲームらしい設定だ。

 これまでの話を聞く限り、ヘルルーガは人に恨みを持っていると推測できた。

「……例えバルドゥルを助けるためとはいえ、その相手がわたしでいいの?」

「ミヤコ殿がいい。育ての親の命を守るため、弟は今も王が望むまま、異世界から特殊な力を持つ者を招喚している。しかし異世界から招喚されし者達は皆、バルドゥルに興味を示さない。贅沢な暮らしができる城での生活を楽しみ、元の世界に帰っていく」

「わ、わたしは、偶然巻きこまれて、放り出されたから」

「きっかけはどうあれ、ミヤコ殿だけだった。耳を見て一目でわかる魔族を蔑ろにせず、親切にしてくれたのは。魔族と人族の血を持つ弟の、不安を解消してくれたのは」

 ヘルルーガが、都の手を握る。その手は力強いようで、小刻みに震えていた。バルドゥルのことが心配なのだろう。

 そんなヘルルーガの手を、都は握り返す。

「わかった。わたしに何ができるかわからないけど、できる限りのことをしてみる」

「ありがとう!!」

 がばっと、ヘルルーガが都に抱きついてきた。胸の柔らかさに意識を失いそうになったが、ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

「ヘルルーガがバルドゥルのお姉ちゃんってことは、もしかしてだけど、ザムゾンさんの婚約者って?」

「あぁ、あの男か。あれも人族でそこそこの身分があるから、魔族と人族との橋渡しを頼まれたのだろう」

 取るに足らない相手だと言うように、ヘルルーガが腕を組んでため息を吐く。


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