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2.9
叫ぶように宣言して、都はリビングの端まで撤退する。足を抱え込むように座り、癖で組んだ手の上に顎を置きそうになった。瞬間、先程のことを思い出してしまい手を解く。
「危ない!」
バランスを崩して壁に頭をぶつけそうになった都にバルドゥルが駆け寄り、また守ってもらえた。
「ミヤコさんはしっかりしているようで、危なっかしいですね」
「も、申し訳ない」
バルドゥルが手を引いて、都を立ち上がらせてくれる。一度落ち着きましょうかと、また椅子に誘われた。
「ミヤコさんの鍋が反応しなかったということは、これぐらいの接触ならば命の危機にはならないということですよね?」
言われ、バルドゥルの仕事部屋を壊したことを思い出す。
(は、恥ずかしいっ……恋の駆け引きみたいなことに関して免疫がなさすぎる! そもそも、わたしが慣れていなさすぎて心臓がうるさくて、中華鍋が巨大化したのに)
バルドゥルとの関係は擬似的な恋人。全て演技だ。それなのに都に余裕がなさ過ぎて、演技の練習になっていない。
反省のために自分の考えに没頭している都は、バルドゥルが幸せそうに笑みを浮かべていることには気づけない。このまま続ければ、意識してもらえるかなと呟く声も。




