まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう⑳)
すいません・・・今回は短めです。
父や母は的確な指示をだし母は治療へ父は混乱を収めつつ医療補助への支持を伝えていった。
母の焦った声に余程の事態だという事を理解できたが、アンや他の従者に私には見せられないと判断された為止められ被害状況を把握することは叶わず私は何もできずに部屋で大人しくすることになった。
後でお茶を持ってきたメイドから話しを聞けば。
ヴォル卿に遅れて慌ただしくやってきた騎士達に皆騒然となったらしい。
彼からの報告通り、重傷者と軽症者あわせて12人が運び込まれ様々な人でごった返していたという。
中には今回事を起こした山賊らもいたようで怪我をした身で何かを叫びながら激しく抵抗したり、その声で怯える一般人を宥めたり、騎士の興奮した怒声も響いて怖い光景だったとメイドは少し青ざめて話してくれた。
青ざめる程の光景の事を思い出させて申し訳なく思った私は、それ以上メイドから何も聞かず悔しいが大人しく事が治まるのを待つこととなった。
まだ子供というのはこういう時何もできない、仕方ないけどやっぱりやるせない気持ちにさせられる。
小さくため息をした、その時だった。
「失礼しまーす。」
「グリップ卿?」
私が大人しく部屋で待って暫くすると部屋にグリップ卿がやって来た。
鎧が少し汚れているが、別段大きな怪我を負ったわけではないようでその顔はいつものようにへらりとした笑みを浮かべていた。
ノックをせずに入ってくるのは彼らしいなと思いつつ彼を笑顔で迎えた。
彼は部屋にある椅子へ腰を掛けてグリップは小さく息を吐く。どうやら少し疲れているようだった。
彼らの場合長い道のりの途中交戦することになったのだから無理もない事だった。
「ティリエスちゃんごめんね。まだちょっと外がごたごたしてるから俺と一緒に部屋で留守番だって。」
「そうなんですか?・・・わかりました。怪我した人は大丈夫なんでしょうか?」
「確かに重傷者も出たけど、処置が早かったからここで何日か厄介になればちゃんと良くなるってリリス夫人が言ってたから大丈夫だよ。」
「そうなんですね、よかった。もう安心なんですね?」
グリップがその質問にゆらゆらしていた身体をピタリと止めて少し考え込み、彼は何かを決めたように真顔になる。
その顔を見てティリエスもまた彼から何かを感じ取り思わず彼をじっと見つめた。
「ティリエスちゃん、これは大人がティリエスちゃんには怖がるから黙っておこうって勝手に決められたことだから本当は聞いたら駄目なんだけど、今から喋る独り言に落ち着いて聞いてほしいんだけどいいかな?」
珍しく有無を言わせない様子にティリエスはこくりと小さく頷いた。
「この前の冬に女の人がねどうやら酷い場所で雇われてそこが怖くて辛くて逃げてきて・・・それで西側のある村の近くで死んでた。
ティリエスちゃんは賢いから分かると思うけど、あの真冬の状態なら公爵領へ逃げるより王都側の方が村や町が多いし、それこそ雪の量だってぐっと少なくなるから助かる可能性も上がったと思うんだ。
それなのにその女の人はそっちへ逃げられなかった。きっとそっち・・・西の領地にその怖い建物があってその人は反対のこっちへ逃げてきたんだと思う。」
少し前に母が零した『西の。』と言っていたのを思い出し、グリップはその事を私に教えようとしていた。
どうして今、と疑問に思ったがその疑問はグリップの言葉ですぐに解決した。
「俺は今回の山賊の奴ら、繋がっていると思う。山賊の方じゃなくて一般の人質になってた奴ら何人かの方に気を付けて。アドルフ卿が居なくなるこの時期に見計らって事を起こしたんなら、この屋敷に内通者がいるかもしれない。俺達が来たからすぐには事を起こさないと思うけど、ティリエスちゃん出来るだけ俺達やリリス夫人と一緒に居てね。」
最期は独り言ではなく彼からの要望で、私は彼の真剣さに大きく頷いたのだった。
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