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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第2章~誕生編~

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まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう⑭)

いつも読んで頂きありがとうございます。

本来なら次回予定がなんと1/1(金)という事になるんですが、恐らく書けないと思うので次回は12/31予定です。ご了承ください。


こうして核の粉末について様々な意見を話し合いながら、これをなんと呼べばよいのかという話しまでいきついた私達は、とりあえず前世と同じ【砂糖】と名前を付けた。


この世界では不思議な響きだったようで、彼にどうしてこの呼び名を付けたのか尋ねられたので『砂のようにサラッとしているので。』とそう言って誤魔化した。


そんな経緯でとりあえずフルクトースの粉末は砂糖と改めて名を変え、また新たな料理や今度こそお菓子のレシピに早速着目できるとそう手ごたえを感じていたのだが、やはり人生というのは中々ままならないものである。


ギリアに砂糖の存在を教えて3日後、昨日まで彼とレシピについて話し合い今日は試作を作ることになっていたのだが、約束の時間通りに厨房やって来て先にいたギリアを見れば、なぜが酷く暗い表情をしていた。昨日はあんなにはしゃいでうきうきしていたのに一体どうしたのかと問えば、彼は重い口を開いて事情を話した。


余程ショックだったのか話しが脱線してそれてしまう事があったが彼の話しを纏めるとこうだった。


昨夜彼は自分の奥さんに新しい調味料を発見しこれは食の文化に変化を起こすものだとそう伝えたらしく、最初は奥さんも嬉しそうに聞いていたそうだ。

だが原材料を問われた時素直に伝えたところここで奥さんは難色を示した。


彼女は彼にこう言ったそうだ。


『公爵様にお出しする料理に問題のあるなしが解らない代物を加えてお出しするのは問題ではないの?』


『何年も置いてあるものを使用できるものなのかしら?』


『まずは使用しても問題はないという事を証明してから使うべきではないではなくて?』


奥さんに正論を突かれたのだ。

彼も確かにとその時は思ったそうだが、出来れば早くこの調味料を使いたい彼は彼女に自論を伝えたのだそう。


植物は食べられるものなら基本葉や茎や食べられる、という自論である。


だが、その話しをしても奥さんは首を縦に振るどころか『とんでもない!』と否定された。


『お嬢様が貴方のお腹と同じ超人じゃないでしょう!絶対にっ!きちんとっ!調べてから!!使って!!!』


すごい剣幕で叫ぶようにそう言われてしまい、そんな奥さんの必死さを見てギリアは首を縦に振るしかなかったのだという。


妻の一喝で新しい調味料の存在に興奮して周りが見えていなかった事も反省したギリムは、こうしてティリエスに試作づくりに待ったをかけたのである。



因みにティリエスは鑑定で奥さんが懸念されたことは問題ないことをとうに知っている訳なのだが、まだ鑑定能力を知られるわけにはいかない彼女は、ギリムのこの申し出を受ける他なくなってしまったのだ。

というわけで、砂糖の開発は一時中断し先に使用できるのかどうかの調査する方向で舵をとることになったので、ギリムはまず生産者であるルル村の村長の元へ赴くことに決定した。






なので、時間が出来た私はと言うと――—―。




「まぁ読書するしかないんですけどねー・・・はぁ。」

そう言って誰に言うわけでもなく独り言ちた後、小さくため息を吐いた。


ようやく、砂糖の存在が世に出回る瞬間が拝めると思っていたのになかなか上手くいかないことに気落ちする。


子供という存在がこうもままならいというのは理解しているつもりだったのだが、実際にそれに直面すると仕方ないと解っていてもへこむものだ。


焦ってはいけない、徐々に世界に浸透させるように広めないと。ぽっと出の物はひどく注目されるが反発も大きい。

だから今はギリムに頼むしかない、待つしかない・・・んだけど。



「もどかしいなぁ・・・。」

「お嬢様、失礼します。」


と、アンがノックしてよたよたと部屋へ入ってくる。

彼女の手には飲み物が入ったお盆があるのだが、やはり彼女が飲み物を零すことはない。

綺麗な所作でテーブルに飲み物を置いたアンは、開いた本の内容に目を止めた。


「刺繍の図案でございますか?」

「えぇ、本格的に習う前に少しずつ予習をしておこうと思いまして。」

貴族の女性としての教養の一つに刺繍があり、私も10歳になれば刺繍を教わることになっている。

創作で刺繍する人は稀で、本の図案を見て刺繍するのが基本なのでこうしてとりあえずどんな図案があるのか見ていたのだ。付け加えると刺繍の図案の本だけで150冊ほどこの屋敷に納められているのでこの世の刺繍の図案はなかなかの量がある事が伺えた。


「そうですか、そのような姿をみているとディオス様を思い出しますねぇ。」

「ディオス大叔父様を?」

しみじみと言うとアンはこっくりと頷いた。

「はい、幼いディオス様もとても賢い方だったのでこうやって先のことを学びよく本にかじりついては大人に手紙を出していましたねぇ。」

「手紙を?」

「あの方は昔から錬金されたアイテムの可能性についてよく私に聞かせてくださいました。今の錬金アイテムは不完全なものばかりできっともっと便利になる引き出し方がある。そう語っては大人の方に手紙を出しては勉強に明け暮れてました。殆ど相手にされなかったそうですが、けれどそのおかげで文官の道しかなかったディオス様は魔法師になるための紹介状を貰うことが出来、今も立派にお仕事をなされています。」

「凄いですね、ディオス大叔父様。」

「えぇ、ディオス様はご自身の道を掴んだのです。本当に世の中何が起こるのか分かりませんね、けれど1つ言えることがございます。」

「?」

「ご自身のなされたいことはご自身が動かねば・・・きっかけが生まれない、という事です。」

「きっかけ・・・。」


ティリエスはじっと自分の手元をみて、アンの言葉を呟く。


「・・・そうですわね。確かにきっかけがなければただ待つだけしか出来ない。」


ならば、やってみようか。


アンの言葉で私はある事をすることにした。


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