私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ㉗)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/11(水)投稿予定です。
神官の攻撃によりエルパはその場へうつ伏せに倒れ込む。
一瞬にして燃えた身体は微かに動く気配があったが顔を上げるほどの気力はないようだ。
「皆、大丈夫か!?」
アドルフはエルパに警戒しつつも皆の確認をする。
特に炎の影響はなく怪我もしていない。
「しかし、凄まじい破壊力だ。」
その事にホッとしながらも大きな魔法を放ったホルアクティ、そしてバルバラの魔法の痕を見ていかに大きな魔力が生み出されたのか理解する。
ホルアクティはともかく、今までの彼女から見て魔法に関しての知識はないはずだ。
確かにこれならエルパが彼女を欲するわけだとアドルフは納得しつつ後ろの状態を見て神官達が放った魔法を見てやる。
「後ろの被害ないのも幸運だったな。」
「うん、皆の防御魔法で防ぎ切れるか賭けだったから、魔法が放たれる前に神官達がバランスを崩したおかげで軌道がズレたのが幸いだったよ。」
「バランスを崩した?」
マルフェの言葉にアドルフは少し気になり、彼らが居た場所を見やったがその場は既に焼け焦げており神官も既に焼失していない。
「魔法放つ時既に燃えかけていた彼らだ・・・きっと魔法を放つのも不完全だったんだろうね。」
神官に祈りを捧げているマルフェの言葉に、それもそうかとアドルフは納得し前を見る。
あっぶなかったー!!
父とマルフェ、2人のやりとりを内心ハラハラしながら見ていたティリエスは気が気でなかったがバレずに済んだことにガッツポーツをしそうになる。
彼らの真下に氷を作り出し風圧を使って滑らせたことで難を逃れたけど、バレたらどういう言い訳をしようか考えてなかったからね。
死人に口なしではないが彼らの痕跡が自分の炎で無くなってよかったとティリエスは胸を撫で下ろした。
しかし中級魔法の【氷床】じゃないと凍らなかったってだいぶ温度が高かってことだよね・・・。それもその場に炎があるぐらいな・・・ゾッ!
彼らが焼失した理由がわかりティリエスが1人震えていると、また地響きが聞こえだす。
地響きが・・・大きい?
「いかん!ここが崩れ始めとる!!」
治るどころかだんだん地響きがひどくなっている事に気がつきイーチャ司祭が真っ先に原因を突き止める。
さっきの魔法でここの地下を支えていたものが脆くなり保つことが限界だったと気がつく。
「急いでここを脱出しよう!」
「なら公爵様こっちだ!」
クリメンスはある大きな穴の方へ指差す。
「あっちは水路だ!教会の近くの川近くに出られる!」
「ならそちらへ行こう、レイ!上には退避信号を送れ!」
「準備は既にできてますよっ!」
魔力を乗せ発光したそれを放つとものすごいスピードで上へと上っていく。
この信号を見ればすぐに他の仲間も逃げてくれるはずだ。
「走れるものは急げ!イーチャ司祭は私が担ぐ!レイ!お前はティリエスとバルバラを担ぎ先頭を!他の皆はそれぞれ手を貸してレイに続け!最後に私たちが続く!」
「お父様!!」
「大丈夫だ!私もちゃんと着いて行く!しっかりレイにしがみつきなさい!」
「絶対ですわよ!」
その声を最後にティリエスは頷いたと同時にレイに抱き上げられ大きな水路へと向かった。
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