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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第2章~誕生編~
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まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(大好きな皆に恩返ししよう、そうしよう。㉟)



最期の1人が拠点の中へ押しやられた直後、要塞の重厚な扉が不気味な音を立てて閉しまるのを合図に外に通じる窓が順番に音を立ててひとりでに閉まっていく。


閉まり始めた扉を見た瞬間僕は身体が自由になったのを見計らって上へと続く螺旋階段へ駆け出した。


『待て!シナウスっ!!』

総督の言葉を無視し、最上階へと向かっていった。


姉様!っ姉様!!

胸が苦しくなるも気にも留めず駆けあがる。


そして最上階へ続く扉へ飛び込むように進めば、暗雲が立ち込めた空が見えた。

そしてそのまま外へ彼女の元へ行こうと飛び出そうとした・・・が。


目の前にある見えない壁に阻まれた。


『魔法壁・・・くそっ!!くそっくそっ!!』

シナウスは悔しさのあまりその場で悪態をつき壁を拳で叩きつける。

目の前には要塞を覆う透明な膜、防御魔法が発動され外へ出ることは出来なくなっていたからだ。



これもきっと姉様が施したもの。でも、こんなことをされても・・・僕達は嬉しくないっ。


叩いても魔法壁が壊れることはなく、自分の無力さを思い知らされその場でずるずると叩いていた拳を力なくだらりとさせる。



外に目を向ければ姉様は相変わらずその場に立ったままだ。


『ふふふーん、今こそ社会人の力を見せる時。』

『正しくは社会人が金にものをいわせて得た課金アイテムの力を見せる時ね。』

『うっ、い、いいんじゃない~ここが正念場だし。』


頭上からなんとものんびりな声が聞こえる。


・・・・カキンアイテム?


ふと姉様の知人はなんと今言ったのかとシナウスは頭上を見上げた。

カキンというアイテムはなんだ?姉様にとってそれはどういうものだろうか?


頭の中で彼女の持ち物のリストアップを調べてみるがカキンという文字は1つも出てこなかった。



空間収納(マジックボックス)にも見当たらない・・・ここにはない?

と、彼女の情報をじっと見ていたら急に彼女の持ち物のリストアップが変更された。



頭部→バロンの仮面

身体→バロンの礼服

両腕→バロンの鏡

右手→大精霊の杖

左手→ケーリュケイオンの杖

両足→バロンの踊り靴

右耳→加速の輪のピアス

左耳→賢者のピアス



急に装備が変更された?

今までも姉様は錬金術でより質や効力を高めた一級品の装備品を付けていたはずだ。

それが一瞬で変更された?しかも空間収納(マジックボックス)にはない。もしかして姉様は他にも何かを所持している・・・そしてそれは僕達のようなものでは閲覧できないような代物・・・まさか。



『カキンアイテムというのは・・・もしかして【女神の贈り物(オーパーツ)】?』


姉様の装備品に鑑定をしてみるが名前しか判明しない・・・という事は本当にあれら全てが女神の贈り物?!


【女神の贈り物】が1つあるだけで国を1つ容易くどうこうできる、つまり姉様の所有物にはそれらが多数所持されているという事。


『勝てるかもしれない・・・。』

思わずぽつりと言葉を零す・・・と後ろから多数の足音が聞こえ振り返ると総督含め多数の仲間がここへやってきた。誰もが悲壮感を滲ませつつ神妙な面持ちで僕を見つめる、その中にはビエネケス王も居た。きっと数分前僕も同じような顔つきであっただろうそれらを見ていたら、急に笑いが込み上げてきた。


