私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ㉓)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/2(月)投稿予定です。
「あぁ・・・私の身体が・・・。」
アドルフに剣で切り刻まれた身体でエルパは己の傷だらけの手を見つめる。
・・・再生が追いつかない。
徐々にアドルフが剣で傷つけた箇所の自己再生が遅くなってきている事をエルパは確認する。
「やはり・・・年老いた身体では再生には限界があるようね。勉強になったわ。それにしてもルーザッファ公爵様はもう少し、年配者を労わるように配慮しては?本当、その剣で斬られるの痛いんですよ?」
「あのようなスピードで動けて私の剣技を辛うじて躱している奴が年配者を労われだのよく言う・・・それにその腕も随分様変わりしたな。」
「あぁ、これですか?」
右手がなく腕から細いまるで鞭のような腕になった右腕を掲げてエルパは無表情で笑い声を上げる。
「えぇ、あの子達みたいに変化が可能か少し前に考えていたことがあって前にあの子達みたいに実験して試してみたの。まさか、ここで面白い効果が得られるなんて思わなかったわ。」
嬉しげな声色で言うエルパは相変わらず表情はなく、アドルフは奇異な目で彼女を見つめる。
「でも・・・そうね。そろそろ、どうにかしないと少しまずいわね。はぁ、せっかくここを良い実験場にしていたのに・・・手放さないといけないなんて。」
「残念がることはない、お前はここで死ぬ。」
アドルフの断言に、エルパは口元に左手を当ててその手を口から離す。
その口は弧を描いてにっこり笑っている口元を作っていた。
「確か、余裕のある顔って笑うんですよね。これで合ってます?」
彼女の不可解な行動に、アドルフは身構える。そして、何かを感じ取ったアドルフは口を開いた。
「皆!壁から離れろ!!」
アドルフの声に誰もが壁の方から離れ距離を取る。
ティリエス達の行動とほぼ同時に壁に亀裂が入り壁が壊される。
そこから出てきた者を見て、イーチャとブジョラは息を呑む。
「神官達まで・・・貴様!!」
そこには合成獣のように下半身は蛇のような身体に改造された神官達がそこにいた。
「この子達はあの子達よりちょっと上手くいったの・・・ほら。」
そう言ってエルパは彼らの顔を指差す。彼らの顔は苦痛に歪み口から泡を拭き、呻いていた。
「まだ、辛うじて生きているのよ。すこいわね、魔力が高ければ高いほど他の魔物と定着しやすいみたい。」
実験結果から分かったことを自慢するように伝えるエルパに舌打ちしたアドルフだったが、神官達に囲まれているとわかると行動は速かった。
「皆こっちへ!閣下!貴方もだ!!」
アドルフの声で誰もがアドルフの近くへ、聖堂の中央へと集まり周りを警戒する。
「アドルフ殿、一体、あの者らは何をしようとしているんじゃ?」
「イーチャ司祭・・・私にも分からない。だが、離れてはいけないと直感した。ティリエス。」
「はい!お父様。」
バルバラ達に回復薬を渡していたティリエスはアドルフに呼ばれたことで傍へ寄る。
「神官達は何の魔物と融合させられているか視えるか?」
言われて直ぐに鑑定をする。
「・・・っ、ファイヤーリザードですわ!」
「不味いな。」
アドルフは険しい顔をする。
「奴ら、私達を焼き殺すつもりだ。」
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