私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(こうして皆この地に慣れていく、さて次は?⑥)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/10(金)投稿予定です。
今日も今日とてエルアルの仮工房部屋に居座っていたティリエスは、深刻な顔をして言い放ったエルアル卿を見たあと、本日のお供であるレイを見やる、言われたことに相手の言った意味を理解しようと思ったのはレイも同じだったようで当然のようにレイと目が合う。
何を言い出すかと思えばーーー。
「私達が手伝っているじゃないですか?」
そう言ってティリエスは隣でぐるぐると自分より大きな鍋をかき混ぜているレイの鍋を見ながら次の材料をぽいぽい入れ始めた。
そんなティリエスを見てエルアルは「違うだろうどう考えてもぉ〜」と珍しく情けない声を出した、しかも膝をついて項垂れている。
あるある、内心ではポーカーフェイスでも仕事が忙しくなると情緒不安定になるの。
前世の時自分がそうなったこともあれば自分の上司が若干情緒不安定になったところを見たことがあるティリエスは、ウンウンと頷いていたが、いつに間にか顔を上げてそれを見ていたエルアルがジト目になっている事に気がつく。
「言っておくけどな、あんたが思っていることと違うからな俺が思っていることとと。」
え?違うの?
「・・・俺が思っていうのは、あんた公爵令嬢だろ?」
「?そうですけど?」
何を今更言っているのかと表情に出ていたせいか、エルアル顔がさっきより凄みを増す。
「普通、貴族様はな?平民と一緒に仕事しないの。こうやって資材を作るとかそんな事しないの!命令はするけど!しないの!普通!」
言われてティリエスは手が止まる・・・が、数秒後には何だそんなことかとエルアル言葉を軽く受け止める。
「いや、良いじゃないですか暇だし。」
「だから違ぇんだよなぁ。」
またガックリと項垂れるエルアルにティリエスはまぁまぁとフォローになっていないフォローをする。
「いっときの事ですし、今は人の手をたくさんあれば借りたいでしょう?」
「そうは言ってもな?あれなんか良いのかよさせて。」
そう言って指差した先を見る。
そこでは大きな箱にある砂の中からせっせと何かを掘り探している双子の背中がみえる。
「あい!」
「あい!」
「お二人とも早いですね、流石です。」
隣に座っているシナウスはティリエスの弟達の前にあった砂の箱を退けると、次に白く大きな石の塊のような物が積まれている箱をまた前に置く。シナウスが手をかざせばそれらは一瞬にして砂へと化す。
「ではお二人ともまたこの石を同じ物が入っている箱に入れていってもらえますか?」
「あい!」
「あい!」
良い返事をして彼らはまた砂に手を突っ込む。
その手には変換石やクズ魔石が握られ、なれた手つきで同じ物が入っている箱へとポイポイ入れていった。
「良いんじゃありませんか?2人とも毎日楽しそうにしていますし。」
「いや・・・やっぱ違ぇと思うんだけどなぁ。」
「良いじゃないですか、私とお嬢様との毎日の共同作業出来て浮かれてますし。」
「お前はお前でそれもおかしいだろ・・・。」
しかもそれただ混ぜているだけだろと突っ込んでいると、ニコォとレイの不自然な笑みにエルアルは口を紡ぐ。
「でもまぁ、そろそろ対策はするんじゃないですかね?」
レイがそう呟いたからかどうかはわからないが、部屋のドアをノックする音が大きく聞こえた。
エルアルが誰だと聞けば、答える前に扉が開いた事でエルアルは一気に嫌な予感がして嫌なものを見たような顔になる。
「どうもーお疲れ様です皆さん。」
「またお前か・・・。」
ドアを開けたの人物がオーガだとわかると予感が当たった事で一気に苦虫を噛んだような顔をさせたエルアルは小さくため息をした。
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