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私は吸血鬼  作者: ローズベリー
16/33

16. 一緒

忙しくて更新遅いです<(_ _)>


 友梨佳ちゃんを噛んだ吸血種に会ってから丸一日がたっていた。あれから愛海から何の連絡もない。だけど、連絡がこないのに私から連絡するのは何か違う気がして遠慮していた。

 愛海も友梨佳ちゃんも大丈夫なんだろうか。そう思いながら血を吸うべく家を出ようとしたとき、愛海から電話がかかってきた。こんな深夜に突然電話をしてくるなんて、何かあったんじゃないかと思って急いで電話に出る。


「もしもし、どうしたの?」

『…美夜、お願いがあるの。時間ある?』


 そして愛海は今まであったことを私に話す。友梨佳に血を飲ませようとしたら嫌がられて友梨佳は家を出て行ってしまったらしい。あの時の私と一緒だな、なんて思う。だからこそ私は友梨佳ちゃんの力になってあげたかったし、なれると思った。


「わかった。私に任せて」


 私はそう言って友梨佳ちゃんを探しに行く。こんな真夜中に知らない場所に行くとは思えないから、行きそうなところはいくつか目星が付く。

 早速思い当たる場所に向かうと、やっぱり学校で友梨佳ちゃんを見つけた。道の端に座り込んで肩を震わせているのは泣いているんだろうか。


「友梨佳ちゃん」


 私が話しかけると友梨佳ちゃんは驚いたように私の方を振り向く。その眼は紅く光っていて涙の跡も見えた。私は友梨佳ちゃんの横に座る。


「愛海から聞いたよ、辛かったね」

「……」

「私もね、最初に自分が吸血種だって言われたときはほんと怖かったんだよ」

「…美夜先輩が?」

「うん、血なんか飲みたくないってお母さんにひどいこと言っちゃった」

「私もお姉ちゃんにひどいこと言っちゃった…」

「そうなの?」

「私の気持ちなんてわからないくせに、って」

「そっか、でも大丈夫。そのくらいで愛海は怒んないよ」


 私がそう言っても友梨佳ちゃんは暗い表情のままうつむいている。


「私はどうしたらいいんですか…」

「自分が怖い?」

「…はい、血なんて飲みたくないのになんだか抑えられないんです…」


 友梨佳ちゃんは泣きそうな声でそう言う。その気持ちは私にはよくわかった。突然自分が独りになったような恐怖を感じてしまう。


「そっか。友梨佳ちゃんは私のこと好き?」

「…もちろん大好きです」

「私も吸血種なのに?」

「それは…」

「大丈夫、吸血種になったところで何も変わらないわ。私がいるし、みんなもいるのよ」


 私がそう言うと友梨佳ちゃんの表情は少し軽くなったような気がした。それでもまだ友梨佳ちゃんは恐怖の感情が抜けきれないでいるようだった。


「でも血を飲むなんて…」

「そう?意外と大したことないのよ。ちょっと噛んでちょっと分けてもらうだけ。愛海なんか裸になってまで私に血をくれたのよ」

「えっ…!」

「友梨佳ちゃんがお願いすれば裸にもなってくれるかもね」

「わ、私はそんなことお願いしないです!」

「ふふ、それは冗談だけど、愛海のことも頼っていいんだよ」


 私が少し微笑みかけると友梨佳ちゃんも少し笑ってくれた。


「さ、早く帰らないと愛海が心配するわ」

「…うん」


 そうして私は友梨佳ちゃんの手を取って家まで送った。



 家に着くと、愛海は少し心配した様子で私たちを迎えてくれた。

 部屋に戻っても愛海も友梨佳ちゃんも何も言わない。愛海の話では友梨佳ちゃんは愛海を押し倒しちゃったみたいだし気まずいのも無理はない。かといって私も何を言えばいいのかわからない状態だった。

 そしてこのままでは埒が明かないと思った私は思い切って口を出す。


「血、飲んでみる?」


 私のその言葉にあたりの空気は固まってしまった。やってしまったかと少し後悔したけど、愛海はそれを察してくれる。


「…私は構わないわ」


 愛海のその言葉に友梨佳ちゃんは顔をこわばらせる。血を飲むということは、友梨佳ちゃんが愛海の首を噛むということだ。愛海がそれを許してもそう簡単にできることじゃない。私と愛海が友梨佳ちゃんの返事を待つ形で沈黙が訪れる。


