私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊿と1)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/13(金)投稿予定です。
「村を豊かにするのであれば魔石は価値が高いですし、ここはもっと豊かになっていたのかもしれないのに・・・。」
「・・・いや、そうでもないようですよ。」
オーガの言葉を聞き彼を見ると、彼はロコスの方を見ていたのでつられてティリエスもそちらを向く。
彼の手には今さっき書いたであろう文章が書かれた紙を持っていた。
「“流行病が起こり、大勢の村人が亡くなったと後から風の噂で聞いた事がある”・・・あ、そういえば村長さんの日記にも奥さんが亡くなった事が書かれていましたね。」
「えぇ、これは仮説ですが、廃坑になる前後に魔石が発掘できることを知ったがその後流行病で死んだ村人が大勢いた。日記に書くほど妻を愛している村長の心は計り知れない。そこへ聖女を名乗る何者かが死者を蘇らせるために魔石を掘らせるよう村人を唆して魔石を掘らせ今の状態を作り出した。」
「でも中には反対した人間がいたんじゃないですか?全員が全員聖女の言葉を受け入れたとは考えにくいですけど。」
「いいえ、流行病の流行った村は蔓延を防ぐため潰されることもありますから、賛成しなかった村人が一定数居ても疫病が流行った事実を隠し自分の生活を守りたいが故に協力したのではないでしょうか?現にまだ彼らが人だった2ヶ月前は誰1人我々に助けを求めなかったではないですか。」
「じゃぁ・・・本当に村ぐるみでああなったっていうことですか?」
「えぇ、ですから彼らをそのように悲観しなくても彼らの運命は決まっていたんです・・・それよりロコスも流行病はどこで聞きつけたんです?」
オーガはそう言うとロコスは近くの村人の流行病がここの村に立ち寄った若者からだったと後でわかったのだと説明する。
彼らのやりとりを見ながらティリエスはレイラが淹れてきたお茶を一口飲む。
と、ティリエスはある事に気がつく。
「待って・・・これって数年前から行っている仮説ですよね?」
「ん?えぇ、そうですよ。日記の記述に羊皮紙の痛み具合も見て数年は時間が経っているんですから。」
「なら・・・なんでおかしいと思わないんです?」
「え?」
「ここの教会の人間です。あそこの村出身の修道女が多いこの教会が何も気が付かなかった・・・なんて、変じゃありませんか?」
ティリエスの言葉に誰もが沈黙し食べるのをやめる。
「もしや・・・聖女という存在は村だけではなくこの教会の人間達も隠し守っている・・・と?」
レイラがポツリと漏らしたその言葉にティリエスはここに来てから今までのことを思い出す。
乱れのない集団行動、修道女達の不気味に思うくらいの規律精神、そしてあの毒入りのスープ・・・。
ティリエスは別の場所に置いていた例の魔石だった欠片を見つめる。
「魔女の魔石は・・・死体でなくても弱った人間にも影響を与える。・・・だとしたら、いけない!」
ここの異分子でもあるイーチャ司祭達が危ない!
脅威の中に既にいることに気がついたティリエスは立ち上がった。
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