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私は吸血鬼  作者: ローズベリー
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8. 旅行②


 次の日、今日は三人で家でゆっくりすることにした。普段家で何してるのかとか、勉強の話とかをして盛り上がる。そんな中、急に愛海が変なことを言い出した。


「…二人は吸血種のことどう思ってる?」

「私は…、やっぱり怖いよ?美夜は?」

「…私も怖いかな」


 突然こんなことを聞くなんてどういうことなんだろう。


「私は、吸血種って菜月が思ってるほど怖い存在じゃないと思うの」

「えっ、なんで?」

「なんで、って言われても困るんだけど…、ただ血を吸うってだけじゃん?…ね?」


 愛海はそうでしょ?とでも言わんばかりの顔で私を見てくる。


「ん、まあ、そう、かもしれないわね…」

「いや、それが問題なんじゃん!首を噛まれるとか想像しただけで怖いよ」


 菜月がそう言うと愛海は少し残念そうな顔をする。たぶん愛海は菜月の吸血種恐怖症を治そうとしているんだと思う。私だって友達に怖がられるのは嫌だけど、こればかりは仕方がない。

 なんだか微妙な雰囲気になってしまって、いたたまれなくなった私は話題を変える。


「そんなことはおいといてさ、トランプでもしない?」

「あ、賛成!」


 そうして私たちはトランプを始めるとそのまま夜まで遊んでしまった。本当にこのたった54枚のカードを発明した人は疑いようのない天才だと思う。




 そして夜も更けてきたころ、私は今日も血を飲んで寝ようと冷蔵庫に向かう。でもあんまりおいしくなくて、喉もあまり潤わない。いまいち満たされない感じがして血を流し込んでいく。


(っ…!やばい…、なくなっちゃった……)


 つい飲みすぎて全部飲み干してしまい、未だに収まらない喉の渇きに不安を覚える。私はできるだけ考えないように布団に入るものの、もう血が飲めないと思えば思うほど喉の渇きはひどくなる。

 そして、このまま我慢するのはよくないと判断した私は二人が寝静まるのを待ってから血を吸いに行くことに決めた。




 しばらく時間がたち、私は横目で二人が眠っているのを確認してから布団を出る。


(さすがにこのピンクのモコモコじゃ目立ってしょうがないわね…、それにもし血が飛んだりしたら嫌だし…)


 私は自分の着ているパジャマを見ながらそう心の中で呟く。私は持ってきた黒い服に着替えることにした。そしてパジャマを脱いで服を着ようとした時、間違って机の足を思いっきり蹴ってしまい、後ろからもぞもぞ動く音とともに声が聞こえてくる。


「あれ、美夜…?」


 やばい、そう思ったけど時すでに遅し。


「…え、なんで裸なの?」

「ひゃっ!?」


 突然のことに思わず素っ頓狂な声をあげてしまい、その声で愛海も起きる。


「なに…?…へぇ、生で見ると結構おっきいのね」

「な、何言ってんのよ!」


 私は寝るときは、そう、つけない派だからパジャマを脱いだ今はそれが丸見えになっていた。急いで手で隠すと顔を真っ赤にしてその場に座り込む。


「そんなに恥ずかしがらなくていいんじゃないの?女の子同士なんだし」

「…っ、それは愛海が脱いでないからそんなことが言えるのよ!」


 女の子相手だって恥ずかしいものは恥ずかしい。そうして私が必死に隠しているにもかかわらず二人はじっと私を見ている。


「ちょっと、そんなに見ないでくれる…?」

「…でも勝手に裸になってる美夜が悪いよね?」

「なっ…!人のこと変態みたいに言わないでくれる!?」

「だって、ねえ」


 菜月と愛海はまるでちょうどいい遊び相手を見つけた悪魔みたいに私の方を見て笑っている。すっかり吸血欲求が吹き飛んでしまった私は苦し紛れの言い訳を考える。


「ちょっと暑くて脱いだだけよ!」

「じゃあまたその格好で寝るつもりだったんだ…、美夜って大胆ね」

「わ、わかった、服着るからあっち向いてて」


 私はそう言ってパジャマを着なおすと布団に戻った。そしてもちろんすんなりと寝させてくれるはずがなく、二人のおふざけはあたりが明るくなるまで続いた。




◇◇◇




「「眠い…」」


 菜月と愛海の開口一番がこれだ。結局昨日はあれから一睡もできなかったみたいだけど完全に自業自得だ。私が裸だったせいだとか、よくわからない言い訳が聞こえてくるけど聞こえないふりをする。


「それで、今日はどうする?」

「また川で泳ぎたい!」

「滅多にない機会だし私もまた行きたいわ」


 そうして水着に着替えた私たちは川に向かった。今日は天気も良くて太陽がこれでもかといわんばかりに輝いている。川に着くや否やすぐに飛び込んだ私たちはそのまましばらく泳ぎを堪能する。


