2.20
みこが四人の攻略者たちに問いかける。その瞬間、ギラギラとした四人の目が都に向けられた。
(ここで戦う? でも、街の人たちを巻きこんでしまうかもしれない。それに、みこちゃんの近くにいる四人と一緒に、バルドゥルを巻きこんでしまうかもしれない)
みこと長く話し込んでいるせいで、周囲には野次馬が増えていた。中には保護者に連れられているような子供もいる。そんな場所では戦えない。
じりじりと四人が近づいてくる。排除というものが具体的にどんなことをされるのかわからない。捕まってしまえば、終わりだ。
四人と距離を保ちながら、それぞれを観察する。
王子と推測できる金髪碧眼の青年。捕まれば、牢屋行きだろうか。
王子と似た面差しの少年は、背後にたくさんの大人がいそうだ。中には悪い大人がいるかもしれない。
緑の長髪で眼鏡をかけた男性は、その見た目から学者のような印象だ。何かしらの実験に利用される可能性がある。
固そうな焦げ茶色の髪をした騎士は、みこの近衛だろうか。鎧を着用していてもわかる筋肉で何をされるかなんて、想像もしたくない。
後退し続ければ、やがて外へ出られるだろう。しかしそこまでの間に捕まってしまうのは目に見えている。戦えない都に、勝ち目はない。そう、思ったとき。思わぬ所から救いの手が差し出された。
「今日は来ないと思ったけど、こんなところにいたんだね。ミヤコ、今日も美味しい朝食を用意してあるよ」
「お、女将さん!?」
戸惑う都を、酒場の女将が強引に連れて行く。予想もしていなかった伏兵に誰も動くことができず、都と女将が広場を去ることを見ているしかできなかった。
しかし、そんな状態もすぐに解除されるだろう。そうなったら、女将も危ない。
「お、女将さん! 手を離して下さい」
「若い娘が遠慮なんてするんじゃないよ」
「い、いえ、そうではなくて」
冒険者たちが通う酒場の女将だ。そこを切り盛りしているからか、女性としては力が強い。都では太刀打ちできなかった。
「女将さん! 本当に、本当に、離して下さい! このままじゃ、女将さんに迷惑がかかる」
「何をそんなに怖がっているんだい。第一王子様も第三王子様も、ひょろっとした魔物学者様も屈強な騎士様も、一般市民を害したりしないよ。安心しな」
女将の言葉で、都が見立てた職業は合っていたのだと答え合わせができた。しかし、今はそれが重要ではない。
女将は酒場を経営している。多くの人に顔を知られているのだ。都と一緒にいたら、命の危険も伴うかもしれない。
逃げられない都の心配をよそに、女将は入り組んだ路地を迷いなく進んでいく。てっきり酒場へ連れて行かれるのかと思ったが、そうではないらしい。城下街を抜けると建物同士が重なっているような場所に出た。他人の家ではないかと思うような場所も気にせず進み、城下街からどんどん離れていく。
これなら見つからないかもしれない。そう思ったが、女将が進む先の道で兵士が横切った。
(このままじゃ、女将さんまで巻きこんでしまう!!)
この場所からすぐに離れたい。そう思うと、開けた場所に出た瞬間何やら空から黒い塊が降ってきた。
巨大化した中華鍋だ。
何かを柄に引っかけて、ゴオォォォッという音が聞こえそうな垂直落下をしている。
「ん? 急に暗くなったね?」
都たちがいる周辺に、影が落ちる。女将の力が緩んだ瞬間を見逃さず、都はその場から駆け出した。




