私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊽)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/5(木)投稿予定です。
「ーーーーふぅ、どうやらこれで全て沈黙しましたね。」
・・・すごく良い顔でこっち見て言うなよ。
まるで一仕事を終えたと清々しい顔で言う己の従者に対し微妙な顔を見せる。
屋敷の掃除とか窓拭きとかそんなんじゃないゾンビの排除だよ?全く清々しさ皆無なのでは?
その場で伏せっている腐敗が進んでいる死体の数々の光景にゾッと背筋に冷たいモノが走る。
なんなら左腕切り離した瞬間、保っていた形が崩れて・・・うん、そこから先は何も言うまい。
「お嬢様、これなんですけど。」
「うぇ?!」
不意にもって来た物を見てティリエスは思わず悲鳴のような変な声を上げると、レイラから数歩後ろへ下がり離れる。
「きゅ、急にそんなものを持ってこないでくださいます!?」
見れば、レイラの右手には村人が動く元凶がついているであろう切断された左手を持っていた。
まだ左腕だけ何か力が働いているのか指が不規則に動き、何かを握ろうとすれば腕の筋肉の硬直している。
「・・・・まるでまだ左手だけ生きているように動きますわね。」
うごうごと動かすその手を気味悪そうに見てそう吐き捨たように言うと、いつの間にか隣に立っていたオーガも気になったのかレイラの持っている左手をしげしげと眺める。
「確かに不思議ですねぇ、血はすでに固まっているというのに・・・。」
「何処かに原動力のようなものはあります?」
例えば電池みたいな、この世界に電池という物は存在しなけど、魔石を使ってそれ似たものを作ったのかもしれないし。
2人がそれを注視していると、先にオーガが何かを見つける。
「なんだかここに突起物のような・・・おっと。」
掌を広げた瞬間何かが這い出て来たかと思った瞬間、それは襲って来たのでオーガは咄嗟に握り潰す。
ぐしゃっという嫌な音に顔を歪めたが、オーガは何も思わないのか平然な態度で握り潰したそれを広げてみやる。
「どうやら・・・魔石の類のようですねぇ。」
ランプに照らされたそれを見ると、粉々になった石の残骸がそこにあった。
「見た感じ・・・クズ魔石のような色合いですね。闇魔石と違う灰色っぽい黒色ですし。」
「飛んできた時はもう少し黒々していた気がしたんですけどね。」
「そうだと思いますよ。」
レイラの言葉に彼の方を見れば、ゲェっと嫌な顔をする。
ロコスも得体の知れないものを見てレイラから数歩下がった。
そこには菱形の黒い魔石から何か触手のようなものがうごうごと蠢いていたのである。
しかもその触手は掴んでいるレイラの手の方に伸びていた。
魔石自身が別の生き物感主張しとる!?
得体の知れないものの登場にティリエスは更に顔を歪めたが元凶はこれだろうと確信した。
「お嬢様、念のためこれ鑑定してみてください。私にも害なのか無害なのか判断つきません。」
確かにそうだとティリエスは鑑定を発動させる。
「うーん・・・・・・ん?こんな事初めてですわ。物であれば鑑定しても大体のことは分かるのですが。」
「特殊すぎで?」
「みたいですね・・・なら。」
ティリエスは慣れた手つきでコンタクトレンズを外し久しぶりに本来の状態で能力を使う。
「鑑定だと名前が出て来ました。魔女の魔石って言われる物です。」
魔女の魔石・・・禁書方法により本来の魔石の魔力を魔女の血を使い凝縮させたもの。魔力を凝縮する際命令内容も記録する事が出来るため触手が伝達信号の役割を持っているため死体に寄生すると人形のようにひとりでに動き行動できる。生命力のある生き物、無機質なものには寄生できないが、生き物が身体的に弱っている、または精神の不安定によっては魔石の魔力に取り憑かれ生きたまま操り人形のようになってしまうこともある。
「なるほど・・・つまり基本は取り付きはできないと。」
ティリエスの解説を聞いてレイラは魔石を粉々にする。
新しくコンタクトレンズを着けながらティリエスは肯定する。
「えぇ、正直こんな代物見つけたくなかったけどね・・・これで死体が動いている原因がわかった。」
「問題はこれを作り出した人物が誰なのかということですねぇ。」
オーガの呟きに誰ものが沈黙した。
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