私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(第一村人達候補はどう考えても訳ありです⑪)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/30(水)投稿予定です。
「どうしたんです?もしかして知らない人でした?」
「いいえ、名前が出たので一度私も会った事がある方、みたいですわ。」
ただ・・・ソラネって誰?
鑑定の眼により写し出されたその名にティリエスは記憶にない。
それでも名前が出たので、うーんと頭の中で思い出そうと頑張ってみてみるが・・・やはり思い出せない。
「・・・やっぱり、思い出せませんわねぇ。一体誰でしょうか?」
ポツリとそう漏らしていると、リリスが自分を呼ぶ声が聞こえそちらへと足を運ぶ。
「ティリエス、今は顔が見えないけどあの人なの。」
リリスが小声で言って指を指したのは、ティリエス自身が目星をつけて調べていた人物とやはり同じだった。
「あの人がそうなんですね。」
「えぇ、名前がソエリスって言う女性なんだけどね。」
ふーん、偽名。
スッとティリエスは目を細めながら彼女を見つめ警戒する。
領地の夫人でもあり、公爵家でもある貴族の人間に偽名を伝えた時点で刑罰が待っているというに。
いや、もしかして知ってて偽名を伝えたのか?
だとしたら自分の存在が露見するのを恐れたということだ。
しかも保護した領地の貴族、私たちにだ。
そこまで考えてティリエスは疑問が浮かぶ。
何故なら本名を知っても思い出せない人間、接点などないに等しいのに何でそんなにも警戒しているのか?
「ソエリスさーん、お加減どうですか?辛くないですか?」
リリスが傍まで行きソラリスに声をかけているのでティリエスも傍へ寄る。
リリスの声が聞こえたのかビクリと布団越しに肩が跳ね上がるのが少し遠くにいるティリエスでも見えていた。
暫くしていると布団越しにコクンと首が縦に振ったのを確認する。
同時に微かに身動ぎをし布団を強く握りしめた事にティリエスは気づく。
「そう・・・大丈夫かどうか確認したかったけど、難しいならそのままでいいわ。あと、今日は私の娘もいるの。」
リリスがそう言うとまた布団越しに動いたのがわかった。
あの様子だと、やっぱり私の事も知っているということみたいだ。
「娘もね、色々手伝ってくれるの。しっかりした娘なのよ。」
それでも布団から顔を出す気配がない彼女を見て、リリスは諦めたように力なく溜息をする。と、ティリエスの方へ顔を向け力なく微笑んだ。
「実はソエリスさんには赤ちゃんがいるの。他の人の今の健康状態からみると、少し心配なの。」
どうにかして診察したい母の気持ちを理解したティリエスは布団の中にいる女性と交互に見やる。
よし、診察させよう。
勿論、気持ちは母優先。その一択である。
でも、なんで隠したがるんだろ?・・・ん?待てよ?
ふと、レイの方を見やる。と、ある事を思い出しティリエスはある可能性が浮かび上がる。
成る程、だからお母様と私に顔を見せたくないのか。
とうの昔に忘れていたことを思い出したティリエスはこっそりと近づく。そして母には聞こえないように耳元に囁くように近づく。
「お久しぶりですね、ソラネさん。」
そう囁くや否や彼女は驚いて飛び跳ねる。はらりと布団が落ちリリスからでもはっきりと顔が見えた途端、リリスも驚いた顔を浮かべた。
「貴女、なんでここに?!」
そう、以前私の侍女にと祖父母から任命されたにもかかわらず不敬を働き解雇された女がそこに居た。
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