私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ⑨)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/24(土)投稿予定です。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、」
えらいこっちゃ!えらいこっちゃや!!バルバラはんがどっか行ってしもうた!!
揺れも収まり空間の捩れもなくなったが、ぐちゃぐちゃになってしまった部屋の中心でホルアクティは驚愕し、思わず飛ぶをやめてその場にぽてんっと落っこちた。
先に落ちたお尻がジンジン痛むがそんなことなど気にせずホルアクティは内心慌てる。
「どないしょう、どないしょう・・・・お嬢はんにバルバラはんも守るように言われてたのにここを出ていってしもうた。」
追いかけたい。でも、もう一人の保護対象であるクリメンスが居る。
未だクリメンスは意識がなく眠った状態だ。
「でもあの様子尋常やない・・・バルバラはんが心配や・・・でも、ここを離れてもしなんかあったらそれこそ守りが手薄や。今みたいに空間を捻ってこられたらフラスはんだけでは対抗できん。」
ホルアクティはうんうん唸りながらどうするのが最善なのか考えているとフラスもまた2階へ上がってきた。
「これは一体・・・バルバラさんはどこへ?」
「正確な場所はわからへん、けどおそらくバルバラはんは助けに行ったんやと思う。」
ホルアクティはそれだけ伝え、もう一度空間が捩れた場所を見やる。
微弱やけど、空間が安定しとらん・・・。もしかしたらここも危険かもしれん。
自分の主人がここにいれば何か方法があるのではとティリエスの顔を思い浮かべた時だ。
ガタンっと大きな大きな音が聞こえ、ホルアクティはもしやと隣の部屋へと移動する。
フラスもそれに続いた。
「あんさん!起きたんか!・・・!あんさんその姿・・・。」
そこにはベッドから転がり落ちその場で倒れているクリメンスの姿があった。
ホルアクティが目の前の人物の姿をマジマジ見ていると徐にクリメンスが起き上がる。すぐ様キッとクリメンスはこちらを睨みつけたが近くにあった姿鏡を見てクリメンスは驚愕し己の顔を手で触って確認する。
「まさか・・・男性だったなんて。」
フラスが思わずクリメンスの今の姿に驚き呟く。そこには痩せてはいるがしっかりとした骨格をもつ上半身裸の長髪の男が立っていた。来ていた寝巻きが小さすぎたのか服は破け上半身の服は無惨な姿で床へ落ちていた。
「あんさん、本来の姿に戻ったんやな・・・でも、どうして。」
「・・・魔法が、解けたんだ。あの女の呪いまで解けている。」
クリメンスが口を開く。今まで喋れずだったせいの呪いも解け、掠れた声であったがその声はまさしく女の声ではなく青年の低い声だった。
「妹を守るための魔法が・・・妹は!妹はどこだ!」
「妹というのは・・・バルバラさんの事かしら?」
「そうだ、あいつの認識を逸らすために俺が魔法で記憶を捻じ曲げたんだ。あいつに妹の存在を思い出さないように。でもギリギリ保っていた魔法は崩れ無くなってしまった。このままでは妹があいつに奪われてしまう。そうなってしまえばあいつを止めることも妹を助け出すのも俺にはどうすることもできない。頼む、どうか力を貸してくれ!俺をあいつの元へ連れて行ってくれ!」
切羽詰まって頭を下げるクリメンスの姿にホルアクティとフラスは互いに顔を見つめる。そして互いにこくりと頷き合った。
「分かった。あんさんの話し信じるわ、せやからここから出るで歩けるか?」
「し、信じてくれるのか?」
「せや、それにワイらもお嬢はんらと合流せなあかん、一石二鳥や。フラスはん。」
「はい。」
「はよ行こか、この場所もちょっと離れた方がええ。」
そう言ってもう一つの姿に転じたホルアクティを見てフラスは大きく頷いた。
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