私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊿と2)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/17(火)投稿予定です。
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“あぁ、悲しいわイーチャ。私の弟。何故私の邪魔をしようとするの?”
己の罪から逃げ、そして向き合い決意した数年ーーー。
私達は彼女を倒す準備を秘密裏に行った。
私達のように今の教会のあり方に疑念を持ち、そして聖女として君臨している彼女に不信感を募らせている者達を仲間につけた。後にこれが3つの派閥の内2つ、穏健派中立派の基盤となった。
私達の働きによって教会のパワーバランスが崩れた事をきっかけに、彼女達を引きずり下ろす為に事を起こすところまで至った。
だが、彼女もまた同じ様に私達の想像以上の残虐な行為を行っていた。
“これは・・・”
“なんと酷いことを!”
仲間数人が悲鳴をあげ驚愕する。
前から教会で保護していた孤児達を聖女の名で修道士として引き抜かれているのは元々知っていた。
でも、何をしているかまでは分かっていなかった。
“・・・魔女だ、お前は聖女なんかじゃない!ただの化け物だ!”
非難の声を上げ仲間の1人が叫ぶ。
人の死骸
人だったモノの残骸
檻に入れられ衰弱し切った子供達
一つの血に汚れた寝台と共にその中心に彼女は居た。
他人の血を浴び汚れた顔を向けていても、彼女は清浄を帯びたような微笑みを絶やさずこちらを見つめる様に誰もが悪寒が走りそして怒りが込み上げた。
“魔女などと・・・酷いわ。ただ私は神の偉業を成し遂げようとしていただけです。”
“神の”
剣を向け一呼吸して幼さを残すマルフェが彼女を追求する。
“神の偉業というのは何です?まさか死体を弄ぶことではないですよね?”
“えぇ、勿論よ!”
即座に聖女は答える。
“私はね、死んだ者を生き返らせる神の偉業を研究しているの。ほらみて、まだ身体を動かすにはぎこちないけど腐敗は止まったわ。これを用いれば死者は生き返る、生きた者がこれを取り込めば不老不死、つまり神と同等になる肉体を得られるのよ。”
地を這うようなくぐもった声を上げるその死体だったモノに誰もが背け吐き気を覚えた。
“これさえあれば誰も死なない、誰もが幸せに暮らせるわ。でもそれには生贄が必要なの、これはとても必要なことで栄誉あることなの。”
“巫山戯ないでいただきたい。”
彼女の子長男であった男は怒りで震える手で魔法の媒体である杖を持ち彼女にその先を向ける。
“お前に、誰かの命を弄ぶ権利もましてや神の何たるかを語る権利もない!そして、等しく神に見守られる存在である人間ではない!”
“えぇ、そうね。だって私は聖女ですもの。夫が毎日そう言ってましたからね、ほら今だって。”
そう言って彼女は寝台に横たわる蠢いている死体を抱き上げる。
そこには法王であったーーー、知能を捨て人を捨てた変わり果てた姿で呻いていた。
両親である彼らの醜い姿に男は最後の情を捨てた瞳で彼らを見つめながら杖から大きな炎を放った。
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