表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第1章~夢現編~
9/731

如何にして私はここにやってきたのか(本人だってよくわかっていない。)⑨






-------------------------------------------





やっとお昼休憩に入っていつもの場所へ行くといつもなら遅めにここに来るというのに先に同僚が座っていた。


なんか、珍しい・・・・。


私の部署もまぁ多忙ではあるが休憩時間は早めにとれるので彼女より早くこの場所に着くからだ。

だから彼女が既にその場所を陣取っている光景に私は何とも珍しいと思った。


そしてそういう場合、普段通りの行動と違うせいか相手の何かが違うという事にいち早く察知も出来るのである。



・・・・・どうしてなのか分からないけど、ここの周りの空気が重いような気がする。


挨拶をそこそこにご飯を食べ始めた私は、普段以上に口数の少ない上に少し俯いている彼女になんとなく真正面から見れない。これは彼女から声をかけてもらうのを待つしかない、もぐもぐとお握りを咀嚼しながら私はただ黙って昼食を食べた。


数分ほどそうして時間が過ぎた頃、つと彼女が顔を上げた気配がわかった。



「・・・ちょっと聞いて頂けます?」

「っんぐ!!」


今日初めて彼女の顔を見れば、明らかに寝不足な隈に血走って充血させた目でこちらを見るので思わずぎょっとする。

驚いたことで私は思わずオカズを噛まずに丸呑みしてしまい、ゴキュンっと苦し気な喉の音を鳴らし立ててオカズはそのまま胃へと向かっていくのが伝わった。


まじでビビった・・・・。


まぁ、そんなことより彼女の事だ。いつも身の回りに綺麗を心がける彼女がこうも・・・・まるで幽鬼のような表情になっているのは深刻なことだ。・・・・元の顔が綺麗なだけに威力も半端ない。


「え?うん聞くけど・・・・もしかしてその机にある束の事?」

「そう・・・・・・聞いてよ!何度もやってみても救済エンドにいかないの!和平エンドとかもなし!なにこれ!!意味わからないわ、なにこのゲームめ此畜生!」


動揺を隠して同僚にそういうと、彼女は今まで静かだったのにマシンガントークを繰り広げた。

なんだ、ゲームのことだったのか・・・・・、仕事で何かやらかしたのか心配したのに・・・・。


少し苦笑しながら彼女の言葉に耳を傾ける。

そういえば、結構彼女はどんなことに陥っても冷静に対処するし熱が入っても静観するタイプだというに今回に関してはひどく激高しているのは本当に珍しいことだ。


彼女がここまで熱を入れて話すのはあの事しかない。


「救済ってあの悪役第3皇子の?ええっとなんていうゲームだっけ?」

「“時空の鐘~女神の祝福を貴方に~”っていうタイトルよ。何が祝福よ厄災の間違いじゃないのバッドエンドに進んでも斬首、グッドエンドに進んでも斬首!トゥルーエンドに進んでも斬首!!」

「・・・・それでこの紙の束は?」

「2次小説書こうと思って資料集めしてるの。」

「すげー!まさに神。そして推しの愛が海より広く重い!でもそれがすごい!」


彼女はコーヒーを飲んで一息つくと持ってきたその束を捲る。

びっちり書かれた内容に本当に愛が重いなと感じる私は、彼女が落ち着いてきたことを悟り、お箸片手に携帯をいじり始める。


勿論毎日欠かさずしている例のゲームをするためである。

何せ私の休憩時間も有限なのだ。


彼女もそのことは十分に分かっているので、私の作業には全く気にせず話しを続ける。


「それで設定とかいろいろ読み漁っていたらね、あることに気が付いたの。」

「・・・え?何?」

「悪役側がえらい可哀そうな一生を辿っていたことよ!まず第1王女はね声を無くすきっかけが—―――――――。」


それから彼女は興奮が冷めぬままキャラの設定話しを進める。

それを聞き相打ちしながらゲームに目をやる。実はこの前やっと魔王を対峙して攻略し次へと進めることができたのだ。約6年の歳月おおよそ、んーーーーーー円を軍資金(課金)につぎ込んで・・・・・・。

ただ最後は面白いことに他のゲームとは違って結末の選択が決めることができ、且つこの選択によって今後のゲーム進行も大きく変わるといったものだった。


正しく運命の選択であった。


魔王達をコテンパンにのした後に出てきた選択項目にはこう書かれてあった。




①魔王を倒して部下も殲滅 

②魔王を倒して降伏するものには奴隷になることを前提に労働環境を強いる。

③その他(     )


と出た。



選択①と②はNPCが提案した選択だ。彼らがそう言うのは当然だろう、物語を進めると彼らはなんと約500年の間今の状態を強いられ一方的な暴力を味わっていたのだ。


故郷には帰れず、自分達は何度挑んでも殺され再生されられそしてまた初めからの要求を強いられる。

心を折られ楽になりたいと願ってもそれは叶わない日々だ。

彼らにとってそれは地獄の日々だったに違いない。


ここまでされると憎むのも当然なんだろうし私にとってもう家族であり仲間だと思っている彼らの意思を尊重してあげたい。③以外の選択へ賛成しそうになった。


けれどその時、魔王の表情が一瞬だったが変化したのを見逃さなかった。


それは、小さな笑みだった。


まるで何かを諦めたような・・・安堵したような笑み。

寂しい、寂しい笑みだった。


見間違いではなかっただろうかと思うほどすぐに無表情に変わった彼をじっと見て、そこで私はこの選択を考える。


上の2つの選択を選んでも魔王と謂われる彼だけは助かることはない。

この世界の設定(ループ)だって魔王が全ての元凶だ、罰して当然だと思う・・・・でも、死なせてもいいんだろうか?



