私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ②)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/9(水)投稿予定です。
「はい、お口直しです。」
えらいやばい顔になっているマルフェにオーガ同様、魔力入りの飴をタイミングを見て口の中に無理やり突っ込む。
どえらい不味さのせいでゲームのデバフみたいに支障きたしても困るし。
オーガさん同様、彼にもまだまだ働いてもらわないとと、直ぐに無くなっていく飴をホイホイ放り込み、ティリエスは顔色が良くなってきているマルフェを満足そうに見つめた。
「大分良くなってきましたか?」
「うん、魔力も殆ど残ってなかったので助かったけど・・・やっぱり、ルーザッファ家の人達って僕達の扱い雑だよね。」
「優しくしてほしいならそれなりに頑張ってくださいよ。」
「手厳しいなぁ。」
「それより、マルフェ司祭は彼女達が何か知っているんでしょう?」
というか、あんたら私達を巻き込んだんでしょ?とじとりと目を向ける。
マルフェがゾンビを驚かない事に、ここ教会を何かしら調べていた事についてもだ。元々強硬派の信者達の不穏な動きに亡くなった聖女の不可解な死、そして強硬派に加担していた聖女の行方不明の事。これらの事を調べるつもりではなく既に何かを把握しそれを内密に探っていたとしたら?
「私を使ってここに入り込む算段を考え、まんまと実行に移せたということで合ってます?」
「うーん、そこまで分かってるなら誤魔化しても駄目だよね?」
当たりか・・・当たってほしく無かったけどな本当、・・・当たって欲しくなかったな。だって、この人の事嫌いになるかもしれないから。
溜息を吐きながらレイ達と修道女達を見る。
ただ敵を排除する為だけに作り変えられ、生み出された哀れな彼女達を見てティリエスは重くなった口を開く。
「彼女達や村の人達がああなる前にどうにか出来なかったのですか?」
出た声はひどく冷ややかなものだった。
その声にマルフェは思わずティリエスの顔をみたが横顔しか見えない彼女が今どんな顔をしているのかマルフェには分からなかった。
「・・・そうだね。そこは僕も何か出来なかったのかって思う。でも、彼女達に出来る事は彼女達の人生を奪ってしまった罪を背負う事だけだ。」
「・・・治せる見込みも無いんですね。」
分かっていても思わず聞くティリエスにマルフェは己が罪にまみれた人間だという事を再確認させられると同時に、彼女は何と綺麗なんだろうと羨望の気持ちで彼女を見つめる。
「ティリエス嬢、僕達は「いいよ、別に。何も言わなくても。」」
何かを言おうとしたマルフェの言葉を遮りティリエスは戦っているレイに声をかける。
「何でしょうかぁお嬢様ー?今手が離せないんですけどー?「全て沈黙させなさい。」」
彼女の言葉にレイは思わず振り返り、彼女の前に行く。
「・・・宜しいので?」
ティリエスの顔を見てレイは問いかけると、彼女は迷いのない目で頷いた。
それを見て、レイは踵を返す。
「では、最大の温情で。」
そう言ってレイは頭上に風の魔力を凝縮させる。
徐々にでかくなりその魔力の濃さにそばにいるマルフェは思わず咳き込んだ。
オーガもまた話しを聞いていたのか食い止めていた手を下げ、後ろへと下がっていた。
あとは何も感じない彼女達だけがレイの魔力にまるで群がる様に向かってくる。
「あなた方は幸運ですねぇ。」
魔力を彼女達全ての手にロックさせながらレイは歌う様に呟く。
「本当なら背負いたくないあなた達の命を背負う覚悟をしてくださいました。ですから、安らかな死が迎えられる。・・・お前も、そこでこの方に感謝を捧げろ。」
最後にマルフェに対し、冷たく吐き捨てる様に言う。
「お前らが不甲斐ない存在だった故に、女になりきれてもいない少女に罪を負わせるんだからな。」
「!」
言われたマルフェが目を見開いたと同時にレイは手をかざし、そして手を振り下ろした。
「【神の祝福】」
小さく呟く様に言いフッと何かが駆け巡り数秒沈黙した後、彼女達の足が止まる。
見れば掌には貫通した穴と砕かれた魔石が散らばり、その場で崩れ倒れていった。
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