私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊺)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は8/29(木)投稿予定です。
赤の他人であっても、人が可笑しくなっていく様は実際見ていなくても想像するだけで身震いする。
「でも、少しだけ情報が得られましたねぇ。聖女に魔石、そして死者を生き返らせる。」
「死者を生き返らせる・・・あ。」
そこで先日ロコスがこの村で襲われた話しを思い出す。
確かその時もここの村人で、既に亡くなっている人物だとそう言っていたはずだ。
「じゃぁ、不確定でしたけど例のゾンビは本当にここの村人だった死者が生き返ったということですか?」
「それはどうでしょうねぇ?」
オーガはもう用はないと日記を棚へ置いてサンドウィッチを食べながら返事を返す。
「ロコスの話しからそれはもう人間ではなくティリエス嬢の言うゾンビという怪物になったのではないでしょうか。」
「うーん・・・ということは、襲ってきたのは人間ではなくただ動く人形みたいな存在・・・っていうことですか?」
「私の言おうとしている事を早く察してしまうとは、流石ですねぇ。」
つまりオーガが言いたいのは死体と魔石がなんらかの力を働かせて死者が1人でに動くようにしたのではないかとそう暗に言っているのだ。
それが我々のいうゾンビという存在の正体だと。・・・だけど。
「もしそれが本当だとしてそれを行なっている人物があの日記に書かれた聖女ですが、聖女は一体誰の事を指しているんでしょうか?」
「そうですねぇ・・色々、考えられますが。今のところ「あ、もしかして3つでしょうか?」えぇ、ティリエス嬢私も3つだとそう思いますよ。」
「お嬢様、その3つというのは?」
「可能性が3つ。1つ目は教会、村の何処かにいる誰かが聖女を語っている人物。2つ目はここで亡くなった聖女が実は生きている。そして3つ目は・・・ここ最近やってきた聖女の事を指している。」
「なるほど、確かに時期的に見れば、村長が本格的に日記を書き始めた時期と聖女がここへやって来た時期と被りますねぇ。それ以前に何度かここへやって来ていたという可能性もありますし。」
「おや?貴方いつも何かと否定して来ますけど今回否定しないのは珍しいですねぇ?」
レイラが否定しない事にオーガは不思議そうに漏らす。
うぇ!さっきあった山が消えてる!
オーガの目の前にあったサンドウィッチの山は既に平らげている事に驚愕しつつティリエスは彼の前にさっき自分用に取っておいた皿をそっと気付かれないように置く。
先ほどの事で食欲が失せたのだから仕方ない、食べてもらおう。
「否定する理由がないのでしませんねぇ。実際、あの聖女がお嬢様と共にいる事など今まで数えるほどしかなかったので。と言いますか、否定するのはオーガの情報が甘かった時だけですよ。私のお嬢様はそんな事しませんから。」
「私には手厳しいのにこの子には甘いですよねぇ。」
「ふふふ、嫌ですねぇ、当然の事じゃないですかぁ。」
・・・まぁ、この2人は放っておいて。そうなんだよなぁ、実はマルフェ司祭とあまり一緒にいなかったんだよねぇ、どちらかといえばイーチャ司祭と一緒だったし。
でも、彼らが死体をまるで道具のように扱うような鬼畜ではない、真っ当な人間だと思っているので3つ目の可能性は低いが。
「本当に悍ましいですわね。本当に死体を何かしら施して動かしているんだとしたら・・・。でも、誰かに命令されているんでしょうかね?」
「恐らくでしょうが、そうでしょうねぇ。」
「でしたら・・・。」
そう言ってティリエスは例の日記を見やる。
「村長さんや他の人も何かしら巻き込まれたんでしょうね・・・それでも、自分の生活行動を覚えていたからなんでしょうか・・・日記を書いていたのは。」
「人の習慣というのはそうそう消えませんからねぇ、身体が覚えているというか・・・。」
「オーガさん?」
急に黙り込んだオーガを見ていると、彼は何故かレイと顔を見合わせた。
何かを察したその目を互いが見た途端、行動は早かった。
「ロコス、バルバラを早く抱き上げなさい。」
硬い声色で命令するオーガにロコスは一瞬戸惑った様子だったが素直に眠っているバラバラを抱き抱えた。
「ここをでますよ、急いでください。」
「え?うわっ!」
乱暴にレイラに抱き抱えられたティリエスは抗議するまもなく連れ出される。
「どうしたんですか2人とも。」
「もうすぐ明け方です。」
「へ?」
「私達が調べていた時間帯は夜中です。」
「?」
「習慣化はしみついている、もし、ここの村人が夜中に魔石を掘っているのだとしたら?朝になると村人はどこに行こうとします?」
「そりゃぁ休むために家に・・・帰る。」
そこまで言って、ティリエスは彼らが急いでいる理由を悟る。
そして、扉を開けた瞬間、全員その場に止まる。
「気づくのが遅れましたね。」
「・・・うわぁ。」
村のあちこちに人が立っているのが見え、ティリエスは思わず呟いた。
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