私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ⑮)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は11/11(月)投稿予定です。
「この獣の姿がバルバラ?本当ですの?」
「ティリエス嬢、それは、本当じゃ。」
声のした方へ振り向くと痛みのせいで顔を歪ませたイーチャがこちらを見ていた。
「女神の子の子孫は教会の秘密じゃった。それを知っているのはこの教会の存在を知る村人達と教皇の位の教会関係者だけじゃ。夫であった前教皇から聞いていたんじゃろう。」
「そう、私はその存在を知ってたからここへ来たの。教会関係者で薬師として心得ているとそう言えば、村人の警戒を解くのなんて簡単だった。何せ寂れた山奥、彼らにとってこれ以上のない役に立つ人間として見えたんでしょうね。でも、本当に伝承通りね。女神の子には他の子の能力を受け継いだと・・・今は獣だった子孫の能力を使っているのかしら?」
エルパの視線がバルバラに向くと、まるで今にも噛み殺そうとしたい衝動を抑えているように唸り声を上げエルパに威嚇する。
「私がここに来たのは、ほらこの身体ももうガタがきているでしょ?だから神の子の子孫の身体だときっと良い依代になる、そう思ってここへ来たの。幸い、私が使う毒草も魔石もここには十分にあったし、また実験もできる。首都よりも快適だったわ修道女達は従順だったし。でも今でも悔やまれるわ、貴女のお母さんには悪いことをしたと思っているの。だって見つけた時抵抗されてつい殺してしまったの、本当に加減って難しいわ。死んでから改造しても腐敗して形が留められないの、生きていれば彼女達みたいに生まれ変わることができたのに。だから今度は間違えないわ、貴女に死なれたら私が困るもの。」
エルパが淡々と語る言葉にバルバラもその後ろにいるロコスもさらに憎しみの目でエルパを睨みつける。
「思い出した、後ろにいるのは貴女の父親ね。貴方は生きたのね・・・あの子のおかげかしら?まぁあの子のせいで今まで私の記憶も変えられていたしそれしか思い当たらないわね。」
「・・・エルパさんがここへ来た理由は理解しました。それで、これからどうなさるおつもりです?」
あ、コンタクトレンズ外れちゃった・・・まぁいいか。これで涙出なくなるし。
ティリエスはエルパをジッと見据えながら尋ねると、エルパは無表情のまま首を傾げる。
「そうね、どうしようかまだ決めかねているの。だからティリエスさん、貴女に一つ提案があるの。」
「・・・・提案?」
「ここであったことを見逃してくれないかしら?」
「血迷って戯言を吐き始めましたねぇ。」
「レイ。」
後ろで茶化したレイを振り返る事無く叱る。
「見逃せば私にメリットがあるとでも?」
「えぇ、私が教会の聖女として戻れば、貴女は聖女にならなくて済むでしょう?それに、私と手を取り合ってくれるのなら、この子達を遣わして差し上げるわ。彼女達は喜んで貴女の剣となり盾にもなる。どうかしら?」
「お断りしますわ。聖女になるつもりははなからありません・・・ですがそれは彼らと話しあうことです。それに貴女の背後にいるそのような可哀想な人達を使うなんて事、私には必要ありませんから。」
キッパリと迷うことなく、ティリエスは断った。
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