『大丈夫か?シナウス。』

気がふれたと思われただろう、総督が心配そうにこちらを見つめてきた。


『ふ、ふふふっ・・・だ、大丈夫です。総督、皆さんも申し訳ありません、っふふ。』

『い、いやいや、お前大丈夫には見えないぞ?』

第1隊長の言葉に誰もが小さく頷く、本当に大丈夫だというにと心の中で思いつつけれど事情を知らない、仲間にとってはそう思われても仕方がない。

徐々に笑いがおさまった僕は先ほど知った事実を仲間へ説明し始めた。








『【女神の贈り物】?!・・・いや、君の鑑定能力を疑っているわけではない・・・ないが、本当にあれが?』

総督の言葉に誰もが心の中で頷く。

『はい、間違いありません!一度王に拝見させていただいた国の宝物庫の中で保管されていたヒギュヘイアの杯も同じように名前までしか鑑定が出来ませんでした。姉様の装備品も同じです、姉様の装備品はすべて【女神の贈り物】のそれです!』


いや、それですっていわれてもなぁと誰もが心の中で呟く。


あの変な顔の仮面も?

あの地味でもっさりした服装も靴も?腕はなんか光ってるし?

地味な装いなのに1つはド派手な杖でもう1つはおどろおどろしい杖で?


『ちぐはぐ。』

『仮面の顔、変じゃね?』

『あれが強いの?・・・本当か?』

『なんか踊り始めたぞ?』

『え?マジだ。しかもそんなに洗練された踊りじゃない。』



口々に言い始めた仲間にシナウスは納得してない様子で不満げな顔を浮かべる。

『何をおっしゃるんです!あの神々しい顔つき!優雅に踊るたびに漂う魔力の上品な質!そして美しい杖に独特の迫力も相まって素晴らしいじゃないですかっ!』

『・・・そういやぁ、シナウスお前センス悪いんだったな。本人は頑なに違うと言ってたけど。』



『グヴォォォォォォ!!』

『『!!』』


と、ドラゴンの雄叫びが聞こえ誰もが緊張した面持ちになる。

今まで静観していたドラゴンが動き出す、いよいよ今日のイベントが始まったのだ。

既に彼女を標的として定めていたドラゴンは勢いよく口を大きく開けた、その刹那―――。


次に起こったのは目が眩むほどの光と轟く爆音と見えない衝撃だった。

魔法壁があるとはいえ大きな衝撃に誰もがその場に蹲った。


収まって前を見れば拠点の横を先ほどまでなかった何かが通り過ぎ去った痕があった。


口から高エネルギーを放ったそれはその場にあったすべてのものを溶かし、その熔け切った溶岩がまるで紅い絨毯の様な1本道を作り出していた。






『・・・・うっへー、あぶなー。』

頭上で声がする。

それと黒煙で姿が見えずにいたが、徐々に見知ったシルエットが浮かび上がり誰もがほっと胸を撫でおろした。


危険だったはずなのにまだ姉様は踊っていた。

その光景に数人が思わず呆れた声を出したが、誰も咎めなかった。


『何何?死んだ?』

『死んでないわっ!ちょっと避けるのにひやっとしただけだし!』


思わず鋭い声で言い返すのが聞こえたが、姉様は別段焦っている様子はなかった。

『防具で問題ないけど回避がギリギリのところだったからちょっとビビったの!』

『あぁ、なんか変な踊りしてるしね。』


やはり変な踊りなんだと若干1名を除いた全員が呟く。


『でもこの【身かわしの舞妓】という特殊技のおかげで躱せてるから、このまま続けるけどね。』

『なるほどね、でもなんか心なしかドラゴンなんかイラっとしてそうじゃない?』


その声に皆はドラゴンを見て後悔する。

どうやら先ほどの攻撃を躱されたことにも、あの見る人によっては小馬鹿にして踊っている様に見えなくもない姿に怒りを買ってしまったらしい。先程よりも眼光鋭く姉様の姿をそれは捉えていた。


いいえ!今まさに敵は怒りを露わにしているんですっ!!


何気なしに言った頭上の声をこの場にいる全員が否定したのだった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

裏設定:「因みに装備品ガチャどんくらいまわしたの?」

「・・・日本円にして9万円です。」

「wwww」

今回登場したバロン一式。バロンといわれると怪盗とか貴族とか想像されたと思いますが、今回のバロンはバリ島に言い伝えられている獅子の聖獣です。踊り好きであらゆる厄災を防ぐ、悪霊ばらい、善の象徴だそうです。

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