私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(第一村人達候補はどう考えても訳ありです⑭)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/7(水)投稿予定です。
「言っとくけどな、ここ、まぁまぁ危ない物とか置いているし結構集中力いるんだよ。」
「えぇ、ですからこうして差し入れに来たんですの。」
ティリエスがそう言うと、エルアルの作業机の上にお茶を置かれる。
見ればレイがにっこりと笑みを浮かべながら自分を見ていることに気がつき、エルアルは居心地悪そうに拡大鏡がついているメガネを外した。
「・・・呑気に茶ぁ飲んでいる場合じゃないんだけどな。」
「でも、休憩も大事ですし。あ!じゃぁしながら食べます?私が食べさせてあげますよ?」
「それは謹んで遠慮する。」
頭上からこちらを見ている人物の圧を感じ取ったエルアルは即座にティリエスの申し出を断ると、今度こそ観念したようにはぁっとため息を吐き、ティリエスから菓子を受け取り手掴みで食べ始める。
「でも、本当に忙しそうですね。」
「だからそうだって言ってんだろ?公爵様に急ぐように言われたってのもあるけど、一番は人手が足りない。」
シュークリームのクリームを流し込むようにズッとお茶を啜り飲むとエルアルは愚痴をこぼす。
「でも、義手は結構早い段階でできてますよね?」
ティリエスはそう言って作業台の先にあるもう一つの机の上の物を見やる。
急いで作ったにしては精巧に作られた義手が人数分並べてあるのを見て首を傾げる。
「調整に時間はいるけどな。俺が時間くってるのはこっちだよ。」
そう言ってエルアルが出して来たものにティリエスは目を向ける。
彼の手のひらの上にはボタンくらいの大きさの白い魔石があった。
「この魔石には光属性の魔力が込められてんだよ。この魔石の力を借りて認識阻害魔法を付与する、それを人数分だとどうしても時間がかかるんだよ。」
「それがお父様から頼まれているものですか?」
「あぁ、他にも頼まれてんだけど、これが一番急務だな。できればあと5日は時間が欲しいけど、あと3日で作り終えねぇとやばいかもな。」
「・・・あ、もしかして。ここに来る職人のせいですか?」
ティリエスの言葉にエルアルは頷く。
「どこであいつらの存在が漏れるかわかんねぇからな。あの集団の存在をぼやかさねぇと。もし同じ出身国の人間が紛れてたらいずれここにいるのがバレるだろうし、もしかしたら闇ギルドで賞金がかかってるかも知れねぇ、そしたら危ねぇだろ?あいつらも俺たちも。それに隠そうにも木を隠すには森の中っていうほど、正直この領地人いねぇし。」
「うっ、急に心にダメージが!」
「すまんな、心にダメージを与えて。」
全く詫びれてもない謝罪を口にしたエルアルは茶を飲み干すとまた作業に戻る。
そんな後ろ姿を見ていたティリエスはそこまで言われたら邪魔するわけにもいかないと席を立ち、その場を去ろうとする。
「なぁ?」
「何ですか?」
「・・・俺、傷口しかみてねぇからそいつら実際に話はしてねぇ。数日経ったけどお前から見てどう見えたんだ?やっぱり気持ちは変わらないのか?」
不意に声をかけられた質問にティリエスは考え、そして口を開く。
「私にも分かりません。でも、衰弱している子供と女性と一緒に逃げてきた人達です。だから、私は一番最初にお伝えした通り、あの中に悪い人はいないとそう思っています。」
「・・・・・・そうか。」
それだけ答えるとエルアルは何も言わず手を動かし始めた。
背中しか見えないが彼が集中したのを理解し、そっと部屋を後にする。
「何か、思うことがあったんでしょうかねぇ?」
「・・・かも、知れませんわね。」
レイの言葉を返しながらティリエスは歩き出す。
さて・・・どうしましょうかねぇ・・・。
「すべて、杞憂に終わればいいんですけど・・・。」
そんな事を口しながらティリエスは自分はどうすべきか考え始めた。
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