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私は吸血鬼  作者: ローズベリー
21/33

21. 神敵

香苗視点です。


朝のお祈りを終え、私は教会を出る。

空は透き通った青で埋め尽くされた快晴、木々も青々と茂っていて、穏やかな風にやさしくなびいている。以前であれば清々しい気分で孤児院に向かっていたと思う。

私は主に孤児院の子供たちの世話をしている。吸血種によって親を亡くした子供、捨てられた子供、そんな身寄りのない子供たちを守ってあげたい。吸血種なんていう恐ろしい存在がすぐ近くにいる中で、子供たちとの時間は私にとって癒しそのもの。


「はあ」


やっぱり気になる。

あの黒瀬美夜という女の子。盗み聞きなんてするつもりはなかったとはいえ、私は聞いてしまった。きっと彼女は吸血種と何らかのかかわりを持っている。それがどういったものかはわからないけど、心の中に不安が募る。


彼女は吸血種の協力者? でもあの電話の時の声色はそんな感じじゃなかった気もする。まるで友達と話すような感じだった。いや、人をだまして吸血種に差し出しているのかもしれない。


そんなことを考えているうちに私は孤児院の前まで到着した。

いけない、こんなこと考えてちゃ。子供たちに不安な顔は見せられないもの。


私はいつも通りの笑顔を作って孤児院の門をくぐった。





子供たちとの時間を終え、私は家に戻る。


「「「いただきます」」」


私はいつも通り三人で食卓を囲んでいた。


「お味はどうですか?」

「おいしいわ」

「よければ今度料理を教えてほしいくらいだ」

「あ、ええ、構いませんよ」


やっぱり、ご飯は普通に食べている。吸血種の食事は血のはずだから、やっぱり私の思い過ごし?

そもそもハンターと吸血種が一緒にいるはずがない。

でも、それでも私は美夜が吸血種なんじゃないかと疑ってしまう。あの電話もそうだし、初めて十字架を見たときに一瞬怖がったようにも見えた。初めて出会った時も、倒れた人を目の前にして二人でゆっくり話していた。


一か八か、試してみるしかない。

全員が完食した後、私は三人分の食器を洗う。二人は後ろで座って他愛もない会話をしている。


「いたっ」

「ん、大丈夫か?」

「ええ、少し包丁で手を切ってしまっただけです」


私は人差し指の先を少し包丁で切った。美夜が吸血種なら、何か反応があるはず。


…反応なし。ずっと座ったまま。ということは吸血種じゃなかった?

いえ、違う。むしろ何の反応もないことが不自然かもしれない。


「すみません、絆創膏持っていませんか?」

「俺は持ってないな。美夜はどうだ?」

「…私も持ってないわ、ごめんなさい」


わからない。血を意識しているようにも見えるけど、気がするだけで確信には程遠い。

わざわざ手まで切ったのに結局わからなかった。やっぱりこんな行き当たりばったりじゃダメか。でも、仮に美夜が吸血種だったとしても、とりあえずは私を襲う気はないらしい。なら余計な手出しはしない方がいいかもしれない。今夜、美夜の様子をうかがって、それでもわからなければ詮索は終わりにしよう。



夜も深くなってきたころ、私は美夜の部屋の前まで行って様子をうかがう。

部屋の中からは未だ生活音が聞こえる。そのまましばらく様子を見ていると、一風変わった音に切り替わる。それは服を着替えるような、何かを羽織る音。続いて窓が開けられる音がする。平静を取り戻しかけていた私の心臓が、打って変わって激しく鼓動を始める。

本当に美夜が吸血鬼だったらどうしよう。知ってしまった私は殺されるかもしれない。神也君に助けを求めるべきか。いえ、もしかしたらグルの可能性もある。私がなんとかするしかない。

私は十字架を握りしめた震える手を押し殺してドアを開く。目の前には真っ黒のローブのような服をまとった美夜が窓枠に足をかけていた。


「どこに行こうとしているんですか」


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