「…、わかった」


 友梨佳ちゃんはしばらく考えた後でそう言った。

 そうして私は友梨佳ちゃんが血を吸う手伝いをすることになった。愛海に首を出してもらうと、私は友梨佳ちゃんに吸血のやり方をひと通り説明する。本当は私がお母さんにしてもらったように見てもらうのが一番いいんだけど、さすがに妹の前で姉の血を吸うのは気が引けた。

 説明を終えてふと愛海の顔を見ると顔を真っ赤にしていた。緊張しているのとは少し違う感じだけどどうしたんだろう。


「愛海、顔赤いけど大丈夫?」

「えっ、あ、大丈夫…」


 言葉ではそう言っていてもとても大丈夫そうには見えない。


「あ、そっか、魅了しないと痛いよね。どうする?」

「…っ、ううん、しなくても大丈夫」


 痛くないようにするには魅了した方がいいんだけど、意識のとんだ顔を見られたくない気持ちもわかる。だから愛海の言うとおりに魅了はせずに血を吸うことになった。

 友梨佳ちゃんはためらいがちに愛海の前に座る。まだ少し肩がふるえているように見えるけど、初めての時は仕方がない。友梨佳ちゃんは愛海を抱きしめるように手を背中に回すと、少し息を乱しながら首筋を見つめる。その一方で愛海は相変わらず顔を赤らめながら目をつむっている。


(なんだか姉妹でいけないことをしてるみたいね…、見てる私が恥ずかしくなってくるんだけど…)


 いや、これは健全なただの吸血なんだ。それに私は友梨佳ちゃんが吸いすぎないようにちゃんと見張っておかなくちゃいけない。

 私がそんなことを考えていると、友梨佳ちゃんは愛海の首筋に牙を立てる。いつかの保健室で漂っていたあの匂いがあたりに充満する。


「んっ……んんっ……」


 え?

 突然官能的な声が私の耳に入ってきて頭の中に疑問符が浮かぶ。友梨佳ちゃんは今血を吸っているから声は出せないはず。じゃあなんでそんな声が聞こえるのか。

 そして私は愛海を見ると目を疑う光景があった。顔を赤らめた愛海があふれでる声を必死に耐えていた。耐えきれずに漏れ出るその声は嬌声にしか聞こえない。


「っ……、あぁっ……」


(これってどうみても…)


 でもそんなことがあるんだろうか、牙で噛まれて気持ちいいなんて。

 しばらくそんなことを考えたあと、私は友梨佳ちゃんに声をかける。もういい時間がたったし愛海もどことなく疲れたような表情になってきた。私が声をかけると友梨佳ちゃんはすぐに血を吸うのをやめた。しっかり止血もできてるし私より上手かも、なんて思う。


「…、おいしかった…」


 友梨佳ちゃんはうつむきながらそう言うと、愛海は友梨佳ちゃんをやさしく抱きしめる。ここは家族二人にしてあげた方がいいかと思った私は部屋を後にした。



 しばらくすると愛海と友梨佳ちゃんが部屋から出てくる。友梨佳ちゃんの顔からは泣いた跡が見受けられる。今は泣き止んでいるところを見ると愛海が上手にお話ししてくれたんだろう。

 その後、少し話をして落ち着いた後に私は眼の使い方を教えることにした。とはいってもそんなに難しいものでもないから友梨佳ちゃんはすぐにできるようになった。


「ん…、これでできてますか?」

「うん、できてるよ」


 友梨佳ちゃんの眼は紅く光っていて素直に綺麗だと思った。


「私とお揃いだね」

「わ、美夜先輩の眼綺麗です…!」


 友梨佳ちゃんに孤独を感じさせないように私も紅い眼を見せてあげたらとてもほめてくれた。友梨佳ちゃんも少しは安心できただろうか。愛海は私たちを見て安心したような顔をしている。


「さ、もう時間も遅いから私は家に帰るね」

「うん、ありがと」


 私はそう言って愛海の家をあとにした。


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