私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊿)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/11(水)投稿予定です。
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「えっと・・・うん、これでよしっと。」
味を確かめ納得のいく味になったティリエスは、机に用意していた深皿に出来上がった具沢山のスープとその横にふんわりと焼けた丸いパンを置き、ティリエスはお盆でそれらを運ぶ。
「それは私が「いいえ、これは私が運びますわ。貴方はそちらをお願い。」・・・かしこまりました。」
ティリエスは持っているものより、多めによそっている方を運ぶ。
拠点のキッチンから2階へ上がり、上がって突き当たりの部屋へと足を運ぶ。レイラが先にノックすると中からロコスが扉を開ける。
「おはようございますロコスさん、バルバラは起きていませんか?」
ティリエスの問いかけの言葉にロコスは首を横に振る。
ロコスに続いて部屋の中へ入るとそこには目を閉じたまま仰向けになりベッドに横になっているバルバラの姿が見えた。
持っていた料理を彼女の眠っているベッドに備え付けてあるサイドテーブルにお盆ごと置く。
「・・・外傷はないと分かっていても心配しますわ。」
自分たちが村から帰ってきてから既に2日経っているが、バルバラはあの日眠りついてから一度も目覚めないでいた。
翌朝になっても目覚めない彼女を心配してフラスに念入りに診てもらったが外傷はない、毒にやられたというわけでもないという結果だった。
彼女曰く、バルバラが起きないのは精神面の問題だという。
『彼女は記憶が曖昧な時期が存在しています、もしかしたら村で見てきたものが何かしら彼女の心や記憶に思い出す刺激を与えた為ではないでしょうか。その刺激を思い出すきっかけとして眠りについているのか再び思い出さないように忘れようとして拒絶を行なっているのか・・・それは分かりませんが。』
フラスの言葉を思い出しながら、バルバラの手を握る。
「彼女はきっと思い出そうとしている、その為に村へ行ったんですから・・・だから待つしかありません。・・・でも、歯痒いですね。」
「ん?・・・・どうやら、オーガが帰ってきたようですよ。」
下の物音にレイラがいち早く気がつく。
「下へ下りますわ、ロコスさんはどうなされます?」
彼女が眠り始めてから殆ど彼女を守るように、居続けるロコスに声をかけると彼は一瞬だけ迷った様子だったが自分達同様に下の階へ下りる事を伝える。
「では一緒に。ご飯もバルバラの分だけを置いて行きましょうか。」
階段から下へ下りると、既にリビングの方ではオーガが先にご飯を食べ始めており、下りてきたメンバーを見てオーガは軽く手を上げる。
「皆さん、早いお目覚めですねぇ。」
「オーガさんが外に出かけていたのに悠々と寝ているような薄情者ではありませんから。それで何かあの村の事わかりました?」
昨夜はオーガだけもう一度村へ潜入してくるとそう言い残して例の出入り口から外へと出て行っていた。
一度食べ終わり空になった皿にスープをよそうとオーガは遠慮無しにガツガツと食べ進める。
「簡潔にいいますと村の方は何もありませんでした。村人の死体も私達が処理した跡のままでしたし誰かが調べた痕跡もありませんでしたから。なので村人達ゾンビが現れた方向へ辿って行きましてね、すると鉱山跡が見つかりました。恐らくそこで例の魔石を掘っていたんでしょうね。」
「でもロコスさんの話しでは目ぼしい物が取れなくなり廃坑になったんですよね?だから村も貧しかったと。」
魔石が採掘できれば純度に応じて収入が変わるが、純度が低くても魔石の使い道は色々あるのであの程度の村であれば村人は裕福な生活を送れたはずだ。
「ロコスが数年前に出稼ぎにいく前の廃坑になった理由が鉄鉱石でしたが、その後魔石が出ることが分かった。でも、役所には知らせずに村ぐるみで隠蔽した。理由は恐らく彼らが崇拝していた例の聖女が居たんでしょう。」
推察しながらオーガはスープを飲み干しパンに齧り付いた。
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