・・・勘だろうか?

私の中で、その2つは選ぶべきではないと告げる。

分からない・・・・・が、私は選択のボタンを押す。


私は選択を③にした。

その③は私が決めたことを書くことが出来る選択だった。




③その他(魔王達も国の一員として仲良く国の復興に取り組む助け合うようにしたい。)





そう書き込んだらまばゆい光が出てきて魔王達のおどろおどろしい姿がただの好青年に変身した。

彼らもまた無理やり変貌させられ虐げられエネルギーを()()に送るよう強いられた別の世界の人だったと判明。今の浄化の光で断ち切ることが出来て元の姿に戻れたらしい。


ユーザー()が選んだ選択を彼らは従うしかない。


泣きながら元魔王の話しを聞いていたNPC達も完全に吹っ切れてはいない様子を見せていたが、彼らを許し迎えることにした、というエンドを迎えることができた。


ハッピ―エンドかは分からないが私は良い選択だっとそう思っている。




それでいまは国の復興作業や農作業やら開拓やらを楽しんでいる。

魔王領のテリトリーも使えるようになったので広くなったのだ。

今では主に農作業とか生産業をするゲームになってしまったがこれはこれで楽しい。

時折、互いのちょっとした小話しが見れるのだが、それを見るに関係は少しずつだがよい関係を結べているようだった。




「ねぇ、聞いてる?」

「!はい!聞いてます!」


危ない危ない、ゲームに集中しずぎて相槌を打てんかった。


低めの彼女の声に私は慌てながらも答える。

「えっと、王女は兄であった王子と母親を殺され自分も声が出ないようにさせられたし。第3皇子も自分の国で殺されそうになったりしてた。」


「それに悪役令嬢もよ。彼女なんか初めから自分の親に見捨てられるわ死なれるわ、まわりに助けてくれる大人もいないわ、更には厄災令嬢ともいわれたのよ。」


「なんかヒロインとは正反対なワード三拍子をもったキャラだね。でもなんで厄災なの?」


「なんか昔偉大なことをした聡明な自分の祖父と王家の血筋で多くの人脈をもっていた祖母に当たる人が結婚を反対していたのに押し切って悪役令嬢の両親は結婚したの、しかも彼女を身ごもったのを理由にね。それにこの時期に祖父母は死んじゃってるのよ。2人に反対された結婚をした両親にその子供は誰かが不吉と吹聴した、その時期には謎の病死が相次いで最初にその病死したのが祖父母の2人。だから厄災を持ってきた公爵令嬢という忌み名が産まれた当初からついていた。それに出産のときに呪いで母親も植物状態になったから余計拍車がかかったのよ。もうこれだけで可哀そうよこの子!」



そういって彼女は更に事細かに彼らの一生ともいった設定の説明に耳を傾けながら、祖父母という言葉にふと思いふける。





自分の両親がなくなる以前にもう既に他界している祖父母はどんな人だったんだろうか・・・・?


友人の祖父母みたく朗らかに笑う人で孫を可愛がるような人だったのだろうか・・・・・・・。









優しい人、だったらいいなぁ・・・・・・。











______________________________________________________________________________







「認められんといったら認められんのだ!!」


うわぁびっくりした!


急な声に目を覚ましたらそこはある書斎の部屋だった。重厚な作りにな書斎に男が3人いた。


1人は2人から離れて姿勢を正したまま見つめる燕尾服を着た・・・正しく執事のような風貌の初老の男性。

もう1人はすぐに分かった、アドルフだ。

どうやらあの夢の出来事から無事生還したらしい、彼の右腕には彼らにあげた腕輪が見える。

そして彼の正面には老け込んだ男性が鬼のような顔で彼を見つめている。体躯が元々良い人物らしいその男性はアドルフによく似ている。彼のお父さんなのだろうか?


「けれど父上。」

やっぱりアドルフのお父さんだった。

「何度言っても認めることは出来ん。アドルフ言ったはずだ、お前は公爵家の跡目だ跡目ならそれなりの地位の令嬢と婚姻することも義務だ。彼女とは認められん。メイサにも会わせん。・・・・諦めるんだアドルフ。」



「それは・・・・・暗に()()()と婚姻しろと?冗談じゃない!あんな悪意の塊の女性など!父上だってあの女のしてきたことは耳に入っているはずです!それに俺はリリスを愛している。彼女以外と添い遂げたいとも思わない。父上だって愛のない家庭をつくるものではないと俺の子供頃から言っていたではありませんか!」



アドルフは懇願するように父親に訴える。だが、彼はアドルフに背を向き何も答えないでいた。

そんな彼の態度にアドルフも長い重いため息をつく。



「・・・・また、明日も来ます。承諾していただくまで諦めません、母上にもお伝え下さい。」





最後にそう言ってアドルフは書斎から出ていく。執事は静かに扉を開け彼が出て姿が見えなくなるまで見送ると、いまだ後ろを向いたままでいる男を悲しげな目をむける。



私も、彼のお父さんに釘付けだった。

彼らの婚姻を真っ向から反対し、その冷たい態度に腹は立ったがそれ以前に不思議な出来事を見つけ首を傾げる。





どうして彼のお父さんから黒い靄が見えるんだろうか?

読んで頂きありがとうございます。

今回もスマホからなので後日内容を再確認して、修正するかもしれません。ご了承下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