私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(第一村人達候補はどう考えても訳ありです⑦)
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「だが、今は彼らが何者か突き止める前にまずは彼らを回復させるのが先決だ。」
「えぇ、そうね。まずは彼らには休息と栄養を取らせないと。」
「そういえばイーチャ司祭は回復魔法が使えますよね?それで教会の方へ移したんですか?」
彼らの魔法属性の事を思えば、それが可能だから彼に協力を要請したのかと思い、ティリエスはそう言ったが、リリスはすぐに首を横に振る。
「いいえ、回復魔法は最終手段よ。それに回復魔法は術者にも大きな負担になるし、術者の魔力で賄えなければ患者の、その人自身の生命力をも媒体する事があるから彼らには使えないわ。」
「地道に治すしかないんですね。」
「そうね、それをイーチャ司祭はご存知だから多少医術の心得もあるの。」
だからお願いしたのよとリリスは力なく笑いながらティリエスの頭を撫でる。
「すぐに治れたら良いのはいいわ・・・、でも時にはゆっくり治すことも大切なの。今の彼らにとっては。」
どこか含みのある言い方に、彼らがここに来るまでどんな風に生きて来たのか想像ができたティリエスだったが、追求はしなかった。
それ以前に母が話すことはないだろうし、父の言う通り今は過去を詮索することより彼らを治すことが先だ。
でも今は良くても彼らが帝国だと断定すればお父様の表情から察するに、私達には荷が重くなるというか何かしら領民に迷惑がかかるかも知れないというのがなぁ・・・どうにか良い方向に事が進まないかな?お父様に任せるしかないんだけど、お父様に負担をかけたいわけじゃないし・・・どうしたもんかなぁ。
やっぱり法律関係の本を読み漁るべきかと密かに考えていると正面からやってきたレイが微笑みながらやって来た。
「お嬢様、お客人です。」
「誰だ?」
ティリエスがいう前にアドルフが返事をする。
そりゃまだ子供だし、領地の近くに友達はいませんから誰が来たのか知りたくて聞いたんでしょうけど。お父様少々プライバシーの侵害ですわよ?
怒りはしてないが心の中でそんな事を呟いていたティリエスだったが、客人だと言われて思い当たる人物の顔が浮かぶ。
「もしかしてエルアル卿ですか?」
聞き返すとレイは肯定の返事をする。
なるほど、頼み事の準備がもう出来たのか仕事の早い男だと感心していると、やって来た人物の名を聞いてアドルフが不思議そうな顔をした。
「何故彼がここに?」
「えっとですね「お嬢様が彼にある事を依頼したのでそれでここへ戻って来ました。」・・・というわけですわ。」
代わりに答えたレイを軽く睨みつつ父にそう告げると、何を思ったのかふむ・・・と何かを考え始める。
一体どうしたのかと思ったがにゅっと手が出て来たので見れば、レイが両手を差し出す格好でニコニコと笑っていた。
「旦那様、何かお考えであればお嬢様を連れていきますよ?」
どうやら私を抱き上げて連れていきたいらしい。
「成る程、彼か。」
いや、歩けるけど?と思っていると、アドルフが何か思いついたようで独り言が漏れたと思ったらくるりと母リリスの方へ向ける。
「リリス、すまないが一人で休んでいてくれ。」
「ええ、私は大丈夫。息子達を見てくるわね。」
アドルフの急な物言いにリリスは怒ることなく頷く姿を見たアドルフはそのままスタスタと歩き出す。
「ティリエス、私も一緒に行こう。」
「え?」
「彼に私も頼み事が出来たんだ。」
よく分からないティリエスを抱き上げたままアドルフは歩き出し、数秒そのまま固まっていたレイもまた仕方ないなぁというふうに彼等について行ったのだった。
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