私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊿と3)
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彼の放った炎を合図に、私達は聖女と聖女を崇める狂信者達と抗争した。
大多数は我々に賛同してくれた信者だったが、それでも聖女側の信者も少なからずいた。
後に捕まえた彼らの事を調べて分かったことだが、聖女の手によって加工された魔石。
彼らに埋め込ませ思考を鈍らせただの操り人形と化す代物だった。
故に彼らは普通であれば苦痛で立ち上がれない怪我を負わせても、立ち上がりなおも攻撃を続けた。
死んだ後になっても彼らは攻撃を続け、聖女に攻撃の手が及ばないように妨害を続けそして果てた。
魔石を壊せば、正気に戻る者もいたが実験の影響か埋め込まれた信者はまるで力を使い果たしたように身体が急速に衰えていき最後には死に絶えた。
彼らに生きる術はなく、同郷であった者、一時は志しを同じくした同胞を、私達は目に焼き付けるように彼らの最後を見届けながら力を奮った。
“やはりまだ改良の余地は必要ね。”
“っ!姉さんっ!!”
また1人相手の命を奪うなか、こちらを見下ろし呟く聖女にイーチャは見上げ怒りのまま大声で叫ぶ。
信者を操り、まるで肉の壁を作る己の守りを固めている聖女の表情は無く、だがどこか楽しげに話す。
“貴女だけはここで死んでもらう!”
“勇ましいわね、イーチャ。だけど私はまだ神の為に突き進めなければいけないわ。”
彼女はそう言うと光魔法で鋭利な光る氷柱を数が数えきれないほどの量を出現させる。
“いつの間にこんな!”
杖といった魔法の媒体を使わず、己の純粋な魔力で目の前の攻撃魔法を作り出した聖女に驚愕する。
“水晶の矛”
“父さん!!”
彼女が手をかざしクイっと手を振り下ろすと一斉にそれが降り注ぐ。
咄嗟にそれぞれ防御魔法を発動させるが威力が強く、多くの負傷者が出る。
咄嗟にした防御魔法である程度は防げたがイーチャの肩も負傷する。
そばにいた息子やマルフェ達も駆け寄る。
“大丈夫だ、まだ戦える。”
“あら・・・あの魔法を耐えれるのね。”
そう言って聖女はマルフェ達を見、そして最後に長男であった息子を見やる。
“特に貴方はなかなかね。最初に受けた炎といい今の防御魔法といい・・・お父様に似たのかしら?”
“黙れ!私が父と呼ぶ人はこの人だけだ!!”
“そう、確かに。でなければ父である法王を殺さないわよね。”
そう言った聖女はチラリと既に死んだ誰かもわからない焼かれたソレに目をやるがそれだけった。
“でも・・・貴方は使えるわね。”
その時の呟きを他の人間には何故か聞こえていなかったが、私にだけ耳元に聞こえた。
彼女の呟いた言葉が聞こえたイーチャは何か良くないことが起こるそんな前触れのゾッとするものが背筋を走った。
聖女は自分達に目もくれず踵を返し更に奥の方へと向かう。
“待て!!”
“ならん!行ってはならん!!”
肩の痛みなど気にせず息子が行くのを止めようとイーチャは声を張り上げたが制止を無視し、息子は奥へと進み逃げていく聖女の後を追っていった。
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