私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ⑦)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/21(月)投稿予定です。
最初の違和感はその人、ある女の人が一人村にやって来てからだ。
その女の人は薬師だと言って私達の村を訪れた。
常にニコニコと笑顔を絶やさない優しそうな女の人が村に溶け込むまでそんなに時間はかからなかったが、私と母だけは女の人の何かを感じていたのか、関わろうと思えなかった。
それからしばらく経ってからだ。大きな村ほど活気さはなくても誰もが笑顔だった村人達の様子が変わった。
風邪を引いたことがないと丈夫さを豪語していた隣の家のおばさんも。
力自慢だったお父さんの仕事仲間のおじさん達も。
誰もが、顔色も常に土色でどこかぼんやりとした意識のままで話しかけても上の空だった。
原因が分からないまま村の人々がおかしくなっていくのを見て、私は勿論父と母、そして兄が危機感を覚えた。
『逃げよう。』
家族の誰もが思った時には、周りの村人が自分達を監視している事に気がついた。
四六時中誰かが私たちを見張っている事に気がついた。
囲まれ家に押し込まれたと思ったら、まずお母さんとお父さんが女に刺された。
何度もやめてと叫んで縋ったけど、お母さんは既に事切れているのが見え、背を向けて倒れたお父さんは生きているのか死んでいるのか分からなかった。
それ程周りは両親の血で血塗れの海だった。
震える身体を兄がきつく抱きしめた。
『逃げようとするからよ。』
女はまるでそれが悪い事のように言った女の顔はいつもの優しく微笑みを浮かべていた。
『外から来た聖女に助けを求めるなんて、最初から貴女のご両親はこの人達より警戒心も頭もまわったけど、村人に情をかけていたのが仇となったわね。なりふり構わず逃げれば少しは生きられたのかも・・・まぁ、今となってはどうでもいいわ。もしかしたら貴女は私が思う存在かもしれないし、その可能性としてあなた達は毒草が効かなかったわね、理由を知りたいし他にも・・・良い実験が出来るわ。』
『・・・させるか。』
兄が今まで聞いたことのない怖い声で女を睨む。
『お前の思い通りになんかさせるものか。』
『今この状態で何をーーー!』
途端、急に炎が舞い上がり私は私を抱きしめたまま燃えている兄を見る。青い炎は熱に熱はなく兄も燃えていかない不思議な火だった。
『お兄ちゃん!』
『よく聞いて、僕は今から魔法を使う。僕のこの魔法が続く限り、お前は安全だ。でも、魔法の効果が切れれば全てを思い出す。その時はお前だけでも逃げろ。』
『お兄ちゃん!嫌だ行かないで!』
なんだか兄がこのまま遠くへ行ってしまうような気がして私は兄にしがみついた。そんな私の背に兄は優しく手でさすってくれた。
『大丈夫、僕はずっとお前の傍にいる。ほんの少し忘れるだけだ。』
『そうか、この魔力・・・そうだったのね。』
兄の炎を見て何故か納得している女にも炎が燃え移るのを見た刹那ーーー。
私には理解できない言葉を兄が言い放つと私を含めた人達を巻き込みように一面炎が身を包み、炎がモノを伝い走り、あっという間に炎は村全体へ、そして教会まで広がりその青い炎にここら一帯にいる全てのものは包まれていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。誤字脱字をこっそり教えてくださった名もなき妖精様ありがとうございます。