私が聖女候補なんて世も末である。(見えない神より親子の絆の方が強い所を、とくとご覧あれ①)
いつも読んでいただきありがとうございます。すみませんが予定が重なり次回は10/7(月)投稿予定です。ご了承ください。
「ひえっ、群がってる!」
謝まった直後、今の彼の状況を理解したティリエスは、彼を殺そうとする群がる修道女達の姿に小さく悲鳴を上げる。
「とりあえず蹴散らしましょうか。」
レイの言葉の合図にオーガも一緒に駆け出す。
ティリエスは密かに認識魔法をかけ、敵の目を欺けながら自分の足でマルフェの傍へと向かっていった。
「気をつけて!そいつらは死なない!」
「存じてますよっと。」
マルフェの言葉にオーガは返事をしながら回し蹴りをして、敵にダメージを与える。
元々女性だからそこまで筋力はないし、そりゃああんなに吹っ飛ぶよね・・・でも、そんなにダメージになっていないな。
倒れ込んでもむくりと何事もなく起き上がり自分達に向かってくる様を見ていると、レイが指に魔力を込める。
「オーガ、脚の関節を狙え。」
「の、方がいいみたいですねぇ。」
レイの助言に頷き、オーガもオーガで人差し指に魔力をこめて脚を狙う。
「しかし、私は魔力自体そこそこなんですけどねぇ。」
「それならこれをどうぞ!「随分と用意周到ではないですかぁ?」」
レイから受け取った袋にあった、魔力が込められた飴が入った瓶をオーガに手渡すと、苦々しい顔になりながらも受け取る。
「ここぞという時のために用意してました!因みにちゃんとオーガさんの属性の火属性の魔力が入った飴ですから心配ないですよ!」
「うわぁ、嬉しくないですねぇ。魔力切れなく動けって事じゃないですか。」
その通りです、貴方だけ楽にはさせません。というか今は死に物狂いで戦ってください。
オーガの不満に聞く耳持たず、ティリエスはマルフェの元へ駆け寄った。
「マルフェさん大丈夫ですか?怪我は?」
「僕はかすり傷で大丈夫です。でも、イーチャ司祭が敵に囚われてしまいました。」
袋の中からフラス特製の傷薬などを用意しながら、彼の言葉に耳を傾ける。
「イーチャ司祭は今どこに?」
「あそこ、祭壇の下に地下の階段があります。その先に連れて行かれました。僕も行こうとしたけどこの有様です。外に待機している仲間に連絡取ろうとしたんですけど逃げ惑うのが精一杯で・・・本当、危なかったんですよ!」
「ごめんなさい、マルフェ司祭。でも、ギリギリ危ない所を助けられて良かったですわ。」
責めるような言い方をするマルフェに対し、ティリエスはすまなそうにする。
無理もない、こんな大人数からずっと逃げ仰るなんて無理に等しい事だろう。
そんな極限の中でのイーチャ司祭が捕まったとなれば、悪態をつくのも仕方ない。
「もう本当、僕頑張ったんですよ?」
「えぇ、そうですね。」
「今度美味しいお菓子ご馳走してください。」
「勿論、良いですよ。」
「一度、領地に遊びに行っても良いですか?」
「えぇ、勿論。ここを無事で出られましたら。」
「あと聖女になってください。」
「すいません、それは無理です。」
最後の要望に即座にティリエスがそう答えると、マルフェは駄々をこねる子供の様に頬を膨らませる。
「そんな顔をしてないでこれ飲み薬飲んでください、即効性です。」
ただし、得もいわれぬまずさだけどな。
どさくさに紛れて聖女に就かせようとしたマルフェの今の顔を見てティリエスはざまぁみろと心の中で呟いた。
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