私が聖女候補なんて世も末である。(真相を究明しようとすれば、きっと誰かは泣く羽目になる。㊲)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回はすみませんが日曜日投稿が難しいので8/5(月)投稿予定です。
オーガさんはそれから早速気を失っているロコスさんを背負いずるずる彼の足を引きずりながら私たちの部屋へ連れてきた。
彼の行動が早かった事に、そんなにロコスの容体が悪化したのかティリエスは心配したが、オーガ曰く「悪くはなっていないが、そのままほっとく事はできませんしかといって面倒なんですよねぇ看病。」という本音に思わず目が据わる。
なるほど、体よく怪我人を押し付けようという魂胆か。
オーガの頭の中の一部だが透けて見えた思惑に思わずため息を吐きそうになったが、連れてきたロコスさんの容体は悪いのは悪いのだからと、ティリエスは部屋へと2人を招き入れる。
「ロコスさんの傷はどうですか?」
「止血したままですし、もらった塗り薬もしてますが膿が出ますねぇ。思ったより効きが悪いですね。」
「薬草が限られているんですよ。フラスの力を持っていてもなかなか薬草だけは成長に時間がかかりますから。それこそオーガさん回復魔法出来ないですか?」
「回復魔法など、夢物語のようなことを言わないでくださいよ。普通にできませんよそんな高度な魔法。」
回復魔法が?初級でも??
「回復魔法は肉体の修復ですからねぇ、ただ属性の魔法を放つだけの人間にその原理を読み解くには鍛錬を積まないと無理ですからねぇ。お嬢様はまだ魔法の事はご存知ないですから。」
拠点の扉からやってきたレイにそう言われて、ティリエスは思わずキュッと口を萎ませる。
これ、初級でも回復魔法使えるって分かったら、絶対面倒な事になるやつだ。
最近はある程度能力を見せても問題になる事はなかったが、久しぶりに己のチート能力の数々を思い出し、バレてはいけないとオーガに愛想笑いをする。
「それはすみません、私把握しておりませんでした、勉強不足ですわね。教えてくれてありがとうレイラ。」
別の意味で感謝していると意味深にレイも笑う。・・・うん、次は気をつけます・・・ハイ。
「へぇ、貴女でも知らないことがあるんですねぇ。」
「そりゃあ、私まだ子供ですよ?知らないことが多いのですから学ぶんです。」
「そうなんですけどねぇ・・・貴女の場合、なんだか全てご存じな気もするんですよねぇ。」
ぎくりと思ったがなんとか平静を装う。
「・・・まぁ貴女でも、流石に回復魔法までは出来ないでしょうし。もし出来ていたら教会の人間が是が非でも聖女に祭り上げるでしょうね。それこそ聖女にとって清いイメージそのものですし。」
本当だ・・・回復魔法禁止しないとやばいじゃん。
別の問題点を指摘されさらに口をバレない程度萎ませながら拠点へと足を運ぶ。
「あ、お帰りなさい!ティリエスさん!」
入るや否やティリエス達に気がついたバルバラが迎える。
「ただいま帰りましたわ。ホルアクティとお掃除していたんですね。ありがとうございます。」
「い、いえ!私これぐらいしか出来ないですから!」
ブンブンと大袈裟に雑巾を持ったまま手をふるバルバラの声を聞いてか今まで気を失っていたロコスのまつ毛が震え目を開ける。
「・・・・・!」
「あ、目が覚めましたか?」
「ティリエスさん、こちらの方は?」
ロコスの方を見てバルバラは尋ねる。ロコスはジッと彼女を見つめていた。
「ロコスさんです。彼もここの故郷の方で案内役を任せているんですの。昔の怪我で声は出せないの。」
「そうなんですね、すみません。私記憶がなくて・・・初めましてで合っているんでしょうか?」
「!・・・・」
バルバラの言葉にロコスは一瞬だけ息を詰まらせたが、ゆっくりと縦に振った。
「よろしくお願いしますバルバラです。」
そう言ってロコスに手を差し出しロコスも少し戸惑っているようだったが彼女の手を握り返す。
「・・・・とりあえず、彼を寝室に運びましょうか。」
「私も手伝います。」
バルバラとオーガに彼を任せてティリエスとレイは彼らの後ろ姿を見送る。
「・・・・彼女と知り合いみたいですね。」
「みたいですねぇ、なんで知り合いと言わなかったんでしょうか?」
「さぁ・・・きっと彼にも何か思うことがあるんでしょうけど。」
動揺を見せたロコスの態度にティリエスは疑問に思いながらもお茶を用意することにした。
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