私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ㉝)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/25(水)投稿予定です。
他の司祭達と似たような服は着ているのにも関わらず、白金の髪にラベンダーの瞳は何処か浮世離れした存在に見える。
マルフェ司祭と同じ顔の作りなのにこうも立場が上だと違うのかと、ティリエスは彼女の顔を見る。
・・・いや、微笑みを絶やさないからそう思えるのかもしれない。
先ほどのエルパの事を思い出し、少しだけ身を固くしたが彼女に悪意はないと悟り淑女の礼をとる。
「まさか法王様までここに来られていたとは思ってもみませんでしたわ。不格好で申し訳ありません。」
深く謝罪の意味を込めて頭を下げようとしたが、カリファがそれを止めた。
「いいえ、北の公爵の娘、ティリエスよ。謝るなら我らの方です。今回、貴女をこのような場に巻き込んでしまった事、深く謝罪します。」
微笑んだまま頭を下げたカリファを見て、治療を受けているイーチャ以外の司祭が彼女の後ろで地に膝をつき頭を下げた。彼女のすぐ後ろに駆け寄ったマルフェ司祭もが、同じようにして地に膝をつき頭を下げていた。
「申し訳ありません、ティリエス嬢。法王様は辛い修行を積んだ際、表情の欠落を余儀なくされた身です。これを深く謝罪という意味で取っていただけたら幸いです。」
「わかりました。どうか顔を、皆様も顔をあげて立ってください、今回の事はたまたま、不幸が起こりたまたま私がここに居たとそれだけですから。」
だから、私は何も聞かない、何も知ろうとしませんので・・・お願いだから何も話さないでくださいよ?
絶対表情の欠落ってエルパさんが君臨していた幼少期なんか絶対虐待とかかなんかだろうし、・・・教会闇深いなぁ怖っ!
カリファの笑顔の裏の経緯を想像しながらそんな事を思っているとカリファが振り返り、教会の瓦礫の山を見た後またカリファは前を向く。
「寛大な心をありがとう、ティリエス。このような由緒ある教会での不幸・・・止められなかった事を悔やみます。多くの神の信仰を信じた者らが死に絶えました。」
そう言われたティリエスは村や彼女達のゾンビ、そして肉体を改良された者達のことを思い出す。
「もう彼女達は助けてあげられないんですね。」
もう何度目か分からない程言ってきた可能性の無い質問を法王である彼女にも問いかける。
「えぇ、死の迎えた彼女達が起こした罪は消えず、もはや地獄への道しかないでしょう。それに我には彼女らを死後救う術を持ち合わせていない。法王の地位に着いたとてそれは叶わない。」
返ってきた言葉に、ティリエスは思わず視線を下にやる。
そこには数時間前まで綺麗に飾られていたステンドグラスの一部が足元に転がっていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
やべぇな・・・。
口では巻き込んでごめんねぇ〜って言ってた割にこの話しの下り、どうも私を面倒な事に巻き込もうとしている話し方じゃない?
ティリエスは下を向きながら内心冷や汗をかく。
この世界に生まれ直して早6年、だがたった6年。
そんなたった数年でティリエスはこっちが要求したわけじゃないのに相手がベビーな話しをし始めた時は高い確率で私を巻き込もうとしている時だと既に理解していた。
「ーーーだから、ティリエス。貴女の存在が我には必要だったの。」
「え?」
話しを途中から聞いていなかったティリエスが思わず顔を上げると、思いの外彼女は自分の近くにいた事に驚く。
え?にじり寄られた・・・怖っ!
そう思っている間に、ティリエスの手をカリファが握りしめる。
「どうか、我らを助けるために聖女になってはくれまいか?」
出た!無理難題なお願い事!
カリファを凝視しながらティリエスは心の中で叫んだ。
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