私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊵)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は前回お伝えしたように8/18(日)投稿予定です。
「へぇ、本当に外に出れましたねぇ。」
・・・本当に何の障害もなく出られたね・・・本当に。
オーガの呟きに心の中で、どこかもやもやした気持ちを持ったまま相槌し暗闇の森を見つめる。
「少し距離を感じましたけど・・・やっぱり結構歩いたんですね。ここは何処なんでしょうか?」
大きな樹のうろから出てくる形で外に出たティリエスはランプの火をかざして右を見ても左を見ても鬱蒼として森の木々が生えている光景が見えるだけで、どこにいるのか見当もつかないでいた。
「ここは教会から500メートルほど離れた場所ですねぇ。因みにあちらが教会ですね。」
言われて左の方を指指すレイラにつられてティリエスも左の方を見る。
暗くて見えないけど・・・なんとなくぼんやり建物のような物が見えなくも・・・ないか?
遠くで建物のような黒い輪郭が見えたが、ほとんど闇に溶け込んでいる為ティリエスは曖昧に頷く。
こういう時、遮断しているコンタクトレンズしてると邪魔だと思っちゃうよねぇ。でもしてないとレイとして今の姿を見ちゃうことになるし。
「私には全然見えませんけどそっちが教会なんですか?」
「大丈夫ですよ、普通は見えませんからこの女が特殊すぎるんですよ。現にティリエス嬢だって見えていないのに。」
「侵害ですねぇ、見える人は見えますよぉ?このぐらいの距離なら。」
想像しないように頭の中のイメージを払拭させているとオーガの言葉にレイラが反発しているのが聞こえる。
いかん、このまま私に同意求められても困る。
「レイラ、それよりそろそろ村のほうに行きませんと。」
「おっと。そうでしたねぇ、私としたことが。あぁ・・・そうでした、これも忘れないうちに。」
そう言ってレイラは服のポケットをゴソゴソと探した後、ぐっと膝を折ると彼女達が瞬く間にビュンと上へと跳躍し風を作った。
「え?何?」
バルバラがそう言ったと同時に何かを突っ切るような鈍い音が頭上からしたと思えば、ひらりとレイラがその場へ降り立つ。
思わず、驚いたバルバラは傍にいたロコスにしがみついていた。
レイラは小さく息を吐くと持っていた弓を見やる。見ればいつの間に取り出していたのか、持っている弓は真っ二つに壊れ無惨な姿になっていた。
「やはり少し耐久がないですねぇ。連射はできなくとも耐えて欲しいですが。」
「まぁ、領地で改良していくしかないですわねぇ。」
ティリエスも残念そうにそう溢す。
「あの・・・一体何をしてたんですか?」
よくわかっていないバルバラは恐る恐る聞くとティリエスは答える前に少し考える。
「うーん・・・紙をちょっと飛ばしてもらったの。」
「え?」
「それではそろそろ行きましょうか、村の方角はこちらです。」
言葉を濁して言ったティリエスに戸惑うバルバラを他所にレイラはティリエスの方を振り向いて指さす。
それを聞いたティリエスも頷いた。
「とりあえず村に行きましょうか。時間もありませんし。」
ティリエスの言葉に誰もが足を進めた。
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