まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㉑)
「・・・ん!流石ティリエスちゃん良い子だね!」
彼女の様子に何処か納得したグリップは先ほどの真剣な様子は消え、ただ何時ものように笑って彼女の頭を撫でる。
ぐりぐりと撫でる剣を多く振るってきた胼胝まみれの大きな手は遠慮なく彼女の頭をぐしゃぐしゃにした。
おぉ・・・グリップ氏いつもながら力つえぇから頭がもげそう。
そんな彼に別段ティリエスは怒ることなくされるがままに先ほどの事を考えているとノックが聞こえ扉を見つめる。
「はい。」
「すみません、ティリエス嬢ヴォルです。今、よろしいでしょうか。」
どうぞと声を掛けると、入ってきた彼ヴォルは騎士らしく会釈をし顔を上げた瞬間なんとも形容しがたい顔を作って私の隣にいる人物にそれを向けた。
「なんっで!お前がここに居るんだよっ!!お前の持ち場は牢屋だったろうが!山賊の男はっ!!」
・・・なんと実は持ち場放棄していたのか。しかも犯人収容場所って・・・結構重要なポジションなんじゃないの?
ヴォルの言葉でティリエスは理解し、思わす自分の頭を撫でていたグリップを見つめる。
本人は私の頭から撫でていた手を放し腕を組んだ。
そしてそのまま唸りながら頭を垂れた。
その様は彼の説教から逃れるためにも見えなくない。でもきっとどんな風に言っても彼は許さないのではないのだろうか。
数秒唸っていたのを辞め一瞬静寂が生まれた後、のろのろと頭をあげた後グリップは口を開いた。
「わぁわぁ騒いでいたから、ちょっと頭を揺らして寝て貰った。」
けろりとそう言って左手を上げ振り落とし空を切った、所謂手刀打ち、もっと軽くに言えばチョップのポーズをヴォルにみせる。それも弁明をする為相手の伺うような表情は全くなくさっきの唸る姿は何だったのかと問いたくなるほど、彼はただただ清々しく爽やかに笑ってみせた。
詫びれ皆無、寧ろ仕事をやり切った顔をした彼の表情にヴォルは一瞬にして顔を真っ赤にしたのをティリエスはみて何かを悟り咄嗟に両耳を塞いだその刹那―――。
「お前っこの!!馬鹿かお前!!!!お前がもろにやれば一時どころか永遠の眠りだろうが!!!」
塞いだ耳でもビリビリする程の怒声が部屋中に響きわたりティリエスは咄嗟に避けたもの虚しく耳鳴りを起こした。
お、おぉぉぉ・・・耳がおかしくなってしまった。分かってたんだけどなぁ咄嗟に耳を塞ぐだけでは避けきれなかったか・・・え?グリップさん、ノーダメージじゃん強っ!
怒声で耳がワンワンと変な感覚に陥っている自分に対し、隣のグリップは先ほどと変わらない様子で立っていた。しかも、何故か今度は照れた笑いをみせる。
「えぇ?大丈夫だって加減したし、それにまぁまぁ吐いてはくれたな。」
「・・・ふー、グリップちょっと。ティリエス嬢。」
「は、はい!」
一度大きな息を吐いたヴォルはグリップに外へ出るよう手で合図を送った後、ティリエスの名を呼ぶ。
ぼんやりと聞いていた彼女は急に名前を呼ばれ咄嗟に返事をした。
「少しだけ報告で席を外しますが、外で話しますのでこのままこの部屋で居て下さい。」
有無を言わせない様子で言って彼は部屋を出ていき、その後ろについていったグリップは一度振り返って笑って手を振った後続いて部屋を出ていき扉を閉めたのだった。
パタンっと軽い音で扉を閉めたグリップは少し先で壁に背を預けて既に聞く体制をとっているヴォルに少し小さくため息をつくと、グリップは彼とは反対の壁を背に預けてヴォルと向かい合った。
「お前なぁ一体どういうつもりだ?」
「どういうつもりって?」
近くに誰も気配がない事を確認したヴォルはまだ不機嫌が残る声色でグリップに問い詰めるように言葉を投げる。
グリップはグリップでこう言われると解っていたといわんばかりにその言葉を返す。
その言葉にはぐらかす気はないと感じ取ったヴォルは真っ向からグリップの顔を見つめた。
「お前ティリエス嬢に喋ったんだろ。危険人物の可能性、それに内通者がいる事。なんで喋ったんだ、あの子の護衛は俺達が2人体制でするから怖がらせる必要はないだろ。」
「・・・・・・。」
「確かに、全く関係のない人々も巻き添えになった今回の出来事に警戒を緩めて屋敷に招いてしまった俺達の落ち度だ。もっと警戒すべきだったのにアドルフ卿は全て理解して俺達に何も言わないでくれている。なら尚更俺達はこの屋敷の人に関与させず警戒させずに事を秘密裏に行うべきだ、そうだと思わないのかよ?」
ヴォルは自分の内に苛立ちを抑えつつ彼に強い口調でそう言う。
そんないつもの調子ではない彼の様子にイラついてんなぁ、とグリップは内心思いつつヴォルを静かに見つめる。
と、同時にそうなるのは仕方ないとも理解していた。
何故なら、自分達は元よりこういう事態が起こると解っていてここへ自分達は派遣されたからだ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
裏設定:2人が互いに壁を預けている理由→壁の伝う振動でここに誰かが来るのを警戒しているため。勿論耳も言葉を聞きつつ雑音を逃さないようにしています。因みにこういう緻密なことはヴォルさんの方が上手い設定。ヴォルさんは話しながら同時なら3人分のあらゆる音が聞き分けられ、時間差でなら5人分聞き分けられることができる。(とある説の聖徳太子みたい。 そう言えば聖徳太子の最近の所説は7人同時に聞くことが出来た、ではなくそれぐらいの人数其々の全く別件問題をその場で全て1人ずつ聞いた後、別件の問題だったにもかかわらずその場で全ての解決策の案を立て円満に解決に至ることが出来たというめっちゃ頭が賢くてまわる!という所説もあります。私はどちらかというと後者の方が人らしくて納得しています。)




