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私は吸血鬼  作者: ローズベリー
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9. 体育の時間


 私は旅行から帰るとお母さんにあったことを全部話した。血が足りなくなって吸いに行ったこと、愛海に私が吸血種だとばれてしまったこと。


「…愛海ちゃんは本当に信用できるの?」

「大丈夫だよ。誰にも言わないって約束してくれたし、友達だって言ってくれたもん」

「…はぁ、わかったわ、今回は特別よ。これからは気をつけなさい」


 お母さんはまだ愛海のことを信用できない様子だったけど、私が必死で説得すると軽くため息をついた後に認めてくれた。



 そしてその夜は愛海に電話でいろいろと聞かれた。もっとも、それはただの愛海の好奇心であって返答に困るような質問ではなかった。どのくらいの頻度で血を吸うのかとか、好きな血の味はあるのかとか、根掘り葉掘り聞かれることになった。


(ほんとに愛海は私のことちっとも怖がってないのね…、よかった。けどなんだか今まで必死に隠してきた自分がばからしいわ…)


 もしかしたら菜月も大丈夫なんじゃないか、と少し考えたけどやっぱり菜月には秘密にしておく。愛海と違って吸血種のことを心底怖がってるし、もし嫌われでもしたら私が耐えられない。

 そうして波乱万丈の旅行を終えた私は残りの夏休みも謳歌した。 




◇◇◇




 夏休みが明け、学校が再開してほどなくした頃。体力測定の日がやってきた。


「今日は体力測定をします。皆さん着替えた後は体育館に集合してください」


 教室のいたるところから不満の声が上がっているけど、私はどうということはない。吸血種は力も体力も人間とは比べ物にならないから、むしろ変な記録を出さないように注意しないといけない。


「こんな暑い日に体力測定なんてやだー」

「菜月、グダグダ言ってないで早く着替えるよ」


 そんな会話をした後に私たちは着替えを終えると体育館に集合する。

 筋力テストは周りのみんなと同じような値になるように手加減する。握力計は20kgをさしていて、我ながら上出来だ。血をはじめて飲むより前はこのくらいだった気がする。

 続いて体力テストも周りのみんなに合わせて疲れた演技をしながら乗り切る。あたりを見渡すと、軽く汗をかいたみんなの首はとてもおいしそうに見える。

 そんな私に気づいたのか愛海は私のことを見てくすくすと笑っていた。こっちは笑い事じゃないのに、と軽く心の中で悪態をつきながら愛海にムッとした顔を向けると、さらに微笑み返されるのだった。


 そんなこんなで体力テストも最後、50メートル走を測ることになった。最後の疲れ切った状態で測るのはどうかと思ったけど仕方がない。

 出席番号順に走っていき、適度なスピードで走って普通の記録を出した私は一安心してみんなのもとに戻る。


「美夜、全然息あがってないじゃん」

「そう?結構疲れてるよ」


 愛海にそう言われ、私はわざと呼吸を大きくして疲れているふりをする。


「どう見ても手抜いて走ってたでしょ」

「やっぱりわかるのね…」


 ほんとに鋭いなあ、なんて考えている時だった。少し離れたところから血の匂いが漂ってきた。どうやら転んで怪我をしてしまった人がいるらしい。そんなおいしそうな匂いにひかれて私は膝から流れ出る血に見惚れていると、愛海が小声でささやいてくる。


「…ちょっと美夜、見つめすぎよ」

「あ、ごめん…、つい…」

「いや、別に謝らなくてもいいけど…」


 私にとって同年代の、若い人間の血はどんな味がするのか、興味があった。もちろんそんなことはしないけど、見惚れてしまうのは仕方がない。


 そうして、特にアクシデントもないまま、私は不安だった体力測定を乗り切ったのだった。


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