私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ㉓)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は11/29(金)投稿予定です。
レイに言われた通り、彼の後ろにくっつき周囲を警戒する。
負傷している司祭達やバルバラ達はともかく、動けるメンバーは皆強い。
閣下なんか心配する必要がないぐらいに剣捌きすげぇし、ブルーとレッドなんかさっきから爆弾使って順調に敵を沈黙させているし。・・・てか、あの細い棒についている丸い宝石・・・見た目からしてもしかしてまち針か?
「「爆発するよー!爆発!あははは!!」」
細い先を相手に刺した後相手が爆発を起こす様に、ティリエスは昔ソシャゲで彼女達を使っていた事を思い出す。
・・・子供みたいに無邪気だよね。今、この光景じゃなかったから私も素直に笑えたのかもしれないけど。
「お嬢様。」
「ごめんごめん、でも、一向に減らないわね。」
壁が開いている穴という穴から次々出てくる様子にティリエスは辟易する。
「そうですね、ここの修道女達過去5年の数がどこかに潜んでいるとしたらちょっとじゃそっとじゃ終わらないですねぇ。」
頭上から降ってきたゾンビにレイが攻撃をしようとしたが、誰かの風魔法が当たり吹っ飛んで壁に激突する。
「本当に、疲れますよ本当。」
「あ、オーガさん!」
「僕もいるよ。」
「マルフェ司祭!ご無事で何よりですわ!」
やってきたオーガ達に手を振ると彼らはこちらへ駆け寄る。
「あの状態でよく無傷でここまで来れましたねぇ。」
「いやいや、離れてから私達結構危なかったですよ?」
オーガが収めた剣を鞘から抜く。確かに大きな怪我はないが別れる前に切り傷が多い事に気がつく。
「オーガさん、回復薬を。マルフェ司祭も!」
「え?!」
「流石ティリエス嬢、気が利きますねぇ。」
快く受け取るオーガに対し、回復薬を見つめて嫌々受け取るマルフェにオーガが不思議そうに首を傾げる。
「どうしたんです?早く飲んでしまったほうがいいですよ?」
「い、いや・・・さっき味が・・・。」
「味?」
マルフェの言い淀んでいる事が理解できないと言った様子でオーガはもらった回復薬を一気に煽ると、それを信じられない顔でマルフェは固まる。
「うーん・・・相変わらず飲みやすいですねぇ。」
「え?!」
「今回はレモネード味にしてみましたの!」
「へぇ、道理で喉越し爽やかなんですねぇ傷口を見る限りそれに効果も上々・・・これ、いつ商品化できます?」
「今それ聞きます?!この非常事態に?!」
オーガとティリエスのやり取りに呆気に取られていたマルフェも恐る恐る回復薬を口にする。
「え?!さっきと違う!」
「それはお嬢様の作ったものですからねぇ。」
「え・・・じゃぁさっきのって。」
「違う方のですわ。でも効果はそちらの方が良かったの。」
「本当に、君たちって意地悪だよね。」
ジトリとマルフェ司祭に見られ、ティリエスは明後日の方を見てやり過ごす。
「そうそう、そろそろ奇襲部隊もこっちにやってきますから、それの報告です。」
「上は片付いたのか。」
「えぇ、主にあそこで剣を振るっている方達が。」
指差す方にはアドルフに閣下がいた。
「凄かったですよぉ、アドルフ卿なんか落ちながら敵を薙ぎ倒して行ってしまったんですから。お陰で私達無事だったんですけどね。」
同時に、断末魔の声が響く。
見れば、エルパが父の剣で致命傷を負っている瞬間だった。
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