「暑い日の川ってめっちゃ気持ちいいね!」

「ほんと、いつまでも泳げそう」


 どこまで深く潜れるかを競ったり飛び込みの美しさを競ったり、とにかく疲れるまで泳ぎ回った。まあ私は吸血種だから全然疲れないんだけど。

 川辺に上がった私たちは疲れた体を癒すように大の字に寝転がる。


「疲れたあー」

「泳ぐのって全身使うよね、もう動けないぃ…」

「二人とももう疲れちゃったの?」

「美夜は体力ありすぎだよ…!」


 そんな二人を見て可愛いなあ、なんて思う。それにしても、水から出ると太陽のぎらつきを全身で感じる。まるで肌が焦がされていくような感覚。


(はあ…、ちょっと喉が渇くなあ…)


 そして目に入る、おいしそうな首。若くて健康そうな首に滴る水はさらにその刺激を強いものにする。少し息切れして上下するその喉元に思わず目が釘付けになる。

 そして、もう少しで理性が飛びそうだった私はすぐに目をそらして川に入る。


「これは目に毒ね…」


 小声でそうつぶやいた私は吸血欲求が収まるまで川に浮かんでいた。





 その夜、私はもう一度血を吸いに行く準備をしていた。二人が寝静まるのを待ってから、昨日の失敗を繰り返さないように慎重に着替える。音を立てないように部屋を出た私は真っ暗な道を歩いていく。



(全然人いなくない…?)


 それもそのはず、街灯もほとんどないような田舎に深夜に一人で出歩くような人がそうそういるとは思えない。

 私はずいぶんと長い間歩き回ることになるのだった。




「はあー、やっと吸えたよ」


 一時間くらいは歩き回っただろうか。私の足元には今しがた吸血を終えた女性が座り込んでいる。久しぶりに人から直接吸う血はとてもおいしくてつい吸いすぎてしまった。しばらくは貧血になってしまう女性に心の中で謝りつつ、私は別荘に戻ることにした。


 ずいぶん遠くまで来ていた私はしばらく歩いて別荘につく。そして、二人を起こさないようにそっと部屋に入った私は、自分の目を疑った。愛海が体を起こして私の帰りを待っていたのだ。


「っ!な、なんで起きてるの…!?」

「あ、驚かせてごめんね、ちょっと話があるんだけど…」


 私の頭は完全にパニック状態だった。私が夜中に出歩いていたところを見られ、しかもこの状況で私に話があるなんて。意味が分からない。

 私は愛海に連れられて外に出る。


「…、それで、話って…?」


 私が聞くと、しばらくの沈黙をおいて愛海が口を開く。


「…血を吸ってたんだよね?」

「っ…!な、に言ってるの…?そんなわけ…」

「…もう隠さなくてもいいよ、私知ってるから」


 愛海はずっと下を向いたまま私の方を見ない。愛海の表情があまり見えなくて不安と恐怖に襲われる。私たちの関係はここで終わってしまうのだろうか。

 そんな気持ちを感じ取ったのか、愛海は私の目を見てほほ笑む。


「大丈夫だよ、私は美夜のこと好きだし、吸血種だからって怖いなんて思わない」

「っ…、それって…どういう…」

「私はずっと前から美夜が吸血種だってこと知ってたんよ」


 私は耳を疑う。でもたぶん愛海が言ってるのは本当のことだ。驚く私を笑って愛海は続ける。


「安心して、誰にも言ってないから」

「いっ、いや…、私はそんなんじゃ」

「ふふ、美夜って素直だよね。そんなにすぐ顔に出るのに私に隠せると思ってたの?菜月は気づいてないみたいだけど」

「そんなこと!……、そんなに顔に出ちゃってるの…?」

「そりゃあもうばっちりよ」

「…いつから気づいてたの?」

「美夜がニュースのことで口を滑らせたときかな。十字架も怖がってたしばればれだよ」

「うぅ…」

「で、そのあと美夜の後をつけたら血を吸ってるところを見ちゃったの。保健室で噛まれそうになった時はさすがにびっくりしたけどね」


 そんなことを愛海は笑いながら言う。


「っ!あの時起きてたんだ…、ごめん…」

「気にしなくていいよ、私が仕組んだことだったんだし」


 愛海は特に気にしていないような素振りで私に笑いかける。


「でもじゃあなんですぐに言わなかったの…?私のこと知ってるって」

「…本当のことを言えば、私だって最初はちょっと怖かったの。もし美夜が悪い吸血種で私のことを狙ってたら、なんて考えちゃって」


 そりゃそうだと思う。今でも愛海が私の正体を知っても普通にしゃべってくれていることが信じられない。


「…、怖がらせてごめん…」

「ううん、今はもう大丈夫だよ。美夜は美夜だし、私の友達だってことは変わらないからね」


 私はこんなに心暖かい友達を持てたことに思わず涙があふれる。愛海はそんな私を見て優しく抱きしめてくれて、いつまでも泣き止まない私を慰めてくれた。



「さ、そろそろ部屋に戻ろ?体冷えちゃうよ」


 そう言って愛海はようやく泣き止んだ私を連れて部屋に戻る。そして菜月を起こさないように静かに眠りにつき、私たちの旅行は幕を閉じるのだった。


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