私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊼)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/3(火)投稿予定です。
ゆっくり起き上がった首か無いソンビは先ほどと同じポーズでこちらへとジリジリ寄ってくる姿を見てティリエスは唖然とする。
「さっきと全く同じ姿勢で来ますね・・・。」
「そうですねぇ、頭吹っ飛ばしたところで変わらないようですし、これは困りましたねぇ。」
面白いもの見つけて笑って言っている時点で困ったようには見えないんだよな。
レイラのまま笑っているが本来の姿のレイの笑みの表情が重なって見えたティリエスは呆れる。
「でも、だからと言ってこのままいるのは危険ですし逃げるのはどうでしょう?」
「いいえ、それには及びませんよ。」
「え?どう言う事?」
キッパリと逃げないで良いと言うレイラにティリエスは聞き返す。何も言わないがオーガも同様に彼の言うことに理解できない様子だ。
だって我々徐々に囲まれているんだが?
「もしかして、弱点がわかったの?」
「いいえ?全く。」
もしかしてと思って質問したが外れらしい、じゃぁなんで逃げなくていいんだ??
ますます理解できないでいるとレイラが両手の手のひらに魔力を凝縮させていく姿がみえ、ティリエスは一歩後ろへ下がる。
そしてレイラはふわりと自分達の頭より高くジャンプをすると、フィギュアスケート選手顔負けのスピンを見せた。同時に強い風が吹き荒れたと思えば、近付いて来ていたゾンビ達が吹っ飛ばされ遠くへと追いやられていく。
そして最後に風で遠くへと追いやられず近くまで来ていたゾンビ一体は綺麗に着時後レイラの回し蹴りで後方へと追いやられた。
修道服のスカートの部分を叩きながら戻ってくる。
「これで元通り、危険回避は出来ましたから問題ありませんね。」
「・・・うんまぁ、これなら心配ないけど・・・。」
なんか、ゲームのチュートリアルなモンスター扱いされていないか?
彼らの立ち位置も行動パターンもさっき見た光景そのままで、ティリエスはなんだかしょっぱい気持ちで彼らを見やるが、さてどうしたもんかと考える。
「でも頭や心臓を撃ち抜いても切り離しても動くなら消耗戦になった時生身の人間が不利になりますよね?」
「ティリエス嬢の言うとおりですねぇ。ゆっくりな動作であっても沈黙せず無限に攻撃されれば隙が生まれやすい。何より、これが失敗作であれば成功例などもっと俊敏に動く輩だと考えたほうが良いでしょう。」
彼らをジィッと見つめる。
でも、ただ腐っていく死体から何かできるとは思えないしじゃあ何が・・・ん?
ふと、ティリエスは頭が無くなった村人の方を見た後、彼の頭部が落ちている場所を見る。
変わらずゴロンと落ち動かない頭を見たティリエスはあることに気がつく。
「でも切り離した頭は動いていない、ということはやっぱり何か動かすことができる何かがあるみたいですね。」
「何かですか?」
「えぇ、たとえば動力源みたいなものが・・・確か彼らは魔石を発掘してましたよね?」
「ほう?」
「だとすれば。」
2人はティリエスの言葉で何か勘付き、彼らもそれぞれゾンビを観察する。
「左ですねぇ。」
「同じく。」
そう言うや否や彼らは人差し指に魔力を込め、ある箇所に照準を当てる。
そして、ほぼ同時それそれ左手を切り落としていた。
途端、ゾンビは倒れ動く様子はない。
「お嬢様、当たりです。」
「なんで場所がわかったの?」
「全員の共通点左手に松明を持っていましたからねぇ、利き手が逆な人間もいるのに、これはおかしいと思いましてね。」
なるほど、確かに姿服装も違うけどそこだけ確かに一緒だ。
言われて気がついたティリエスが納得しているとレイラが両手に魔力を凝縮させる。
「とりあえず攻略法がわかりましたし、まずは目の前のゾンビを一体残らず沈黙させましょう。」
「え?」
弱点が分かった時点でトンズラすると思っていたティリエスが目を点にさせていると、レイラは彼らを同じ要領で遠くへと追いやる。
「他にも何かないかもう一度初めからやってみましょうか。まだ確証まで至ってませんし。まだまだいますし、ちょうど良いですね。」
まさかのチュートリアル再来・・・。
ティリエスはよりゾンビが哀れに思え心の中で合掌した。
いつも読んでいただきありがとうございます。