私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(何故彼らがここにいるのか順を追って説明しよう!㉙)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は3/28(金)投稿予定です。
洞窟の奥からやってくる気配がただ者ではないと感じ取ったのか、レイは後ろからティリエスの口を手で隠し、他のメンバー達誰もが口を閉じる。
ティリエスは急に己の口を閉ざされたが別段慌てることはなかった。ただ自分が何かすると思われたのが少しだけイラッとしたので後ろにいるレイをジロリと睨んだ。
彼はそんな彼女にただにっこりと笑うだけで、ティリエスは無駄だと感じたのか諦めて前を見た。
「どうしたんだ一体。」
出てきたのは大柄な男だった。
「カンジさん、実はーーー。」
相手が話しをしている様を観察しながらティリエスはカンジと言われている男を見やる。
皆と同じ薄汚れた服を着ているけど、体格といい、あの人軍事関係の人みたいだ。
痩せてはいるけど他の人よりは鍛えられているーーーあ。
ふと彼の両手を見ると手首から上はなく包帯に巻かれている。
手首の方を見るにおそらく手を切られたのだろうと理解する。
もしかして、罪人?
罪人の刑罰に中に手首を切られる刑が存在している事を知っているティリエスは、彼は何かしらの理由で刑罰を受けたのだと知る。
「女の子の声が?」
「はい、2人とも聞いたので気のせいではないと・・・思うんですか。」
「そうか・・・村の子かもしれないが・・・早く目的地へ行かねばならないかもな。」
カンジと言われる男は違う場所を見ているのでティリエスもつられて彼が見ている先を見る。
その場所はシナウスの故郷だった場所禁足地とされる近くの山の入り口だった。
「いよいよ・・・なんですね。」
呟いた仲間の男が悲壮感を滲ませる。
「すまないな・・・俺や部下達がお前たちを殺せないせいで。我々のこの手では小さなナイフでさえ握れないのだ。」
聞こえてきた言葉にティリエスはギョッとする。
ティリエス達に見られているとは思っていない彼らは話しを続ける。
「いいえ・・・貴方は少なくともあそこから助けていただきました。皆恩人だと思っています・・・でも、今私達は生きることがもう辛いんです。だから、貴方のせいじゃない。私は・・・妻と子供と一緒にあの世に苦しまずに行けるのならどこへでも行きます。」
言った男の顔を見るとどこか安心したような顔で視線をある場所に向ける。
子供を力なく抱きしめている衰弱した女性とその子供が横たわっていた。
「きっと不浄の地なら苦しみもなく死んでいける・・・皆そればかりを考えてここまで来たんですから。」
「なら、あともう少しだけ皆で頑張ろう・・・きっと来世は我々が穏やかに暮らせる世だと信じよう。」
・・・・・・・・・・・・は?何言ってんの?
静かに聞いていたティリエスは頭の中の何かがぶちんっと切れる音がした。
「お嬢はん、めっさ怖い顔してるで?」
ホルアクティがこそっと囁いた言葉でティリエスの目がギロリと光った。
あそこで話していたの・・・何?それがさも美しい選択みたいな顔して穏やかに笑っているのが自死の話し?
しかも、何?不浄の地?うちの領地は汚れていると思ってんのかあの男ども!
ここ一生懸命に生きている人がいるのに、ここに死にに来ただと・・・よく言ったなぁ・・・よく言ったよなぁ!?
この地を大切にしてる父と命を助ける仕事をしている母を尊敬している私の前でよくもそんな事言いやがったな!!
思えば思うほど沸々した生への冒涜ともいえる彼らの言葉で怒りが湧き上がり最高潮へ達した瞬間、ティリエスはくるりと振り返った。
後ろに控えている従者達、そしてホルアクティを見た後、レイはそっとティリエスの口元に置いていた手を離した。
それと同時にティリエスは魔法を解除した。
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