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11 思いっきり聞こえてるけどなー

お食事中の方に不適切な表現が少々あります

 最悪だ。ユズリと掴み合いになった挙句、家畜のうんこにダイブしてしまった。

 ユズリ共々無言で立ち上がる。


「二人とも大丈夫……じゃないよね」


 メグよ。何故私達から距離を取るのだ?


「私、メグさんだけ綺麗な身体でいるのが許せないんですけど」

「奇遇だな。私も丁度そう思っていた所だ」

「えっと、二人ともまずは落ち着こうね……」


 逃げ腰のメグに私達は一歩一歩にじり寄る。


「メグさんも一緒に穢れてください!!」

「お前もうんこにしてやろうか!!」

「ちょっと! なんで私まで巻き込もうとするの!?」


 しかしメグは的確に私達の攻撃をかわしていく。

 何てすばしっこい奴なのだ。


「逃げるなんて卑怯ですよ!!」

「くそ! 何故避けるのだ!!」

「そんなの当たり前でしょ!!」


 ネチャア……。


「「あ」」


 またユズリと二人してうんこを踏んでしまった。

 何てことだ。天は私達を見放したとでもいうのか!?

 まぁ元から神様とか信じちゃいないけど。


「……もう止めようね?」


 メグが心配そうに私達に近付いてきた。

 思わずユズリとアイコンタクトを取る。


「「死なばもろともだ!!」」


 そのままメグに抱き付き、うんこが散乱する地面に転がった。


「ギャー!! くさいー!!」


 辺りにメグの悲鳴が響き渡る。

 これが肉を切って骨を断つという奴だ。

 しかし何の達成感も得られずむなしさだけが私の心に残った。



「あのー、あんた達ここで何してるの……?」


 うんこまみれで放心している私達の所に村人と思われる男が近付いてきた。

 明らかに私達を不審者と思っている様子だ。


「私達この村に派遣されてきた冒険者なのですけど……信じられませんよね?」

「うんこまみれの嬢ちゃん達、それ以上近付かないでくれるかな……」

「おいこら! 私達が汚いとでも言うのか!?」

「ひぇっ!!」


 うんこであちこち汚れている私達が村人に一歩近付くと村人は一歩後ずさる。

 それを繰り返して私達はそのまま村に入り込んだのだった。


  ◆◆◆


 それから暫くして私達は村の共同浴場を借りていた。


「しかしギルドからの書類が無ければ私達が冒険者って信用されなかったよね」


 メグが持参した特製の石鹸で髪の毛を念入りに洗っている。

 洗った後に柑橘系の香りがするメグのお気に入りだ。


「全くですよ。ウンコまみれの私達を出迎えた時の村長さん達の視線が痛かったですよ」


 ユズリもゴシゴシと身体を洗う。


「ったく誰だよ。こんな状況にした奴はよ〜」

「それをテルアイラさんが言うの!? と言うかちゃんと身体洗ったんですか? 臭かったらクソアイラと呼びますよ」

「誰がクソだコラァ!! このパイオツ星人!!」

「パイオツ星人って何ですか!!」

「二人とも飽きないなぁ〜」


 その後、共同浴場で散々騒いだ私達は部屋着用のTシャツ姿に着替えた。

 着てきた服は村人に洗ってもらっているのだ。

 清掃魔法が使える人がいて助かったよ。

 普通に洗っただけでは臭いまで取れないからな。

 ちなみにTシャツは王都の店で買った奴だ。

 それぞれ文字がプリントしてあって、メグは『肉を食べたら野菜もね』の文字。

 ユズリは『見た目三割増し』の文字。

 私は『目指せ不労所得』の文字だ。

 中々お洒落で私はとても気に入ってる。


 その後、村長宅での今後の打ち合わせに赴いたのだが、村人達からの奇異な視線が集まりヒソヒソと何か話をしだした。

 大方私が美し過ぎるという話だろう。まったくモテる女はつらいな。


「ひょっとして私達って信用されていないんじゃないですか……」


 ユズリが不安げな表情を浮かべている。

 どうしてお前はそう悪い方に考えるのだ。


「私達はギルドから派遣されてきたのですけど……信用できませんか?」


 メグが柔らかい口調で村長達に話しかけている。

 そんなの最初から強気でガツンと言ってしまえばいいのに。面倒な奴だな。


「ああ、申し訳ない。学生さん達の代わりに来たのがこんな若いお嬢さん達だったので戸惑ってしまってな……」


 村長を名乗った男が慌てて弁明した。

 ふふん、若いお嬢さんだなんてこいつも見る目があるじゃないか。


「でも村長、クソまみれになってたってのも意味が分からないっすよ」

「それにあの服のセンスは何ですかね?」

「シッ! 黙っていなさい!! 聞こえてしまうぞ」


 戸惑いの声を上げる村人を村長がたしなめている。


「思いっきり聞こえてるけどなー」

「……失礼しました。ギルドから説明されているとは思いますが、皆さんには魔狼の討伐確認を行って欲しいのです。既に学生さん達が魔狼のリーダー格を討伐したので残党がやってきたら討伐をお願いしたいのです」


 まぁその程度なら朝飯前だな。適当にやるか。


「そういう事ならついでに村に悪さをする様な魔獣がいたら片付けておくね。それじゃ二人とも早速見回りに行こう!」


 席を立ったメグが善は急げとばかりに出て行ってしまった。

 え? これ私達も行かなきゃダメな展開?

 ユズリの方を見ると私と同じような顔をしていた。


  ◆◆◆


 村人に聞いた魔狼出現の場所に到着した私達は周囲をうかがう。


「聞いたところによるとこの辺りで魔狼と戦ったらしいですね」


 ユズリが愛用のメイスを軽く素振りする。


「周りは森か……身を隠す場所は多いなぁ。奇襲に注意だね」


 メグは手甲を装着して具合を確認している。

 私は時の精霊を呼び出してここで戦ったという学生達の様子を再現させ確認する。


「ふむ。学生の割にはいい動きをするな」

「テルアイラさん、とうとう独り言を発症したんですか? こころのお医者さんを紹介しますよ?」

「お前は私の事を何だと思っているのだ? 時の精霊を呼び出してこここで起きた事を確認していただけだぞ」

「へぇ! そんな事が出来るのですね! それで何が分かったのですか?」

「少し待て。怪我人が出た……」

「その怪我した子は大丈夫なの?」


 メグが心配そうに声を掛けてくるが返事している場合じゃない。

 クソ! 何だってアイツがこんなところにいるんだよ!!

 こんな所で死んだら私はお前の両親に会わす顔が無いぞこんちくしょう!!


「重傷だが一命は取り留めたみたいだ。最悪な事に私の親戚だ。この恥晒しめ……」

「それで魔狼の方はどうなったんですか?」


 私の見ている光景が見られないので、手持ち無沙汰なったユズリがメイスをフルスイングしている。

 まったくこっちの気も知らないで……。


「リーダー格の魔狼が出て来たが、学生の総掛かりで倒したみたいだ。まあ私達の出番は無いかもな」

「そうなんだ。……楽だけどちょっと残念だね」


 メグが安堵の表情を浮かべながら肩を落とす。

 お前はそんなに戦いたいのか。顔に似合わず物騒な奴だ。


「おーい!! そこの冒険者さーん!! 助けてくれー!!」


 突然、遠くから村人が私達に助けを呼ぶのが聞こえた。


「何ですかね?」

「取り敢えず行ってみないと分からんだろう」

「今行くから待っててー!!」


 メグが叫び返し、私達は声のした方へ走った。

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