私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ㉖)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/9(月)投稿予定です。
エルパの合図とともに彼らの身体が大きく震え身体の至る所が赤黒く変色していくのが見えた。
・・・魔力が大きく膨れ上がっている。ギリギリまで魔力を増幅させて放つ気なんだ。
「まだ身体が耐えられないから、一度きりになるけど。逃げれないでしょうし、問題ないわ。」
神官達の様子を観察していたティリエスはレイの隣に立つ。
・・・最悪レイを利用してどうにか防ごうか。
「お別れの時間ね。さぁ、神が行う鉄槌を前にして悔い改めなさい。」
「・・・神ですって?」
「バルバラ?」
エルパの言葉でバルバラの様子がおかしい事に気がついたクリメンスは彼女を見つめる。
「えぇ、貴女方が冒した罪を、今ここで懺悔なさい。それが私が神として行う最後の慈悲ですから。」
「いい加減に、してよ!」
バルバラはエルパを睨みつける。
「あんたみたいな人が神なんて言わないでよ!お母さん言っていた!神様は私達を見守っているって!だから!だから!悲しい事があっても貧しさや辛いことがあっても人と人が支えてきたから村の人達もお母さんも!笑って生きてきたんだ!だから神は施しもしないし奪わない!あんたがやってるのはただの人殺しだ!」
怒りで涙が頬を伝う。静かなバルバラの涙にティリエスは黙ってバルバラを見つめる。
「神の子だった者が・・・悲しいわね。そこまで否定されるなんて。だから、私の望む神の世界を創るわ。その為に貴女は死になさい。」
バルバラの言葉に耳を傾けていたエルパは感情もなく告げる。そんな彼女を前にバルバラは睨みつけたままだった。
「お前がそう言うなら!私は生きる!生きてお前の言う神の世界なんか作らせない!」
「そう言うけど、今から一体何ができると言うのかしら?この状況で何をしようというの?」
嘲笑うように告げエルパの視線は隣にいる神官へと向ける。
「時間なようね。それでは皆さん、さようなら。」
エルパの声を合図に神官は最大まで上げた魔力を口元へ集め始める。ほとんど焼けこげた体のまま集まる火の魔力が見えた。
「高火力の魔法を放つつもりだ!」
「皆さん魔力で防壁を!」
「駄目だ!バルバラ下がれ!!」
防壁の展開をする中バルバラだけがクリメンスの言葉にも耳を傾ける事なくその場から動かずエルパを睨みつけ続けていた。
「・・・やっぱり、最後まで気にいらないわね。」
エルパが手を振りかざした瞬間、神官の魔法が放たれようとする、脆くなった神官の身体が崩れて行くのが見えた。
ティリエスも最大級の防御魔法を発動させようとしたが目の前に誰かが立ち塞がる。
「コケ!」
「ホルアクティ!?」
急に目の前まで来たホルアクティはそのままバルバラの隣に立ち、一気に魔力が膨張するのが分かった。
いや、ホルアクティだけじゃない、バルバラからも大きい魔力?!
2人が呼応するかのように魔力がどんどん大きくなっていくのが分かった瞬間、先に仕掛けたのはバルバラだった。
「あんたなんか!あんたなんかどっかいっけぇ!!!」
「コケコッコーーー!!!」
2人が声を発した刹那、彼女達の口元に大きな魔力の光が現れたと思った瞬間、まるで光線のようにそのまま放たれた。
「何ですって?」
これはエルパも驚いたのか神官の攻撃の合図を送る。同時に神官達も彼女達と同じように光線を放ったが、2人の威力には敵わず彼らの攻撃はかき消されていった。
そんな馬鹿なとエルパはこちらに攻撃が来る事を危惧し避け始める。
攻撃を防いだとしても彼女達は前の方しか防げれていない!
前は駄目でも左右に後ろの攻撃がまだ残っている。
エルパが勝利を確信して目を細めたが、すぐに目を見張る。
待て、なぜ神官達が上を見ている?なぜ上空に魔法が放たれている?なぜ倒れている者もいるのだろう?
彼女達の方を向いていた彼らはいつの間にか全く違う方向を向けていることに気がついたエルパは彼らの足元を見やる。
あれは・・・氷?なぜ彼らの足元に氷が張っているの?
エルパはある人物を見てその疑問が解ける。
ティリエスの人差し指に微かに残された魔力の残滓で何をしたのか理解する。
その場を凍らせて、バランスを崩させたのか・・・あの炎と同等な身体の下に。
「そんなふうに魔法を使えるなんて、想定外だわ。」
エルパの呟きは向きを変えられ、そのまま放たれた神官の炎によってかき消された。
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