私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊳)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は8/7(水)投稿予定です。
今回は近親相姦の表現が若干でます、ご了承下さい。
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人は何度も罪を犯し、そして何度も後悔する。
この記憶は私の懺悔が更に深く、深く広がる記憶だ。
横たわる人形のようであった姉が、己で動き話し始めた事で教会の信者達は色めき立った。
無理もない、法王の横に座ったままでこちらを見る聖女が自分達の目の前で歩き、微笑み、そして話しかけてくれば、信じている者達にとって計り知れない大きな衝撃と興奮をもたらしたに違いない。
だが、私は己の姉の姿を見て恐怖を覚えた。あの日、姉が1人でに歩き、こちらを微笑んで見下ろしてきたあの様に得体の知れない何かを感じ取っていた。
あれはもう私の知っている姉ではない、それを感じ取っていたのは私だけではない、甥もそうだ。
あれ以降あの子は母である姉に近寄ることも話しかけることもしなくなった。
子供は母と呼ばれる聖女に対し警戒を持ったが笑みを絶やさず動き回る姉の姿を見た法王は彼女によりもっと執着を見せた。
彼女は聖女として表に立ち人々を先導していく、そんな姉の姿を見て法王は不気味な笑顔で姉を見続けていた。
そして、彼女は法王との間に子を授かった。1年おきに生まれた2人目、3人目は女子だった。
法王は性別が女だとわかると大層喜んだ。甥の時には目もくれなかったのにその2人を法王は大層可愛がった。
“そんな顔をしないで。”
2人と楽しそうに談笑する4人を柱の陰で見ていた甥は私に淡々とそう言った。
“しかし・・・”
“僕の父は父様だよ。たとえあの2人の間に生まれたのが事実でも僕は絶対にあの人達を認めない。”
確固たる意志に、私はまだ小さな肩を抱き寄せ抱きしめて誓った。
この子を守るためにどんな事でもしよう。
たとえそれが、罪のない人の命を人生を奪う行動だったとしても。
法王、私以外の枢機卿が彼女を中心にして動き始めた教会の中で、じっと潜めて生きる事を私達は選択した。
3年、5年、10年、更に時間は進み15年。私達は彼らを欺き絶えた。
私は40の歳を迎え、法王も随分と歳をとりそして変わらず聖女を崇拝していた。この頃には法王は弱り始め床に伏すことが多くなり、教会の勤めは殆ど姉である聖女が担っていた。
そんな時だ。ある報告で私は驚愕する事実を耳にする。
甥の妹達がほぼ同時に妊娠を果たしたという事実だった。
相手が誰なのか口にするのも悍ましい。彼女達は法王が伏している間、ずっと看病を担っていたと聞いていたからだ。
“あぁ・・・あの子達の子は私の子だよ。”
ベッドの横で横たわる法王が息絶え絶えにして言葉にする。
その醜悪な笑みでギョロリと目だけでこちらを見る彼に、私はただ静かに見下ろしていた。
“なぜ、そんなことを・・・。”
“そんな事?何を言うんだ。あれは聖女の子だ、ならばあの子達は聖女の子として役割を果たさねばいけない。だから彼女達は大事に育てたんだよ、あの子達は特別だからね。”
なんと悍ましく、醜悪なのだろうか。
法王や聖女のためにその子達は己の命と引き換えに、子供を産んだ。
2番目の長女は女の子を。
3番目の次女は男の子を。
私が出産に立ち会い見た子供の顔は、母親は違うのに、まるで双子のように互いの顔が瓜二つな赤ん坊だった。
いつも読んでいただきありがとうございます。