私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(村人候補達から村人達へとなった彼らは私達には無いものを持っていました、それは技術です。⑤)
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「・・・え?あの、事業ですか?」
「はい!如何ですか?」
「いや・・・。」
どうですかと言われてもという空気でトーメは隣にいるカイディーンに視線を寄越す。
当然、カイディーンも困惑したままで目の前の幼い少女を見やると、彼女の瞳は希望の持った眼差しで輝いていた。
だが大人達は先ほどの重い空気で緊張を余儀なくされた手前、ティリエスの天真爛漫な言動をすぐには理解できなかった。
それは父であるアドルフも同じである、顔には出していないが娘の言動に困惑していた。
「先ほど私、ある情報を耳にしましたの。なんでも貴方は自営業をされていたとか。それは間違い無いです?」
「え?えぇ・・・まぁ。小さい会社でしたが。」
「では!どうですか!」
「いやあの・・・どうですか?と言われてもーーー。」
困惑している彼の返事を待っているティリエスに声がかかる。
振り返るとアドルフは若干戸惑いを見せながらティリエスを呼ぶと言いにくそうにしながら口を開いた。
「ティリエス・・・、何を思っての提案かまだよく理解はできていないが、彼らは市民権を得ていても偽名で本人の今までの経歴は無い。事業を使用にもこの国では認可されないぞ?」
確かに彼らはここの市民権を得ているが本名では登録をしていない。それは彼らと重々話し合い、出した結果なので誰も納得した結果だった。
それはトーメも同じで彼も勿論偽名で登録されている。
「今彼はトルメという、農業を生業にしていた男性になっている。トルメとして事業をするには無理があるだろう。」
父の言い分は最もだとティリエスはそう思った、だがティリエスの表情は変わらないでいるとそっとやって来たレイから紙をもらう。いつの間にかとって来ていたそれにティリエスは1度目を通すと満足げに笑い、アドルフに手渡す。無言で受け取ったアドルフはその紙がある人物の市民権の証書だと理解する。
そしてアドルフが最後の署名欄に書かれている人物に眉を寄せる。
「ここでどうしてカイディーン様のものが?」
そこに書かれているカイディーン、カイジの名前が記されていた。
「カイディーン様、貴方一時期こちらへ留学しているますよね?」
「え?あぁ、もう何年にもなるが確かに、一介の子爵家の次男としてここの貴族学校に編入していたな・・・。」
「その時学科を建築学科にされませんでした?」
「あぁ・・・そうだ。帝国では建築が盛んで元々自分も興味があったからな。あの頃は身分など忘れて机に向かっては色々調べたな。」
徐々に思い出して来たのかカイディーンは懐かしそうにあの頃を思い出す。
そんな彼の返事にティリエスはニヤリと笑うと次に質問をした。
「ではその時にこの国で試験を受けませんでした?何か大きな試験。」
「・・・そうだ確か、国家資格の試験を受けた。ただ試験を受けた時合否を聞く前に国の事情で聞けずじまいだったが。」
「・・・ティリエス、まさかと思うが、彼らに建築業を立ち上げろと言っているのか?」
「はい、そのまさかですわ!」
話しを聞いていてだんだん娘の目論見がわかってきたアドルフはそう聞くと、ティリエスはコクっと迷わず、隠しもせず大きく頷いた。
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