私が3年間領地から出られないつまり出禁状態だったあれやこれやそれ。(何故彼らがここにいるのか順を追って説明しよう!⑰)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は2/28(金)投稿予定です。
「なんと愚かな事を・・・。」
ポツリと漏らしたイーチャ司祭の言葉にティリエスは我に返ると、彼は荒れ果てた教会の入り口に土汚れなど気にせずその場に座り込む。
「女神を崇め奉り、人と共存する教会の者が噂に惑わされ、勇敢に戦った者らを蔑ろにするとは・・・。」
「同感です。」
後ろについていたブジョラもまた悲壮な眼差しのままイーチャと同じく教会に目を向けていた。
「私に言える資格が無いのはわかっています、でもそうであっても過去の教会の人間がこのような差別するような仕打ちを・・・、ここの領地の人達はどれだけ傷つき耐えた事でしょうか・・・ティリエス様。」
「なんでしょうか?」
「私も罪がある者です、それはこの領地の方々を困らせる事になるかもしれない・・・けれど、許されるのであれば私はここで司祭として女神の教えと共にこの地の人々に寄り添っていきたい。」
「それって「いいじゃ無いですかティリエス様。」あ、マルサさん、それに皆さんもどうして?」
後ろから声がかかり3人が振り返ると、いつの間にかここいらに住む村人達が自分たちを見つめており、先頭にいるぽっちゃりとした体型の中年の女性である赤髪のマルサが声をかけてきた。
彼女は昔から村の中で頼りにされており姉御肌で現在は領地の中心部であるココロ村の村長を務めている、屋敷の近くともあってティリエスとも顔見知りであった。
「いやね、もう少ししたら声かけようとしたんだよ、お嬢様が司祭様達を連れてきたって聞いたもんだから。まぁ教会の者だしどんな人かなぁって皆気になってね、見にきてたんだよ。そしたら、なんだかえらい真剣に話しをしてもんだからさぁなかなか声かけられなくてね。」
「もしかして話しを聞いていたんですか?」
それなら、ブジョラの言っていた事も聞いていたのではとティリエスは内心焦る。
教会の人間をただでさえ嫌っている節があるのに、彼の口から罪を犯したなんていう言葉を言っていた手前、更に悪い印象を村人達に持ってほしくなかったのだ。
彼女の焦りなど分かっていないのかマルサはジロジロとブジョラを見つめていた。
2人にこの村の人達が聖職者嫌いなことを説明した後でマルサさん達に挨拶行こうと思ってたのに、まさかのここでの鉢合わせ。しまったな、計画が狂ったな・・・でもここで何か言わないと。
「あの、マルサさん「・・・あんた、なんか疲れていないかい?」・・・へ?」
値踏みするような視線をやめたマルサが次に口にしたのはブジョラへの体調の気遣いだった。
これには何を言われるのかと身構えていたブジョラも予想していない事だったのでポカンと口を開いたまま驚いていた。
「まぁ、そこのおじいちゃんもそんな冷たい地面に座っていないで。」
「お、おじいちゃん?・・・わしの事か?」
イーチャも驚いて思わず聞き返しているとマルサがイーチャ司祭を立ち上がらせた。
「今、あったかいお茶を用意するから。あんたも座ってな。今からちょっと掃除していくから。」
そう言ってゾロゾロと箒や雑巾のような布、トンカチや板など工具などを持った村人がゾロゾロと教会の中へと入っていく。
「皆さん一体何を?」
「掃除と修繕しようと思ってさ。」
「え?まさか事前に呼んでいたんですの?」
用意の良さにティリエスはそう思ったが、マルサは首を横に振る。
「いいや?さっきの話しを聞いてさ、皆自主的に取りに行っていたんだよ。私らが教会嫌いなの知ってるだろう?2人は教会の奴だしティリエス様を困らせた事も皆知っているからねぇ。最初は村に関わらないならここにいてもいいって言いに来たんだけど・・・罪罪言ってる割にはどうやら、2人とも悪い人達じゃあないみたいだしねぇ。というか可哀想な境遇に居たんじゃないのかい?」
マルサさん、無茶苦茶鋭いな。
ズカズカ物言う彼女にティリエスは気にすることなくコクっと首を縦に振る。
「そうです、不憫な人達なんです。ですから、今までの事は水に流して新しくスタートして欲しいと思ってますわ。そう思ってここに連れて来たんです。」
まっすぐマルサを見てそう言うとマルサはカラカラと笑う。
「私達もこの人達を見て納得したし、何より領主様のご息女様がそう言ってるんだ、手を貸すさ。ティリエス様の人を見る目はピカイチなんだかからね。」
「そうですか、ではマルサさん、皆さん彼等を宜しくお願いしますわ。」
ティリエスがそう言うと村の人達は皆笑顔で応じたのだった。
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