私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(村人候補達から村人達へとなった彼らは私達には無いものを持っていました、それは技術です。㉞)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/19(金)投稿予定です。
ティキがグリップだけでなく自分にも小言を言うようになったのをティリエスはのらりくらりと交わしつつ日々を過ごしていた。
まぁ、ただぼんやり過ごすという事はなく、ティリエスはその冬支度を考えない分オーガとの商売ルートのやり取り、エルアルの開発のあれこれ、そして今後子供達に教えるための教材の件の詳細や制作などなどを手伝っているうちに、更に数ヶ月経った。
元々難攻不落の城から更に豪雪という自然の鉄壁要塞と化した事でようやく常に警戒していた目を緩ませ通常警戒へと戻し、安堵しつつ今年もこの恒例はやってきたーーー。
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「アイルお兄様、初の遠征訓練お疲れ様でした。」
「ありがとうティリエス。」
ガヤガヤとあちこちで騒いでいる食堂の中、アイルを労いながらチリンとグラスを鳴らしてティリエスは相手を労う。
そう、今日は毎年恒例、メドイド家による選抜野営訓練後の慰労会である。
毎年見る顔ぶれながらティリエスは誇らしい気持ちでいっぱいになる。
何故かって?ふふん、なんったって今年は何と!お兄様もとうとう選抜に選ばれるにまでになったからだもんねー!
今年13歳になる彼はみるみる剣術でも頭角を現し、一目置かれるようになった。
本当、最初見た時誰ですか?!って思わず叫びそうになったもんな。
ティリエスはあの時を思い出す。
背も体つきも随分変わっていたし顔つきもより神々しくなっていたので、例の教会でぶっ倒れて気がついた時には我が家にいた時、見舞いで来ていた時には一瞬誰なのか分からないほどだった。
「でも僕なんてまだまだだったよ、他の人について行くのにやっとだったよ。・・・もう少し、筋肉がついてくれたらいいのに。」
私から見れば十分な筋肉だと思うが、本人にとってはまだまだらしい。
「僕はこうしなやかな筋肉じゃなくて圧倒的な力が出る筋肉のつき方になって欲しいんだけど。どうも難しいみたいだ。」
だからもっと食べないとねと大皿に盛りに盛った肉の塊にティリエスは遠い目になる。
うーん、私としてはお兄様は筋肉モリモリより今の方が良いけどな。
本人に言うとがっかりすると思いティリエスは彼の同意を求める声に対し曖昧に言葉を濁していると、誰かがこそっと隣に座ってきたのでティリエスはそちらを見る。
「あれ?オーガさん珍しいですねこちらへ来るなんて。」
隠れるように座りご飯を食べて始めたオーガを見て、ティリエスは首を傾げた。
「お父様との話しは済みまして?」
「えぇ、大方ね。今度の商品をどう販売していくかルート確認とかね。ただねぇ・・・。」
ん?何だ?
妙に歯切れの悪い様子にティリエスが首を傾げていると、遠くからオーガを探す声が聞こえるのでそちらを見れば最近雇った父の補佐官である気の強い方の女性がオーガを探しているようだった。
若干血眼になっている気がするのは私の気のせいだろうか。
「呼ばれていますけど良いんですか?」
「良いんですよ、全く少々面倒な補佐官がついて疲れます。」
「え?何で?」
「至極真っ当な事を言うので、少々言い合いになるんですよ。大丈夫だと何度言っても聞く気がないんです、あの小娘は。」
つまり黒よりのグレーをしていると。
涼しい顔で肉を口に運ぶオーガにティリエスは乾いた笑みを向けた。
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